2011年05月17日

偽りのドラグーン W

偽りのドラグーン〈4〉 (電撃文庫) [文庫] / 三上 延 (著); 椎名 優 (イラスト)...
偽りのドラグーン〈4〉 (電撃文庫) [文庫] / 三上 延 (著); 椎名 優 (イラスト); アスキーメディアワークス (刊) bk1はこちら

シリーズ第4巻。ヴィクトルの予告通りレガリオン帝国の侵攻が開始された。戦場となるのはセーロフ王国。ジャンはアダマスを隊長とする応援軍の副長としてセーロフ島に派遣されるも、彼らが到着した時、セーロフ島の半分は既にレガリオン軍に占領されていた。そんな中、逃げ遅れたセーロフ島民の回収に向かうだが、警戒網が強化される中での隠密行は困難を極め――という感じのお話。

アダマスが壊れてきた。お前ら俺のこと見ろ、誉め讃えろ、崇め奉れ、って感じの雰囲気出しまくってたのが、ついに臨界点を超えてさもなくば殺すに反転。もともと自己顕示欲の塊みたいな奴でしたけど、裏を返せば皆に認めてほしい、すげえと思われたいという気持ちがあったわけで。つまり、これはヤン…デレ? その感情を向けるのが特定のキャラだけというわけじゃないからちょっと苦しいけど、強いて言えばジャンか。お前がいるからいけないんだーっていう感情は、そっち方向に解釈してしまいたくなる。時折クリスに目を奪われてしまう自分のことを変態的とか術懐してるけど、ジャン相手の方がよっぽど倒錯的ですよ(キャー

それはそうと、今更な気付きかもしれませんけど、マキナ教徒というものの姿が見えてきたことで、実は竜皇国とレガリオン帝国の戦いってファンタジー世界と科学世界の対立という構図でもあるのかなと思い当たりました。竜皇国勢力下の海洋連合の視点から物語が展開していたため、レガリオンというものは狂信的な宗教国家みたいなものかと思いこんでました。でも、この巻に登場したマキナ教徒であるレガリオン軍やその司祭たちを見ていると、過酷な戦場に疲弊している様子は見られるものの、皆いたって理性的なんですよね。対する竜皇国が理性的でないとはいいませんが、比較してみるとガートルードをはじめとして竜族の者たちというのはどうにも神秘的な存在として映る。騎士のパートナーとしての竜たちを見ていると信頼しあえるように思えるけど、所詮が異種族であるだけに上層部の考えが見えてこないのは不気味なことでもある。むしろ同じ人間であるレガリオンの人間の方がよりわかりあえる存在なのかもしれない。構造的な対立の渦中にあるとはいえ、海洋連合としてはある意味で竜皇国の代理戦争の手先とされている感もありますしね。

一縷の望みを見出してそれにすがったにもかかわらず、自分が本質的にその救いをもたらされる人間ではないと気付いてしまうということは、一体どれほどの絶望を味わうものなのだろうか。自棄になってもおかしくない現実を突きつけられただろうにもかかわらず、自らの救いを捨ててでも他者に救いをもたらすことを選べたのは、過去の自分と同じように苦しむものを一人でも多く救いたいと願ったからでしょうか。作中最も理知的と思ったレガリオン人は誰あろうニール神父でした。ジャンたちには不可解に映ったようだけど、自らは欺瞞にまみれようとも、他社の欺瞞を許さないその姿勢こそはどんな苦境にあっても大切な物事を見失わない確固たる理性のなせる業ではないでしょうか。尊い生を送った彼ならば天国に行くことができたと信じたい。

毎回ラストは衝撃の展開を用意してきて続きが気になるところで終わりを迎える本シリーズですけど、今回もその例に洩れず。いずれ来るであろうと思っていた時がついにきましたね。かつてないほどの急展開。続きが気になります。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 06:18| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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