2011年06月09日

いつも心に剣を A

いつも心に剣を〈2〉 (MF文庫J) [文庫] / 十文字 青 (著); kaya8 (イラス...
いつも心に剣を〈2〉 (MF文庫J) [文庫] / 十文字 青 (著); kaya8 (イラスト); メディアファクトリー (刊) bk1はこちら

シリーズ2巻。魔女と聖騎士団との戦いを潜りぬけて再び二人で旅を続けていたユユとレーレは聖騎士のヨナハンとセルジュに再会する。ヨナハンに押し切られる形で彼らの帰省に付き合わされることになったのだが、故郷ではヨナハンの婚約者が魔女の疑いをかけられ巡検司祭の取り調べを受けており――という感じのお話。

やっぱりいいなあこのシリーズは。基本的には1巻と似たような展開。けれど、今回悲劇に見舞われたのは聖騎士ヨナハン。愛する女性が魔女の疑いをかけられ弾劾されようとしている、その衝撃はいかばかりか。普段魔女を憎み討伐任務に一片の疑いすら持たない男といえど、婚約者が魔女として裁かれようとしている現実を目の当たりにすればその理不尽さに気付かされる。いや、気付いていながら目を逸らそうとしていたものを突然その眼前に突き付けられたのかもしれない。普段あれほど元気の塊だった男がみっともないほどに焦燥してしまう姿は非常に痛ましい。けど、どれほどあがいたところで現実はそう簡単に変わらないんですよね。この世界における魔女の迫害というものは社会構造にまで沁みついてるもののようですからね。一人で生きていくには弱い生き物だからこそ「人間」としての仲間意識を持てる者たちだけで集まって社会を構成し、その「人間」という枠内に納まらないものを徹底的に弾圧することで集団社会の安全を確保する。その社会の中には家畜も含まれるが、それは「人間」が生殺与奪の権を握って管理することができるから。魔女や亜人は「人間」たちの理解の範疇外の存在であり、その不気味な姿形や習慣などは嫌悪の対象としかなりえないのだ。しかもその魔女観・亜人観が宗教として肯定され、迫害に正当な根拠を与えている。ここまで確固とした迫害の構造が出来上がるとヨナハンやレーレ達が決死の覚悟を固めたところで覆せるものではない。どれだけ足掻いたところで最終的には絶望しか待ち受けてないんだよなあ。理不尽な悲劇にはやるせない気持ちにさせられるけど、「人間」社会の生活の安全はこの迫害の上に成り立ってるんですよね。生きているだけで対立が生じるっていうのはきつい。この世界で幸せに生きるためには、この構造に疑問すら抱かずに過ごすか、ユユのように自分なりの価値観を気付いていくしかないのでしょうね。

そういえば、ユユの衣装って、意識してなのかはわかりませんけど、かなり魔女のものに似てますよね。何か理由でもあるんでしょうか。「人間」社会の規範に従わない者たちのスタンダードな衣装がアレだったりするんでしょうかね。

慌てふためいてるヨナハンに幾度も助言をするのを見てると、なんだかレーレが頭のいいキャラのように見えてくるのは可笑しかった。まぁレーレにとっては前回すでに経験済みな状況でしたからね。でも、いくら竹を割ったような性格とはいえ、ヨナハンにはレーレと違って身分も家族もありますからね。パッとそういうしがらみに思いを馳せてしまうあたり、ヨナハンはどこまでも「人間」社会から抜け出すことはできない人間なのでしょう。それに比べて、いざとなったらユユ以外はどうなってもいいと考えられるレーレの思い切りの良さは気持ちよかったですね。だからこそ社会には馴染めないんでしょうけど。

あと、この巻のイラストは背景の描き込みが細かくてすごかったですね。この少し前に読んだのが背景のないイラストばかりな作品だったせいか、カラーピンナップを見た時は思わず「おおっ!」と賛嘆の声を漏らさずにはいられませんでした。

個人的なツボとしては、レーレがヨナハンの馬に二人乗りさせてもらってたシーン。いやいや乗ってるのがモノローグからバンバン伝わってくるんだけど、ヨナハンの高い体温を感じながらその背中にしがみついてる場面を想像するだけで身悶えせずにはいられないんですが。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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