2011年05月06日

[映]アムリタ

[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1) [文庫] / 野崎 まど (著); 森井...
[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1) [文庫] / 野崎 まど (著); 森井 しづき (イラスト); アスキー・メディアワークス (刊) bk1はこちら

天才・最原最早の監督の下、自主製作映画の制作に参加することになった二見遭一。すごい映画になると乗り気なメンバーに半信半疑のままコンテに目を通し始めた二見だが、その魅力にとりつかれてなんと56時間もぶっ通しで読み続けてしまう。そうして彼女の立てた計画通りに制作は進み、映画は完成するのだが――という感じのお話。

とんでもない話だな、これは。サークル活動を中心に大学生の何げない日常を描く青春物と思っていたら、唐突に化けやがった。やられた。ここぞという時までその恐るべき本性を隠してたんだな。終盤はとてもゾクゾクする展開でした。

最原さんとんでもないな、この人は。思い通りにならないことなどないかのような、人間とは思えないような才能の塊。天才というよりもむしろ超越者という言葉がピッタリくるような別次元の存在。丸一日以上ぶっ続けに読み耽ってしまうコンテという時点でいきなりとんでもない才能を見せつけてくれますけど、それすら彼女の才能のほんの一部分にすぎない。役者としての演技から編集から音響から、映画の制作に関わるほとんどすべてをこの上もない完璧さでこなしてしまう。むしろメンバーを集めたのってただの数合わせなんじゃないかと思ってしまうくらいに彼女一人でなんでもやってしまうからぶったまげる。ただし、これだけならばコメディに登場する天才キャラの中にはやってのけてしまうキャラもいるかもしれない。けれど、超越的とまでの印象を与えてくれる彼女の本領はそんな生易しいものではない。おそるべきは彼女が作り出す映画が見た者に与える効果。見た者すべてに意図したとおりの心の動きを与える映画とは、まさに作中語られた麻薬のような代物ではないか。そしてそんなものを意図したとおりに作れる存在を、人と認めることは難しい。神のような超越者のみがなしうる所業ではないだろうか。そしてそれに気付いた時には、もう彼女の魔性の力によって心を絡め取られてしまっているのだ。おそろしい存在だというほかない。

ここからかなりのネタばれになりますが。
最後まで読んで気付くこととしては、同年の新人賞にて最終選考止まりとなった『月光』との類似性。最原最早と月森葉子という天才的なヒロイン、その魅力の虜になる主人公という展開などは思い出さずにはいられないほど似たような展開でした。実際の発売日は半年ほど離れていますが、読んだ時期が近かったこともあってそちらが脳裏にちらつかずにはいられず。そのせいもあってかインパクトはやや弱めだったように思います。そして最終的な結末としても、個人的に『月光』の方が好きだということもありいくばくかの物足りなさが・・・。とはいえ、メディアワークス文庫の作品としてはあのあたりがちょうどいい具合の落とし所なのかもしれませんね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 06:48| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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