2011年05月26日

神と奴隷の誕生構文 U

神と奴隷の誕生構文 2 (電撃文庫 う 4-2) [文庫] / 宇野 朴人 (著); きくらげ...
神と奴隷の誕生構文 2 (電撃文庫 う 4-2) [文庫] / 宇野 朴人 (著); きくらげ (イラスト); アスキー・メディアワークス (刊) bk1はこちら

シリーズ第2巻。ロケイラとオルワナの統合に成功したセレィ達は、次に中陸のアヌビシアとの同盟を目指すこととなった。ところが、派遣した使節はアヌビシアに捕らえられてしまう。セレィは女皇自らアヌビシアに乗り込み交渉の席に臨むことにした――という感じのお話。

これすごいぞ。1巻でも設定の詰め込みぶりは相当なものだったけど、今回はそれがより丁寧に仕上がってる。身体的な特徴・神話・風俗など、かなり深いところから異世界人というものを作り上げてるんだなあ。ここまで真摯に世界観を作り上げてるファンタジーはなかなかお目にかかれるものではないでしょう。しかもこれだけの設定量でありながらも詰め込み感は薄く、自然とこの世界の人々というものが理解できるように書かれてる。前回気になった粗さもだいぶ洗練されてきたように思えたし。緻密な設定と読みやすさをここまで同居させられてるっていうのは、すごいとしか言いようがない。しかもこれでまだデビュー作の二巻目なんですよね。これは要注目の作家さんですよ。読書メーターなんか見てるとあまり読まれてないみたいですが、これはぜひとも読むべしって作品ですね。

今回はオルワナに続いて残る東方二国をまとめにかかるかと思いきや、いきなり中陸のアヌビシアとの交渉が始まる。おやっと思ったけども、まあ確かに先により強大な方を抑えてしまえば東方二国は悠々解決できそうですもんね。そんなわけで目次の地図で描かれる範囲もやや中陸寄りに移動。けど、その地図を見るにその先はトルキォストルしか選択肢はないようなので、そこでは真っ向から対峙していかなければならないってことなんでしょうかね。とはいえそれはまた次回以降のお話。

アヌビシアに住まうのは盲民族。常夜の国で発達した聴覚に立脚した文化を持つ人々。街のそこかしこから聴こえてくるという音は、実際聴こえてくるわけではないんですが、読んでるだけでなんだか癒されます。聴士という制度もなかなかに興味深い。26の信号音というのは、アルファベットのようなものなのでしょうね。加えて鬱蒼と茂る森林に覆われた国土。陥とされざるアヌビシアと語られるのもむべなるかな。

それにしても、ここまで文化が違うとクルァシンが諭す異文化理解というものは相当な困難が伴いますよね。アウェーな舞台で気押されることなく堂々と交渉の場に臨めたセレィは1巻冒頭で滅亡寸前まで追いやられて慌てふためいてた国の主とはとても思えないくらいに立派になったもので。けど、よく考えればクルァシンの語る発展界による侵略だのなんだのも割とすんなり受け入れてた上にそんな得体の知れない導神でさえすぐにからかって楽しんでたし、驚きも度が過ぎると肚が据わる性質なのかしらん。もしかすると、もともとが違いの多い民族たちの住まう世界ですし、あちらの世界の人々は我々よりもそういう差異に対する許容範囲が広いのかもしれませんね。

けど、難しいのはクルァシンがこぼしたように、鎖国を開放するということは競争経済の波に翻弄されるようになるということ。弱者にそのしわ寄せが向かったり、格差が発生・拡大するのは必然であるということ。いくら避けたくってもこればかりはどうにもならないよなあ。時間をかければベターな方向性が見つかるのかもしれないけど、発展界による侵略の脅威にさらされ一刻を争う事態では悠長に構えてる暇はないですし、ある程度は折り合いをつけてかなきゃならないですよね。難しい。

バトルにおいては、前回オオクルァシンによる反則的なまでの強さで敵を圧倒してしまいましたが、今回はクルァシンその人の実力のほども見せてもらえて満足。さすがに肝心なところで彼女にばかり頼ってたらただのヘタレですからね。しかし、気付けばクルァシンの周りで地味にハーレムが形成されつつあるような…。さすが導神様、さりげなくやってのけてくれやがる。

後進世界とは対照的に、ちらっと垣間見えたアルマダートの発展ぶりもすごかった。平均寿命が百を超えてる時点でなんかもうすげえなあと圧倒されてしまった。若々しい外見でありながらも六十七十越えた海千山千の有力資産家たちによるパワーゲームも緊迫感溢れてて面白い。こちらもどう転がることかと気になるところ。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 20:48| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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