2011年10月03日

環の姫の物語 下

環(リーン)の姫の物語〈下〉 (幻狼ファンタジアノベルス) [単行本] / 高瀬 美恵 (著)...
環(リーン)の姫の物語〈下〉 (幻狼ファンタジアノベルス) [単行本] / 高瀬 美恵 (著); 輝竜 司 (イラスト); 幻冬舎コミックス (刊) bk1はこちら

異世界を舞台に、戦記でもなく日常でもなくバトルでもなく、ちょっとした冒険のようなものを描いているというのが珍しくも面白かったですね。とはいえ人も踏まぬという北の果てを越えた先に何があったのかというよりもそこで何を得てきたのかというのが大事なお話。

王女オリガが主役の話なのだけど、彼女の物語としてはいまいちすっきりしないものが残る。それは、オリガの弟のユーリをはじめとして、上巻ではどうなってしまうかというくらい主要なキャラのほとんどが不遇な状況下に追いやられているにもかかわらず、この王女さまは最も苦労していないようでありながらも一番目立つ活躍をし最も報われた結末を迎えているように見えるからだ。オリガの何倍も辛酸をなめされたユーリが最終的にいつか戦うべき悪になってしまったかのような描き方をされているとちょっとオリガが贔屓されすぎじゃないかなと思ってしまうわけですよ。まあでもそれについては主人公でもあるし、なにより“環”の力を持つ光の巫女姫であるということで、輝かしい栄光に彩られた生を過ごすことになることは半ば決定づけられていたとも言えるのかな。

と、ここまでの歯切れの悪い感想はオリガ姫の物語についてなんですが、むしろユーリ王子の成長譚として読めばこれがすごく面白いんですよ。引っ込み思案で気が弱くて、父王に取り入ろうとする意地の悪い教育係に手酷く扱われてしょげかえっては姉姫に慰められていた少年が、父王殺しの罪を被され盗賊たちとともに追っ手からの逃亡の旅を続ける中で貧しさに苦しむ人の姿を見てこの国を変えたいと、よき王になりたいと、そう願うようになるんですよ。この瞬間がめちゃくちゃよかった。上巻からこっちひたすら辛い境遇に置かれてそこから逃げるばかりだったユーリ少年が初めて自らの意志を持った瞬間の心理がすとんと胸に落ちてきて、この願いばかりは叶ってほしいと願わずにはいられませんでしたね。彼自身わかっていたように非情な決断ができる性格ではないんでしょうが、きっと心優しい王として国民から慕われる人物にはなれると思います。最後の方はオリガ視点のせいで暗雲漂ってるようにも見えますが、話してわからない人のはずがないですし、むしろ必ず明るい未来を見せてくれると信じさせてくれるものがありました。ユーリ王の御代に幸あれ!
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 08:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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