2011年04月04日

戦塵外史  野を馳せる風のごとく

戦塵外史 野を馳せる風のごとく (GA文庫) [文庫] / 花田 一三六 (著); 廣岡 政樹...
戦塵外史 野を馳せる風のごとく (GA文庫) [文庫] / 花田 一三六 (著); 廣岡 政樹 (イラスト); ソフトバンククリエイティブ (刊) bk1はこちら
「どけえいっ」
 一陣の風のごとく戦場を駆け抜ける赤毛の巨馬。騎乗する男が振るうのは、一スタルト(約三・六メートル)はあろうかという“削り出し”の大槍だ。それに触れた五人の兵士の首が一度に飛ぶ。人間業ではない。
 彼の名はダリウス。今は亡きアバール大公国の世継ぎである。その存在すべてが桁外れの男であった。
「兵を挙げて頂きたく存じます」
 彼の内縁の妻アスティアが連れてきたのは、亡国の皇女フィアナだった。生ぬるい平和に退屈していたダリウスは即決した。たった五人で一国を奪う……。こんな愉快なことが他にあるだろうか。
「ひとつ派手にやろうじゃないか!」

これまで読んできたラノベとどうも毛色が違うと思っていたら、初出は10年以上も前の話だったのですか。道理で、と言っていいのかわかりませんが、およそこれまで読んできたラノベとは似てない雰囲気の話でした。筆者の語り口のせいかもしれませんが、むしろ歴史小説を彷彿とさせるものがあって、近頃はラノベばかり読んでるせいもあってかすごく懐かしかったというか、新鮮に楽しめました。

舞台となっているのは政治よりも戦の匂いばかり感じる世界であり、中世というよりもむしろ古代を連想させるものがある。そしてそこで暴れまわる、亡国の公子でもあるダリウスがまた貴公子よりも豪傑なんて言葉が似合うような雰囲気だもんな。あまりにも素朴なので野人なんて言葉まで浮かんでくるくらいである。けれど、生死を捨ておいて今を全力で生き抜く姿は実にこの物語にピッタリに思えた。ともかくやることなすこと途方もない。けれど本人は純粋に今を楽しんでいるだけであり、屈託のないその姿は血生臭い戦場にありながらもいっそ無邪気ですらあって清々しい。たった五人で乗り込んで国を奪おうという今回の話も本当なら無茶以外の何物でもないんだけど、けれど実際やってのけてしまうんだから凄まじい。敵の城に堂々と乗り込んだりするところなんてこっちがハラハラしてしまうくらいことなんだけど、なんでもないことのように乗り切ってしまうのだから、心配するだけ損なのかもしれませんね。ダリウスら一行の中でもそれなりに常識のあったキルスなんかは内心かなりヒヤヒヤしてたのでしょうけど。

途方もない男たちが途方もないことをしでかす話というのは途方もなく面白いと、つまりはそういうこと。

ダリウスとアスティアの出会いのエピソードもすごくよかった。あの関係は確かにおつなもの。傍観者ならともかく当事者でありながらそう言えるダリウスもダリウスですが。そして二人の間に実は・・・というのはもう悶えまくって仕方ないところだったんですが、あとでそれを知ったダリウスの喜びようを見たらまたごろごろ転がりたくなってしまったんですが。

豪快な野郎たちの戦いに圧倒されたかと思いきやニヤニヤが止まらないシーンまで完備とは、侮れない話でしたよ全く。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 04:26| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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