2011年03月20日

火の国、風の国物語 10  英雄再起

火の国、風の国物語10 英雄再起 (富士見ファンタジア文庫) [文庫] / 師走 トオル (...
火の国、風の国物語10  英雄再起 (富士見ファンタジア文庫) [文庫] / 師走 トオル (著); 光崎 瑠衣 (イラスト); 富士見書房 (刊) bk1はこちら


王都にてパンドラと契約して力を得たフィリップが権力を手中に収めていた一方、アレスは奴隷にまで身をやつしていた。それを見つけた仲間たちはアレスに再起を促すのだが――という感じのお話。

アレスの挫折って家出少年の心理、なのか? ちょっと違うような気がしなくもないですが、要はマイナス思考に陥って現実逃避したくなったってことですかね。死んだら骨は拾ってやる、でも思ったんですが、この辺りの言葉の選び方はちょっと作者と私の感覚にズレがあるのかもと首をひねらずにはいられませんでした。それはともかくとして、自分の意思で進むべき道を選べる近代以降の世界観ならともかく義務を義務としてひたすら遂行していくようなイメージのある中世的な世界観で家出なんてことあるのかなと思わなくもありませんしたがが、まあそこはそれ。所詮は10代の少年のことなのでしょう。

というわけで、今回の話を自分なりに整理してみる。
かつての無双の活躍はパンドラとの契約によって得た力およびその助言に依存していたものなので、契約が打ち切られたことにより自信の喪失どころかアイデンティティの喪失にも等しい衝撃を受けて心挫けてしまった。万夫不当の豪傑アレスというものを構成していた要素が根こそぎ失われて空っぽになってしまったにも等しい衝撃だっと言えるんでしょう。おまけに弱り目に祟り目のように信頼していたクラウディアの名でアレスの罪を問う通告を見せつけられてしまえば、もはやすがるものの一切を失ってしまったと痛感せざるを得ないの。そこから立ち直るためには再び自分というものを築き上げていくような膨大な手間暇かけた手順が必要になるのだろう。けれど、無双の豪力は失われていたわけではなく、パンドラの助言がなければ戦場で何もできないわけでもなかった。そして実際にクラウディアのアレスに対する信が揺らぐことはありえない。つまり、失わったものはそれほど大したものではなかったわけだ。それなら苦もなく立ち直れそうなものだけど、一度挫けてしまった心はそう簡単には直らない。これまで挫折というものを知らなかっただけにアレス本人も自分の気持ちを持て余してたのかも。そして一人の幼子を守る程度がせいぜい自分にできることなんだと、卑屈な気持ちに囚われてもいたんだと思う。そんな内閉的になってるアレス心を動かせるのは使命感の押し付けではなく、純粋に助けを求める弱者の声。これ以外にはありえなかったと、そんなところだったんじゃないかと考えてみたり。
これなら立ち上がる英雄としても格好がつくし、心折れた少年が再び立ち上がる話としてもけっこう筋が通ってるんじゃないでしょうか。だいたいあの昔語りって、当人たちは立ち直れなんて一言も言ってないと言い張ってるけど、言外にそういう意図が込められてるのは明明白白なわけで。むしろはっきり言わないだけ余計にいやらしい。ねちっこい印象すら受ける。あんなのおせっかいもいいところだと思うんですよね。自分のことを心配してくれてるとわかっているだけに根が生真面目で誠実なアレスは話に付き合っていたわけだけど、そうじゃなければ余計にへそを曲げたっておかしくないと思うんだけどな。それともそう考える私がひねくれてるだけですか?

しかもこの昔語り、どうやら例によってドラマガ連載の短編集での話らしいんですけど、相変わらず本編への挿入の仕方が違和感ありまくりなんですよね。ページ数とられまくって本編がほとんど進まないわ、おいおい何人語りだすんだよとつっこみたくなるくらいに次から次へと語り始めるものだからそのうちだれてくるわで。もうちょっと自然に挿入できなかったんでしょうか。あるいは短編集としてまとめてもよかったんじゃないでしょうか。

けれどもまあ、なんにせよサブタイトル通りアレスが遂に復活を果たしたわけですよ。その直後の見開き2ページ使った挿絵が2連続するシーンはまさにド迫力。やはりこのシリーズは戦場でのシーンが華ですね。フィリップとの一大決戦に向けて盛り上がってきました。作中のキャラに言わせればアレスは豪傑としての能力だけでなく将軍・英雄としての素質も身に付けつつあるらしいですし、これまでとはまた一味違う戦いが繰り広げられることになるんでしょうか。いや楽しみですね。

posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 15:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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