2011年08月30日

されど罪人は竜と踊る 3  Silverdawn Goldendusk

されど罪人は竜と踊る 3~Silverdawn Goldendusk~ (ガガガ文庫) [文庫...
されど罪人は竜と踊る 3~Silverdawn Goldendusk~ (ガガガ文庫) [文庫] / 浅井 ラボ (著); 宮城(みやぎ) (イラスト); 小学館 (刊) bk1はこちら

やっぱりこの世界観は素晴らしい。ガユスとギギナが拠点を構えるエリダナの街――ここに都市のカオスがある。国家や企業はそれぞれの組織力を背景にした巨大な影響力を撒き散らしているが、そこで働く一人ひとりは一部首脳を除いて紛れもなく一介の市民であり、一市民としての生活がある。そうした本来ストーリーの本筋とは関係ない各組織や個人個人に至るまでの思惑が混然としたまま混じり合わずに現出することで都市の騒々しさが見事に表現されている。そうだよなぁ。いくら街の攻性咒式士が総出でかかっても相手にならない化物が街中で暴れようとも、その程度で揺らぎはしないのが膨れ上がった都市というものの生活だよなぁ。攻性咒式士が暴れ回ること自体はもう日常茶飯事になってるみたいだし、一瞬で破壊し尽くされでもしない限りこの街が日常を手放すことはないんだろうね。

日々の生活に忙殺される市民たち、さらなる豊かさを求めて情け容赦なく拡大を続ける経済、自国の豊かさのためには他国の犠牲を出さざるを得ない政治事情。救いの見えない世界だが生きていくためには極限までの適応が求められ、それができない者から切り捨てられていく。これはまさしく競争社会の行き着く果てであり、言ってしまえば理想的な社会ですらあるんだよなぁ。ただまあ落ちこぼれてしまった人間が何のフォローもない中で甘んじて状況を受け入れられるはずもなく。デモでも起こさないとやってられないよなぁ。とはいえ熾烈な富の攻防を続ける国家や企業たちにとってそんな底辺市民の動向なんて眼中にないというかそこまで手を回す余裕はないわけで。ままならない世の中です。

ストーリーについて触れるならば、やはりガユスは不幸がよく似合う男だなぁと。自分に降りかかるはずだった不幸を他人に肩代わりさせることもできるというのは驚きだったけどw それでも今回は本当に可哀想に思えてくるくらい不幸続きでしたが、まあそれでこそガユスの本領発揮という見方もありましてですね。いやぁ、ガユス輝いてるよ(笑)
けどこのガユスの不幸って、ここまでずっと一市民であるガユスの与り知らない巨大な陰謀に端を発してるんですよね。その首謀者は〈異貌のものども〉だったり国家だったりするわけだけど。つまり、ガユスは世界的とは言わないまでも数カ国にはまたがるような危機を知らないうちにその背に負わされてるわけだ。構図としてはよくある物語の主人公と変わらない。けど、この世界は上記のようにエリダナという街一つをとってすら特定の個人や組織が思い通りにすることはできない複雑さ・巨大さを持っている。ましてそれが何十何百と集まる国家規模の事態となると背負わされる重荷はいかばかりか。ガユスの不幸だけで収まるならむしろ御の字ではないか。実際はそれで収まらずにウルムンのように悲惨な現実に陥っている国もあるのですが。そもそもがガユスの相手となる敵が強すぎるんですよ。ガユスとギギナだって十三階梯の咒式士だから十分すぎるほどに人並み外れた実力の持ち主のはずなのに、敵は到達者級なんて当たり前と言わんばかりの人間離れした勇者やとんでもない化け物ばかりなのだから。けれど、一介の攻性咒式士でありながら一部とはいえ世界の命運を背負うにはやはりそれだけの強さが求められるんでしょうね。そしてそう考えると、あのモルディーンと対峙するにはさらに力が必要になるということだろうか? 気が遠くなるような世界だ。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 19:24| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。