2011年02月28日

殺戮ゲームの館 <上><下>

殺戮ゲームの館〈上〉 (メディアワークス文庫) [文庫] / 土橋 真二郎 (著); アスキー...
殺戮ゲームの館〈上〉 (メディアワークス文庫) [文庫] / 土橋 真二郎 (著); アスキーメディアワークス (刊)bk1はこちら

殺戮ゲームの館〈下〉 (メディアワークス文庫) [文庫] / 土橋 真二郎 (著); アスキー...
殺戮ゲームの館〈下〉 (メディアワークス文庫) [文庫] / 土橋 真二郎 (著); アスキーメディアワークス (刊)bk1はこちら


ネットで得た情報をもとに集団自殺現場の廃墟を探していた福永祐樹含むオカルトサークルメンバー11名は、気がつくと密室に閉じ込められていた。そこで待ち受けていたのは、魔物と村人という役によって行われるゲームだった。夜を迎えるたびに一人、また一人と殺されていく悪夢のようなゲームの先に待ち受ける結末は――という感じのお話。

これまたストレートなタイトルですね。その名の通りバンバン人が死んでいきますよ。土橋さんならではな死のゲーム。今回も絶好調ですね。とはいえ、上巻はその大半が、登場人物たちがゲームに強制的に巻き込まれたという事実を受け入れるために費やされていた印象。そのため命が掛かっているという状況にもかかわらずやや緊迫感が足りないような印象も。しかしこの過程はある意味で当然とも言えるのかなと。こういうゲームが行われると知っていたならまだしも、突然そんな状況に置かれたら誰だって戸惑い現実から目を背けたくなってしまうでしょう。むしろその過程が描かれていたことで、登場人物たちがこのゲームの泥沼にずぶずぶとはまりこんでいく様子が生々しいまでに伝わってきました。本格的な疑心暗鬼に陥るまでに既に何人もの死者が出てしまうのですけど、そのときに死んでしまう人がおおむね使い捨てっぽかったのはちょっと残念だったでしょうか。初めの方に死んでいきそうな人は誰か、ちょっと読んでればだいたいわかってしまいましたから。

そんなわけで、上巻はまるまる導入部と言ってもいいのかな。本格的に面白くなってくるのは下巻。何人もの死者が出たことで、仲間を殺した“魔物”はいったい誰なのかと考え出し疑心暗鬼に陥る一同。場を仕切ったりなど目立った動きをすればするほど“魔物”ではないかと疑われてしまうジレンマ。そんな中で必死に自分は魔物ではないとアピールしようとする人々などなど。極限状態に陥った人々の焦燥感や猜疑心が混じったリアルな息遣いが文章越しにも伝わってくるようでした。この緊迫感はたまりませんね。

結末はあっさり目なのでその点に関しては物足りなさもありますが、そこに至るまでのゲームこそがこの作品の根幹であろうしその臨場感はとても心地よかったので問題なし。

それで、肝心なこのゲームのルールなんですけど、ちょっと“魔物”に有利すぎませんかね。“魔物”は大筋のルールを理解していると思われるにもかかわらず、“村人”はラビットからその都度小出しにされる情報からルールを類推するしかない。これで「フェアなゲーム」と言い張るのは無理があるんじゃないでしょうか? 作中においてもルールをある程度把握するまでに何人もの死者が出てしまってましたし。とはいえ、皆が皆ルールのすべてを把握していると、今度は“魔物”側がつらくなってしまうのかもしれませんね。作中でも“魔物”役の人は明らかに挙動不審になっていましたから、最初から“魔物”は誰なのかという疑念が支配する空間で自分以外の10人を騙しきるというのはかなり難しいことなのかも。それに、ゲームの目的を考えると、主宰者はおそらく即座に決着がついてしまうようではつまらないと考えていたと思われる。そのために恣意的に“魔物”有利の設定を組み上げたのかな。なんともいやらしいルールですわ。しかしそれこそがタイトル通り殺戮ゲームの館を支配する悪意の姿なのでしょう。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 11:08| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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