bk1はこちら
様々なイベントを経て真冬への思いに気付いた直巳。だが、それでも真冬の誕生日やクリスマスを前にしてなかなか一歩が踏み出せないでいた。ところが、ライブが近づく中で真冬の体に異変が起こり――という感じのお話。
シリーズ完結。このシリーズらしい優しい雰囲気のラストでした。直巳は直巳で最後までヘタレだし、真冬も意地っ張りなのはそのままだったけど、だからこそのすれ違い、想いの伝え方、そしてあのラストだったんだなと思います。
神楽坂先輩や千晶も、直巳の気持ちが真冬に向かってるのはわかってるけど、それでも二人の仲を応援するなんてことはしないで直巳に自分の方に振り向いてもらおうとだけ行動するところなんかは、いかにもロックなスタイルではないでしょうか。取り繕ったりなんかせずに自分の思いに正直に、という点については直巳と真冬はもう少し見習ったらどうなんだと言いたくなるくらいではありましたが、その辺りのことはもしかして二人がロックバンドをやってるだけではなくて奥ゆかしいクラシックの方にも、というよりクラシックの方により通暁してるというのが影響してるとか? まあとにもかくにも、どこまでもフェケテリコのメンバーである彼ららしい青春な物語でした。
音楽は全然詳しくないんだけど、それでも最後のその瞬間までページの端々から音楽が溢れてくるような、そんな話。ときにロックだったり、ときにクラシックだったり。音楽を題材にしているし作中にも演奏してるシーンはあるんだけど、たぶんそれだけのせいではないと思う。作者の音楽に対する思いが行間に潜んでいるんでしょうかね。読んでるうちにいろんな音楽が聴きたくなってくる。これはまさに杉井光さんの筆力のすごさですね。
これはおススメ。直巳のヘタレはちょっと鼻につくかもしれないけど、これはぜひとも多くの人に読まれるべき(すでに結構な人に読まれてるとは思いますが)。ラノベ初心者でもちょっと頑張って読んでほしいくらい。