![人形の館と鳥籠の姫 ダイヤモンド・スカイ (ルルル文庫) [文庫] / 本宮 ことは (著); 伊藤 明十 (イラスト); 小学館 (刊) 人形の館と鳥籠の姫 ダイヤモンド・スカイ (ルルル文庫) [文庫] / 本宮 ことは (著); 伊藤 明十 (イラスト); 小学館 (刊)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/61vVh260w4L._SL160_.jpg)
訪れる者とてない屋敷にて守り役のフォースや数多くの≪人形≫とともにひっそりと暮らす少女・ディアレンシア。彼女は幼い頃からこの屋敷で深窓の令嬢として大切に育てられてきたのだ。フォースに対して募る想いを意識しつつも、平穏な日々がいつまでも続くと思っていたのだが――という感じのお話。
うっわ〜。なにこれ!? このゾクゾクと気持ちのいい甘ったるさ。これはたまりませんよ。フォースの言っていた酩酊というのは、こういう感覚なんでしょうかね。この上ない甘美な味わい。まさに極上の砂糖菓子。素晴らしいとしか言いようのないお話でした。
互いを大切に思うからこそ生まれるこの甘ったるい空間。けれどその秘めた想いゆえに今にも崩れてしまいそうな切ない雰囲気。フォースとディアの二人だけの世界は、どうしてこう心地よい空気で満たされているんでしょうね。二人だけの時間がもう少し、もうあと少しでいいから続いてほしいと、そう願わずにはいられませんでした。
前半部だけでもう十分すぎるくらいに至福を味わえるのですが、そこはいわば前座。物語的にはその後からが本番。そしてディアの純粋培養ぶりが炸裂するのもそこからが本番。フォースと二人きりの世界では、フォースの期待するようなお姫様になれてなくてまだまだだなと思ってるディアですけど、他の人間と出会ってみれば全然そんなことない。むしろ天然記念物級の箱入りお姫様ぶり。フォースが語彙に至るまでお姫様に相応しくないものに触れさせないようにしていた影響で、時に粗野な言動の飛びだす海賊たちとの会話のちぐはぐ感が可笑しさたっぷり。その上、失礼なことを聞いてきたエルディックに怒って投げつけた言葉なんて…。なんですか、あの可愛らしい罵倒は!? これ以上汚れた下卑な世界を知ってしまう前に絶滅危惧種認定して隔離保護すべき!
ストーリー的には最後まで読んでみてもまだ本当に始まったばかりじゃないですかって感じではありますが、この先どんな展開が待ち受けているのか。そして、フォースが作り出していた無菌室のような環境で純粋に育てられたディアはどうなってしまうのかと。続きが気になって仕方ないですね。