2011年05月20日

みにくいあひるの恋 4  哀しみのない自由な空へ

みにくいあひるの恋 4  (MF文庫J) [文庫] / 日日日 (著); みことあけみ (イラ...
みにくいあひるの恋 4  (MF文庫J) [文庫] / 日日日 (著); みことあけみ (イラスト); メディアファクトリー (刊) bk1はこちら

シリーズ第4巻。山奥の病院に連れ去られたあひると家出同然に出ていってしまった茜子。落ち着けない状況が続く中、みかんを頼って訪れた人魚島にて陀衣は重大な決意を固める――という感じのお話。シリーズ完結巻。

うわぁい……。こいつはぶったまげた。もう呆然としてしばらく声が出なかった。始まった時から絶賛修羅場継続中で、どんな結末になっても驚かないつもりだったんですけどね。さすがにあれは、予想のはるか上を行かれました。こいつら狂ってるぞ!? せつなくも美しい物語とか嘘だ!と全力でつっこんでやりたい。最高にみにくい結末だったよ!! これはやばい。久しぶりに精神的にクる話でしたよ。編集部に最後まで嫌な顔されたっていうのも納得の結末。けど、個人的には文句のつけようもない素晴らしい結末でした。むしろ作者さんよくぞ押し通してくださいました。これが、これこそが、ハッピーエンドか…! 最高だった!!

茜子さんにしてみれば完膚なきまでの失恋ですよね。あひるが間に割り込んでくるまで陀衣に依存してきた茜子さんは、家を飛び出してもやっぱり陀衣のことしか考えられなくて。けれどありったけの想いをぶつけてみてももう陀衣の心は決まっていて。しかも好きな人とその人が選んだ人とが幸せそうにしてる様子を見せつけられるのだ。想いが伝わればそこでおしまいというわけではない恋の世界とはいえ、あひるさんがもう長くないと知ってなければ耐えられるものではないでしょう。けれど、そんな茜子の必死の努力も儚い希望とともに打ち砕かれるのだ。手痛いなんてレベルの失恋じゃないですよ。彼女は今後恋するたびにこのときの絶望を思い出したりなんかしてしまうのかしら。失恋の話は好きだけど、ここまで完膚なきまでに叩きのめされると可哀想で仕方ない。なんとか彼女には、その後誰かと幸せな恋をする機会に恵まれてほしいんですけどね。それは空想の中にだけ存在する未来。

待つという茜子さんの選択は、ギャルゲ的には無理でも長い人生ならおそらく最適な選択なはずだったんですけどね。相手が人間の倫理や道徳なんてものの埒外の発想をしてきやがるからもうお手上げとしか…。この三角関係の決め手となったのがどこまで恋愛感情に狂えるかだったというのがまた凄まじい。茜子さんも鮮血の結末に陥りかねないほど深刻に思いつめてはいたんですけど、それでもまだ足りなかったのか…。

純粋で優しい陀衣は、純粋であったがゆえに愛に狂った末の決断はすさまじく、優しかったがゆえにあひるを選んだ後はひたすら茜子に残酷で。茜子視点から見れば人が変わったようではあるけれど、あひるに対してはどこまでも優しい恋人であり続きたというのもまたおそろしい。愛に狂ったとはいってもマッドというものではなく、どこまでも純粋さゆえに狂気と呼べる域まで踏み込んでしまったというところなんですよね。かくて美しい想いはみにくい狂気の前に敗れ去った。陀衣とあひるの幸せそうなイラストがあるのに、1巻当時から望んでやまなかった構図のはずなのに、なんか見てると複雑な気分になってくるんだぜ…。

救いがあるとすれば音忠でしょうか。その後の音忠のヘタレぶりには非常にニヤニヤさせていただきましたとも。

まあなにはともあれ、「恋は病気で、愛は狂気」という言葉がピッタリな鬱い世界を存分に堪能させてもらいました。絶賛オススメ!
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 23:36| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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