2011年05月07日

空色パンデミック @

空色パンデミック1 (ファミ通文庫) [文庫] / 本田 誠 (著); 庭 (イラスト); エ...
空色パンデミック1 (ファミ通文庫) [文庫] / 本田 誠 (著); 庭 (イラスト); エンターブレイン (刊) bk1はこちら
「見つけたわよ、ジャスティスの仇!!」「……はい?」高校受験の朝、駅のホームで僕はその少女と出会った。彼女――結衣さんは、“空想病”。発作を起こすと正義の使者とかになりきってしまうらしい。以後なぜか結衣さんは何かにつけ僕の前に現れる。空騒ぎに付き合ってられない。最初はそう思っていた。彼女を守るため世界を敵に回して戦うことになるなんて、思いもしなかった――。えんため大賞優秀賞受賞、狂騒と純真の「ボーイ・ミーツ・空想少女」。

これは面白かった。後半の盛り上がりがめちゃくちゃいい。あらすじにはあったものの、ファンタジーなんてない学園物でここまで劇的なセカイ系の話ができるなんて思わなかった。2010年のファミ通新人作品3作はすごいと言われてのをよく見かけたけど、確かにこれはすごい。前半で空想病の患者とその周囲の人間を描き、後半ではそんな彼らとの間に築かれた関係をもとに一気に物語が加速する。一度ギアが入ったらどこまでも加速していく面白さはたまらない。そしてとことんまで盛り上げての素晴らしい結末は鳥肌もの。これぞ青春のボーイ・ミーツ・ガール!

空想病の発作というものはそばで見てたらそれこそあいたたた…で思わず目をそらしたくなってしまうものだけど、巻き込まれる人にとってはたまったものじゃない。空想病に対する世間的な理解はあるとはいえ、それこそ同類扱いされていたたまれない気持ちにならざるを得ない羞恥プレイ。そんなわけで景と結衣さんの出会いは良くも悪くも抜群のインパクト。しかもその後の面接では女装が趣味だと堂々とカミングアウトするような変人が一緒だったりと、これだけ平常心を乱されそうなら出来事がありながら景はよく合格できたものだと感心してしまったり。

ときに今回のラストのように劇的な展開にもなりうる空想病の発作だけど、大概は本人にとってもたまったものではないんですよね。公衆の面前だろうと容赦なく起きてしまうものだから、小さい頃からの患者でもある結衣さんでもあとから赤面してじったんばったんしてしまうくらいの恥ずかしさ。そんな患者たちに付き合い発作を鎮める「役者」としても、仕事だと思って割り切らないとやってられませんよね。でも、家族や近しい人にとっては否応なしに巻き込まれてしまうこともあり、他人事とは思えないしそのときだけと割り切って対処するだけでは済まない問題でもある。妹が患者である晴とか、結衣さんに気に入られてしまった景なんかがまさにそれ。どれだけ恥ずかしかろうが重要な役割を振り与えられちゃったら付き合うしかないし、どれだけつらかろうが大切な人だから見放すなんてできやしない。おまけに完治が見込めないとなれば一蓮托生、どこまでも付き合っていくしかない。景と結衣さんはまだ出会ってそんなにたってはいないわけだけども、これから結構重たくのしかかりそうな問題ではありますよね。晴はもう長いこと妹の発作と付き合って慣れてるみたいだし、なにより過去の贖罪めいた感情が混ざってるから相当な覚悟があるんだろうけど、でもやっぱり一人で背負うにはきついものもあるんですよね。研究所の関係者の中には親しい人もいるみたいだけど、同じくらいの年でその過去を共有できたのって実は景が初めてなんじゃないだろうか。愚痴って支えてもらえる相手ができて。男だろうが女だろうが、そりゃちょっと弱みを見せて頼ってみたくもなりますわな。そのうち景が晴に心理的に支えてもらう展開もあるんだろうか。

森崎のアレは確かに武勇伝として自慢の種になると思う。なんだかんだで皆いい奴。素晴らしい青春物語、堪能させてもらいました。2巻も期待させてもらいますとも。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 09:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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