2011年04月02日

さよならピアノソナタ encore pieces

さよならピアノソナタ―encore pieces (電撃文庫) [文庫] / 杉井 光 (著)...
さよならピアノソナタ―encore pieces (電撃文庫) [文庫] / 杉井 光 (著); 植田 亮 (イラスト); アスキーメディアワークス (刊) bk1はこちら

直巳と真冬、千晶や響子、ユーリ、哲郎たちのその後を描く短編集。。

うん、やっぱりこのシリーズは杉井光の最高傑作だと思う。文章を通して聴こえてくる音は、自分の好きな曲だったり、ある時にはどこで聴いたかもわからない曲だったり。けれど耳を澄ませば確かに聴こえてくるものがあり、その調べとともに頭の中でいくつもの情景が浮かんでは消え、流れていく様を思い描くのは至福の一時。これで本当に終わりというのはとても寂しいことだけど、けれどこのシリーズに出会えてよかったと。このシリーズが大好きだと。そう胸を張って言いきれるシリーズでした。

直巳は相変わらず優柔不断というかニブチンな奴でしたが、なんとかプロポーズまで出来たんだよな。周りからこれでもかとばかりに促されてようやく・・・というのがいかにも直巳らしくはあったものの、そうか、ついに結婚か・・・。作者本人も言ってたけど、あの一巻からよく結婚までいけたものだよな、この二人は。そう考えると実に感慨深いものがある。プロポーズ時の真冬の喜びようといったら、それまでどこか寂しそうにしてただけに見ているこっちまで嬉しい気分になってしまった。鈍感な直巳のことだからまた何度も真冬を困らせたりするんだろうけど、それでもずっと幸せでいてくれたらと願わずにはいられません。

フェケテリコは、まだ活動してるんだな・・・。四人いた頃のことを知ってるだけに二人しかいない姿は見てて痛々しい気分にもなってくるけど、それでもなんとかかんとかやっていくのが彼女たちなのかな。たとえボロボロになっても、力尽き倒れ伏すそのときまで血を吐くように音楽を奏で続けるのがフェケテリコというものだっけか。なんともロックな話じゃないですか。そんな姿勢で音楽をやり続けているというのなら、サポートメンバーであっても守りの姿勢に入ってしまう人は要らない、いつまでも戦い続ける姿勢を忘れない人でなくてはいけない。それはもうサポートという枠を超えて戦友となれるほどの人でないと。フェケテリコの信者でもあった橘花にとって、それは自己の概念を打ち砕くようなものであり壮絶な壁でもあっただろうに。でもふとしたきっかけでそれを越えてしまえるのも信者であったがゆえのことなのかな。動機はどこまでも敬愛してやまない千晶のために。それはまさしく革命に等しい愛の戦い。満たされない飢えを抱えてしまった心は限りなく歪なものだけど、だからこそフェケテリコの彼女たちは戦い続けられるのかもしれない。橘花がその後どうなるかはわからないけれど、フェケテリコは抜けたと言っても真冬はもちろん直巳も彼らなりのやり方で音楽に関わり続けているみたいだし、いつかまたあの四人が集まれる日が来るといいなぁ。

響子のリュウジとの出会いと別れは鮮烈なものだったな。バンドのすごさ、面白さを体で感じさせてくれた思い出となれば忘れられないものになるのもわかる。けど、そんな特別な出会いが中学・高校と立て続けにあったことを考えると、実は響子ってすごくラッキーな奴なんじゃいか。それとも、根気よく諦めずに探し続けていれば、必然的にそんな出会いが起こりうるものだったりするのかな?

哲郎は直巳から結婚することになったと聞かされて急におたおたしだしたりといかにも哲郎らしくて面白かった。けど、離婚したはずの美沙子さんとの電話でなんだかんだでいい雰囲気になってるところも、これもまたいざとなると頼りになる哲郎らしいところではあるよな。こういうところがあるから直巳もぶつくさ言いながら哲郎を見捨てないんだろうし、美沙子さんもおそらくそんなところに惹かれたんじゃないかなと思ってみたり。

最後まで本当に素晴らしい話でした。極上のアンコールが楽しめて大満足。物語という名の音楽を奏で続けた直巳や真冬たちに、この物語を書きあげた作者に、心から感謝の言葉を贈りたいです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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