2011年06月29日

小さな魔女と空飛ぶ狐

小さな魔女と空飛ぶ狐 (電撃文庫) [文庫] / 南井 大介 (著); 大槍 葦人 (イラスト...
小さな魔女と空飛ぶ狐 (電撃文庫) [文庫] / 南井 大介 (著); 大槍 葦人 (イラスト); アスキーメディアワークス (刊) bk1はこちら

予備役編入を望みながらもその腕前ゆえに叶わないでいたレヴェトリア空軍のパイロット・クラウゼ。ある時、彼は本国への帰還とともにとある天才科学者への協力を命じられる。僅か16歳に過ぎないその少女アンナリーサは年頃のわがままさを見せてクラウゼを振り回しながらも存分に才能を発揮していくのだが、戦争は泥沼の様相を呈して――という感じのお話。

なんという、素晴らしい話ですことでしょう。アンナリーサとアジャンクールというちょっと笑えてしまうくらいに似た者同士であった二人。対抗意識を剥き出しにしつつも相手を意識しまくった研究開発を続けていった二人の天才的な知性の持ち主が、ある惨事を契機に対照的な開発を手掛けるようになっていく様子が非常に印象的でした。似た者同士であるがゆえに二人の行動を分けたのはほんの些細な偶然に過ぎなかったと思うんですけど、その辺りから二人の半生の違いなんかが浮き出てきて俄然面白味が増してきましたね。悲劇に対する反応は両者ともにすごく共感しやすいものがあるからこそ、一方的に愚かしい態度であったと責めることはできない。むしろ戦争の渦中にある人々が抱く普遍的な感情ですらあっただろう。悲劇が怒りを呼び、憤りが惨劇を生み出し、悲劇の連鎖に倦みながらも戦況は簡単に引き下がることのできない泥沼にはまってしまう。やるせない負のスパイラル。ぐいぐい引き込まれてしまった。そしてその連鎖を断ち切れるのは、やはり同じ知性の持ち主なのである。愛する者を傷つけられながらも悲しみの連鎖に飲み込まれない人間の尊い意思によって為せる業なのである。自分にしかこの戦争は止められないと、そう腹を決めたアンナリーサの覚悟はなんと尊いものであったでしょうか。戦争というものを通して描かれるこの人間の感情の醜さと尊さの対比、たまりませんでしたね。ここまでくるともう、しょうもないネタが随所に挟まれてるのがいっそ勿体なく思えてくるくらいの素晴らしい人間賛歌じゃないですか。いいないいな、こういうの。こういう思いもかけない出会いがあるからラノベ読みはやめられない。

もう一人キャラについて触れておくとすればやはりリード姉様。かつての誼から目をかけているクラウゼを軍の上官として「可愛がってる」と見せかけて、そこから滲み出る隠しようもないデレっぷりがたまらない、これまた素晴らしいお姉様でございましたよ。立場的にクラウゼが逆らえないのをわかってて、「私の可愛いクラウゼ」としての振る舞いを要求するって、なんて破壊力を秘めたデレを見せつけてくれるんだ。しかも付き合いの長短はあるとはいえ、アンナリーサよりもしっかりクラウゼの心を捕まえているようで。そうか、これが長年の調教の成果か……。おそるべしリード姉様。それに加えて報復に湧く世論に媚びることなく軍内部での行動基準がぶれないところも素晴らしいですよね。ちょっと俗な規範ではありますが、芯からそれを信じて後悔する様子もないんだからかっこいい。旧貴族としての出身が影響してるんでしょうがさすがの貫録。知れば知るほど素晴らしい人です、リード姉様。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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