2011年04月23日

チェーザレ 破壊の創造者 4

チェーザレ 破壊の創造者(4) (KCデラックス) [コミック] / 惣領 冬実 (著); 講...
チェーザレ 破壊の創造者(4) (KCデラックス) [コミック] / 惣領 冬実 (著); 講談社 (刊) bk1はこちら

山のような疑問をぶつけてくるルクレツィアをただ一言でもって押し黙らせ納得させる。明快に答えてやるところはこれまで通りの切れ者の印象を裏切らないものだけど、言葉自体がえらい物騒な物言いですこと。まあ理屈をいくらこねくり回したところで、最終的に物を言うのは力ですよね。しかしそれをまだほんの7歳の子供に言うかぁ。それほどチェーザレ自身鬱憤が溜まっていたとみるべきか、それともルクレツィアに心を開いていたとみるべきか。ルクレツィアは自分以上に兄チェーザレのことを理解できる女なんていないと豪語してますが、チェーザレとしてはここまでのエピソードからだとそれほどにルクレツィアを評価してる様子は窺えないんですよね。妹として可愛がってはいるけどそれ以上ではないというか。けど、確かこの二人は後の世にゴシップがささやかれるような間柄ではあったようなので、何かこの二人を結びつけるものがあるのかもしれませんね。

チェーザレの側近としてチェーザレと接するミゲルと、尊敬してやまない友人としてチェーザレと接しようとするアンジェロ。求める見返りが違うだけに、知れば知るほど評価は変わってくるよなあ。ミゲルは己を彼の側近と定義してるから求められる振る舞い方に基づいた割り切ったドライな付き合いができるし、利用価値があるからというだけの冷たい関係であっても冗談を言って笑いあったり、そうかと思えば友人であるアンジェロに対してチェーザレの悪口のようなことも平気で言えたりする。それに対してアンジェロはチェーザレに理想の君主としての幻想を見、気さくな態度の彼と接するうちに親友のようになれるとまで夢見てしまったがために、実は彼は友情なんてこれっぽっちも感じていないと言われて落胆したり戸惑ってしまうのも無理はない。6歳の頃から権謀術数渦巻く世界で生きてきたチェーザレが今のような人付き合いを身につけてしまったのは周囲の環境に順応した結果とも思えるが、そうとは知らないアンジェロには理解を超えた一面かもしれない。ましてアンジェロは現代人のような感覚の持ち主だ。転校先に敬意すら抱いてしまうほどの完璧超人を見つけてほいほい近づいて行ったら裏の顔を知ってしまい、その後の付き合い方に困ってるくらいに思ってるのかもしれない。でも一度惚れこんでしまったのは間違いないわけで。そうなるとその感情が憎悪に転じた時はこわいけど、直に接してるうちは裏切る度胸もなければ実際そんな気が起こるはずもないんでしょうね。しかも適当に愛想よくしてやれば見返りはそれで十分。うん、実に理想的な駒だ。それも使い捨ての。上手く惚れた弱みに付け込まれてますな。だからチェーザレも重宝してるんだろうけど。

珍しくアンジェロが職人の心配なんかしてチェーザレに対してそのことを話してたけど、それに対するチェーザレの興味なさそうな反応といったら。無能な人間は嫌い、というけど、たぶん彼らが無能だと思ってるからじゃないですよね。これは単純に眼中にない人々だからということですよね。芸術品を評する言葉の貧しさや市井の文化に対する見識の乏しさから窺うに、幼い頃から厳しい英才教育に明け暮れて、ボルジア家の隆盛に関わりのないいわゆる遊びなんて全くせずに生きてきたんだろうなあ。ここで市井の祭りを肌で感じることが後々何かしら影響を与えることになるんだろうか。それと、好奇心はあるからそれなりに溶け込んではいるようだけど、育ちの良さが全然隠せてないあたりはこの人らしくて可笑しい。下手に教養があって物怖じしない性格でもあるだけに悪目立ちもいいところ。こういうのはえてしてちょっとばかし痛い目に遭いながら慣れていくものなんでしょうけど、さすがにもう何かあると大事になってしまうようなやんごとない身分の人だからなあ。民衆に紛れて遊ぶチェーザレなんて珍しい構図が拝めるのは今回限りなんだろうなあ。次巻にも続くけど。

巻末の特別講義もこれまた興味深い。本編で描かれてるマキァヴェッリとチェーザレの関係がいやに冷めたもののように見えたのは不思議ではあったんですよね。チェーザレはともかく、マキァヴェッリもかなりクールに彼に接していて。だけど、別段マキァヴェッリはチェーザレのことを信奉していたわけではなかったんですね。学者のような観点から彼のことを興味深く眺めているというのが本当のところなんでしょうかね。そうしてみると敵のようにも味方のようにも見えない態度も腑に落ちますね。ふむふむ。しかし、作中時点でのマキァヴェッリは一体どういう立場の人間なんだろうか。一応学生ではあるんだろうけど、学者というには何か企んでそうな行動が引っかかるんですよね。むしろ後に一員となる外交団のような、政治の世界に身を置いてる人間のような印象を受ける。うーむ、謎の多い人物だ。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 17:28| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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