2011年04月30日

夢の上 1  翠輝晶・蒼輝晶

夢の上〈1〉翠輝晶・蒼輝晶 (C・NOVELSファンタジア) [新書] / 多崎 礼 (著);...
夢の上〈1〉翠輝晶・蒼輝晶 (C・NOVELSファンタジア) [新書] / 多崎 礼 (著); 天野 英 (イラスト); 中央公論新社 (刊) bk1はこちら

彩輝晶。それは叶わなかった夢が結晶化したもの。王の前に現れた夢売りの男は、王にそれらの夢物語を見せ始める――という感じのお話。

いくつかの中編から紡ぎあげられる、おそらくは一つの物語。この巻ではまず2人の夢の物語が展開されるのですが……、一言で言って大好き。人の想いが詰まった素晴らしい話。すごくドラマチックで、最後にはこみ上げてくる熱い気持ちを抑えられなくなる話。でもだからこそ、叶わなかった夢という言葉に胸が痛くなる話。もう一度言いたい。大好き。

一つ目のお話「翠輝晶」は地方領主の娘として生まれたアイナの話。平凡な生涯を送るはずだった彼女が十諸侯の一つ、ツァピール侯の長男・オープに見初められたことから転機を迎える物語。
大いなる受難と幾多の苦難に見舞われながらも、それらを通過することで真に互いを尊重し合う夫婦となっていく様子は素晴らしいの一語に尽きます。不幸な目に遭ったがゆえに本当の願いを叶えることとなったアイナだけど、その姿には一片の悲しみも漂わせていない。山も谷もとんでもないものを経験することになったのだけど、だからこそ味わえる幸福というものが、彼女の生涯をこの上なくまばゆいものにさせているんだろうなあ。幸せも不幸せもともに分かち合いながら年を重ねていく二人の生涯は、普通の人々よりは短いものだったのでしょうが、二人にとってかけがえのないものだったのでしょう。読んでるこちらとしても夢を見ているような幸せなひとときでした。

そして二つ目のお話「蒼輝晶」。十諸侯が一つ、ケナファ侯の娘であるイズガータの従者・アーディンの話。互いに恋心を抱きながらも身分違いのため結ばれなかった二人の話。
どストライクに好みの話でした。主筋の少女との恋、しかも悲恋とか、卑怯すぎますよ。身分違いを理解しているからこそ想いを秘めて接する様子が切なさを誘って仕方なかったです。腐れ縁の幼なじみのように気安く接しながらも、周囲に妙な勘繰りを起こされないように浮名まで流したりして。ど畜生。なんですか、この涙腺を刺激されまくりの関係は。かつての二人が交わした約束は、もともと叶うはずのない戯言ではあったけど、でもだからこそ余計にあの日アライスが現れてしまったことにアーディンともどもやるせない気持ちにさせられる。「翠輝晶」が幸せに満ちた話だっただけに、どこまでも結ばれない二人の関係は狂おしいほどに切なかった。
最後の宴会、ちょっと混ぜてください・・・。飲めないお酒だろうと飲みたくなる時があるんです。

夢売りが用意した彩輝晶は全部で六つ。ということはおそらくまだあと四つの夢物語が続くということになるのでしょう。一連の話が最終的にどのような物語を紡ぎあげるのかはわかりませんが、この1巻の時点でもう傑作と言い張りたいです。描かれる人の想いがこの上なく心地よいのですから。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 19:48| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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