2011年10月05日

烙印の紋章 W  竜よ、復讐の爪牙を振るえ

烙印の紋章〈4〉竜よ、復讐の爪牙を振るえ (電撃文庫) [文庫] / 杉原 智則 (著); 3...
烙印の紋章〈4〉竜よ、復讐の爪牙を振るえ (電撃文庫) [文庫] / 杉原 智則 (著); 3 (イラスト); アスキーメディアワークス (刊) bk1はこちら

第一部完。三巻から戦記っぽい話になって格段に面白くなったのだがこの巻は特にすごかった。アプターに赴任したことで皇帝の重しから離れて自らの裁量である程度の兵を動かせるようになり、そのおかげで誰も抜きんでる者のない王宮での膠着状態からも解き放たれて局地的とはいえタウーリアのアークス・バズガン相手に優位に立ったオルバ。それがこの巻では皇帝の命令すら無視して立ち回りメフィウス・ガーベラの二人の王子がぶつかり合う盤面を己が独壇場にしてみせたのだ。これがとんでもなく面白かった。そして三人で行われた会談。あれはもう二王子の心を呑んでたね。素性が素性なため秘密主義なところのあるオルバだからか、対等なやりとりよりもむしろ自らが優位に立った状態でのやりとりの方がうまくいくし相手とも信頼関係を築けるというのがまた面白くもあり。根っからガキ大将な気質なんだろうか。してみるとビリーナは、そんなオルバが唯一対等に心許してるということでずいぶん稀有な人ですね。とはいえ彼女相手にも秘密主義を通しているから、彼女の男勝りな気性も形を潜めて今やすっかり皇子に振り回されっぱなしのヒロインとしての立場に納まっているわけですが。ですが、そうであるだけにこの第一部完結は衝撃的でしたね。あっちもこっちも上手くいってビリーナともいい雰囲気になるようになってきたと思っていたら……えー!? 皇帝に逆らってまで無茶したわけだからあとがこわいというのはあったけど。この展開はきついですよ。特にビリーナが、可哀想で。

けど、あのラストに繋がる展開は皇子としての仮面をかぶったオルバではなく、素顔のそのままのオルバの判断によるものなんですよね。心の奥底からの要請といってもいいか。それは、復讐者としてのオルバと自分勝手に民草の命を使い捨てる貴族たちに憤るオルバという、これまで乖離してきた二つの側面が土壇場で合致したことによるものなのでしょう。復讐のため、自分一人が目的を果たせればそれでいいとなりかけていた身勝手さに気付かされ懊悩することとなった末にとった行動には、これまで見られなかった人の上に立つ者としての自覚が含まれている。目的は目的として果たすが、自らの意志で部下とした近衛隊士たちの身の上のことも考えた手段を採るその姿には、ここにきて貴族としての意識の萌芽がみられるのだよなぁ。一介の奴隷剣士に過ぎなかったあのオルバのこの成長はどうだ。これがビリーナの祖父が言っていたところの仮面が素顔の一部になるということの端緒だろうか。すごくワクワクしてきた。この男はこの先一体何を見せてくれるのだろう。どこまで行ってくれるのだろう。興奮が冷めやらない。ただ、その後採った復讐のための最後の一手が、また先行きをわからなくさせてくれるんですよねえ。せっかくつかみかけたものを手放してしまう意図には謎が残るばかりである。とはいえ、復讐は為ったということで。小休止ののちには再びその雄姿を見せてくれんことを。


posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 10:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。