2012年04月21日

いつも心に剣を(5)

いつも心に剣を 5 (MF文庫J) [文庫] / 十文字 青 (著); kaya8 (イラスト...
いつも心に剣を 5 (MF文庫J) [文庫] / 十文字 青 (著); kaya8 (イラスト); メディアファクトリー (刊)

稀代の魔女狩り・人狩りとなったレーレ。自責の念にかられて荒んでいきながらも、ユユの存在に縋り、命じられるがまま多くの命に手をかけた猟犬。並ぶ者はいなかったであろう程の戦果を挙げた狩人の一人称視点で綴られることが多かった4巻5巻、面白かったです。3巻読んでから時間が経っててあまり話を覚えていないので、他の人とはちょっと印象がずれてるかもしれませんが。

どこかに欠陥のある天才というのはかなり好みのキャラなのですが、この作品のレーレもまたそう。シレーンの民の末裔に現出する鷹の目の力を人並み外れた優秀さで有し、殺しの腕にかけては作中一二を争うほど。だが、弱い部分もそれに劣らずあった。その根本はユユへの精神的な依存。ユユの方もレーレに依存していたがそれはさておき。シリーズ当初からレーレにとってはほとんどユユがすべてだった。そのために3巻の後、ユユは死んだと思ってしまうと、今度は復讐のことが頭のほとんどを占めるようになる。そこには自責もなく、無茶を心配する友の言葉も理解できず、ただただ命令通りに魔女を狩ることだけがレーレのすべてだった。その視野の狭さはレーレの幼さ。ユユと育つうちに考えることを委ねきり、広がりが止まってしまったもの。とはいえ、この程度なら別段大した問題ではないように思える。猟犬として、レーレは天性の才能を有していたから。しかし、それが致命的な欠陥となったのは、魔女狩りから人狩りへと変化した時。旧知の人物を手にかけた時、レーレは初めてその可能性があったことに思い至り、既に還らぬものとなった命に心を苛まれるようになる。壊れてしまいそうな心を、あと一歩のところで、ユユに縋りつくことでなんとか繋ぎとめ、人狩りを続けるレーレ。そして本人の苦悩など知る由もなく、その狩りによって人々を恐怖の淵に追いやり、悪名を馳せていくレーレ。哀れなレーレ。その弱さが、たまらなく愛おしい。

という感じの読みをしてたら、終盤はなんとも釈然としない展開で戸惑いましたが、致命的な欠陥を抱えた人間はこの辺りでその生涯を閉じるのがいい塩梅だろうと思えたので。私はこの物語の結末を悲劇として読ませていただきました。人間たちとも魔女たちとも相容れなかった二人がこの先、共同体社会の中で生きていくことは至難でしょうし、それが二人にとって一番幸せな結末に思えてならないのです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 14:19| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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