2011年06月12日

おやすみ魔獣少女  炎の記憶

おやすみ魔獣少女 炎の記憶 (角川スニーカー文庫) [文庫] / 川人 忠明 (著); 紺野...
おやすみ魔獣少女  炎の記憶 (角川スニーカー文庫) [文庫] / 川人 忠明 (著); 紺野 賢護 (イラスト); 角川書店(角川グループパブリッシング) (刊) bk1はこちら

シリーズ2巻。初陣にてなんとか勝利をおさめたエスト。いまだ戦場での命のやりとりになれないエストだが、続けて新王国への進軍に参加するよう命じられる。命じられるがまま不落を謳われるヴァーズミールの血壁攻略の準備を進めていたエストたちだったが、要衝の地・ウガノワ王国が新王国従属の立場を改めて中立を宣言し――という感じのお話。

おお、1巻と比べるとかなりよくなってますね。美醜の対比あり、魔獣の力に頼るばかりでない戦術もありと、すごく面白くなってますよこれ。ギャグは相変わらず滑り気味な気がしますが。でも正直微妙だと思えた1巻から一躍、見違えるような期待のシリーズまで躍り出てきましたよ。

まずスハイツが調子を取り戻したのが大きいですよね。1巻の感想でも書いたように、やっぱりフィリアに先立たれてしまったショックが大きかったんですね。戦術設計師という肩書きでありながらあまりにもなお粗末さでしたからね。調子を取り戻したスハイツは、名参謀とまではいかずとも戦術のなんたるかをまるで知らないエストが時に作戦をぶちこわしそうになるのをうまくサポートしてしっかり戦果を挙げさせるという、地味ながらもかなり重要な立ち回りを演じてくれてますよね。無知な主君を抱えつつこわいこわ〜い主君の主君の期待にもしっかり応えないといけないという、なんだか中間管理職のつらさを感じさせるところもありますが、まあそこはそれ。所詮はいじられ役のスハイツ様でございますので。エストが見直しそうになったところでミビからイメージダウンのネタを吹きこまれようと、フィリアから過去の恥ずかしい思い出を暴露されようと、しっかりライラ皇家の軍を支える健気なお方なのでございます。それにどれだけいじられようとへそを曲げないのは一度フィリアに惚れてしまった弱みというわけで。なんというかまあ可愛い人なのでございます。

ウガノワ王国内での争いは結構容赦なくやってくれましたね。そう、これですよ。戦う少女の美しさを映えさせるならこれくらいの凄惨さがほしかったんですよ。人の口からしかその姿が見えてこないせいで作中語られた真王の狙いについては憶測の域を出ないわけですが、いずれにせよあれはマリオンが未練を断ち切るために必要な儀式だったと言えるのでしょうね。親友と引き離され親から見捨てられながらも捨て切れずにいた一片の希望を、持ち続けていいものかはっきりさせるために避けては通れなかった賭け。けれど無残にも敗れ去ってしまった絶望は、覚悟していたとはいえ相当のもので。その悲しみをぶちまけるかのように暴れ回る姿は非常に痛ましく、だからこそやるせない気分にさせられる。
けれど、〈王威の花〉の一輪として後宮に住まっていながらも、心の傷が癒される程に真王へ親愛の情を向けることができなかったのは、真王からそれほど愛されていなかったからではないかという邪推もしたくなってくるところ。前回のロシエッタが羨ましくなってくるくらい一途に真王陛下への愛を言葉に表しっぱなしだったことから〈王威の花〉というのはなによりも真王のことを愛してやまない女性たちの集まりなのかと思っていたら、どうもそうとは言い切れない様子? 本人が未登場なのではっきりしませんが、ロシエッタだってその愛情を利用されてただけっていう線もあり得るわけですよね。うーむ、これは真王の登場が待たれますね。

そういえば結局ヴァーズミールの血壁の一角は簡単に落とせてしまったわけで、案外このまま真王のところまで一直線っていう展開もあり得そう。九皇家というわりにはエストと大皇しか登場してなくて、もうちょっと話が広がってくれないかと思ってるんですが、あっけなく次の巻で完結ということにもできそうなので不安あり。イラストも大好きなので、もう少し続けてほしいところですが、はてさて。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:18| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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