2011年03月24日

扉の外 V

扉の外〈3〉 (電撃文庫) [文庫] / 土橋 真二郎 (著); 白身魚 (イラスト); メデ...
扉の外〈3〉 (電撃文庫) [文庫] / 土橋 真二郎 (著); 白身魚 (イラスト); メディアワークス (刊) bk1はこちら
「三つ目の扉をくぐり抜けゴールしたプレイヤーには、外への脱出と、その他副賞として豪華特典が与えられます。こぞって参加いたしましょう」。密室に閉じこめられた二年二組の生徒たちに、人工知能ソフィアを名乗る存在が、状況を打開する方法として提示したのは“オンラインゲーム”。とにかくやるしかない、とクラスで協力して、その“ゲーム”を進めているうちに謎めいた存在と接触することになり…!“誰”が“なんのため”に生徒たちを隔離したかがついに明らかに。シリーズ完結編、登場。

今回もまたとびきり救いのない結末。これぞ土橋作品に期待するものだよな。小さなミスが齟齬を生み出し、次第に大きくなっていく波紋は、けれど気付いた時にはもう手遅れ。あとはひたすら急斜面を転げ落ちるだけ。という、言ってしまえばこれまで通りのパターンなのだけど、今回はその落差がシリーズ最大級。どうしようもない絶望を見せつけられたと思っていたらさらにそこから力ずくで引き摺り落とされる。奈落の底まで突き落とされるかのような展開は、もう土橋さんどんだけドSなのかと。

初めにクラス全員で“ゲーム”に参加するように決めさせたのは、多少強引ではあったけどそれほど間違ってはいなかったと思う。閉塞感だけが支配するあの現状を打開させるきっかけとなりうるものは、彼らが知りうる限りではその“ゲーム”しかなかったし、失敗すると何が起こるかわからないだけにクラス全員が協力することは必要だったと思う。あとから思えばそもそも“ゲーム”に参加しない方がよかったのかもしれないが、他のクラスがすぐ近くにいたことを知らなかった以上、現状維持という選択肢を取れるはずはないよな。この辺りの巧妙な設定は本当にいやらしい。

失敗するとさらに状況が悪化してしまうかもしれないから自然慎重に進まざるを得ない。頼りないメンバーを引っ張っていくことになった美鈴に掛かったプレッシャーは計り知れない。そしてそんなプレッシャーのもとにあった美鈴は、以前のゲーム失敗のことも合って必要以上に神経質になってしまったんだろう。三組の生徒と出会っても何の見返りもなく信頼することはできず、かえって悪意を知らないような態度で現れた彼らは絶好のカモに見えてしまったんだろう。彼らとの交渉は明らかに弱みにつけこむようなものだった。友人たちとの付き合い方からして普段からそんな人間不信なところはなかったと思われるから、おそらく彼女なりのこの過酷な状況への対応手段だったのだと思う(もともとどこかドライなところはあったみたいなのでもしかしたらこれが地なのかもしれませんが)。けれど、さすがにそんな一方的なやり口で迫られたら相手は反感を覚えるし、同じクラスのメンバーでさえ同情してしまう人はいる。ちょっと前まではクラスメートであっただけに突然美鈴が仕切りだしても心から彼女のすることを信頼するのは難しい。なにより彼女はクラスメートの意思の統一については端から考えていなかった節がある。平和ボケした学校生活を送っていた生徒たちに危機感を持てと言ってもそんな簡単に持てるものではないと思うけど、実際に言うことなく皆も自分と同じかそれに準ずる程度の危機感は持ってるものという前提で独走していったことが失敗の原因になったんじゃないかな。悪意を持って人と接すれば悪意が返ってくると言うけど、この話はまさにその典型。悪意とまではいかないにしろ他者を蹴落としてでも自分たちの利益を確保しようという態度が次々と伝染するかのように広まり、決定的な溝となってしまったのだろう。

しかしこの“ゲーム”、そもそもが美鈴たちに勝利できるはずのない設定になってますよね。正樹さんが途中で美鈴を止めようとしていたように、途中でもうこの“ゲーム”は割に合わないものだってことはっきりしてたんですよね。けれど薬物のような中毒性がそれを許さない。悪魔のようなゲームだなぁ。参加したら最後、皆廃人になってるじゃないの。なまじ美鈴が正樹さんに好かれてただけに、どれだけの生徒がこの“ゲーム”の餌食になってしまったのか。怖いなぁ、怖い。

そして今回の主人公である美鈴もまた失敗してしまったことで、やはりこの閉鎖的な空間からの脱出は蒼井さんに期待するしかないんだろうな。正樹さんは現状維持派だし。
とか考えてたら、これで終わりなのかよ! シリーズ完結編っていうことになってるけど、これ全然終わってないよ! むしろ次こそがシリーズ佳境でしょ! これで本当に終わりなの? 嘘だと言ってくださいよ。これじゃ生殺しもいいところですよ・・・。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 23:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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