2010年09月04日

幕末魔法士 ―Mage Revolution―


幕末魔法士―Mage Revolution (電撃文庫)

幕末魔法士―Mage Revolution (電撃文庫)

  • 作者: 田名部 宗司
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2010/02/10
  • メディア: 文庫


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時は幕末。魔法革命に背を向け続けた幕府も遂にその鎖国を開かねばならなくなったそんな時代。若き魔法士・久世伊織は一冊の魔導書を翻訳するため出雲国松江藩に赴く。そこで高名な魔法士・シーボルトの孫であるという男・失本冬馬と出会い――という感じのお話。


注目作登場ですよ! 幕末に魔法というのは意外な組み合わせでしたが、読んでみるとこれがまったく違和感がない。幕末好きかつ魔法ファンタジー好きな自分としてはなんとも嬉しい作品。背景の歴史には魔法を混ぜ込ませつつも上手く幕末の雰囲気を出し、その上でストーリーとしても伊織と冬馬のボーイミーツガールとしてきっちりラノベっぽくまとまっていたり、魔法を用いた本格的なバトルを期待できそうなところもあり。それらすべてが自然に詰め込まれてるのはすごい。これはオススメせねば。

伊織が実は女の子というのは、キャラ紹介などでは伏せられてますけど、イラストからして隠す気ありませんよね、あれは。なので、そうとは知らずにたびたびセクハラを働く冬馬と、かといって打ち明けるわけにはいかないのでただ羞恥に打ち震える伊織にニヤニヤ。男同士ならそれほど問題ない行為のはずなのにね。挙句の果てには伊織のストーカーと化してるし。冬馬さんパネェっす。

外夷に備えて魔人を作り出そうという神藤の考えは理解できなくはない。千人程度の犠牲で製造可能なら、数百万数千万という植民地人口を抱える西洋諸国なら量産も可能でしょう。それに対して何の対抗戦力を有していないのは非常に危険だし、じゃあ自分たちも作ればいいという発想は当然出てくるだろう。とはいえ、さすがに当時の日本、それも一小藩がとる策としてはあまり有効でないように思える。確か、江戸時代の日本の人口はほぼ横ばいで推移してたはず。そんな中で外国と多大な犠牲を要する魔人の製造競争をしては生産力低下を招きかねない。江戸後期の藩政改革といえば大部分は民からの富の収奪で成り立っていたはずで、いくら偽銀があるとはいえ、長期間続けると藩の財政面も逼迫してくるのではないか。とか考えてみたものの、西洋諸国がどれほど本格的に製造を開始しているのかはわからないし、松江藩も最終的に神藤を亡くし偽銀の件が発覚したことで改革以前よりもひどい財政状況だけが残る結果となったことだし、深く考えても詮無いことかなと。まあ魔人の強さは未知数なところがあるし、それに対抗する魔法もないとは言い切れないのではないかというのが勝手な予想ということで。

それにしても、この作品に刺激されてこういう歴史×ファンタジー物がどんどん増えていってほしいですね。そんな個人的な思いを込めてここからはイチオシタイム。
時代的には新撰組や坂本龍馬が活躍する数年前くらいでしょうか。出雲松江藩というだけでピンとくる人はほとんどいないと思いますが、というより私も全然知りませんが、特にそんな知識はなくても十分楽しめます。なので幕末のことはそんなに知らないよという人もぜひぜひどうぞ。また、この作品が気に入ったという人は、関連書籍としてあとがきでも名前が挙がっている司馬遼太郎の『花神』もオススメです。主人公はちらっと名前だけ出てきた大村益次郎(村田蔵六)ですが、作中に登場する実在の蘭学者はこれで網羅できるはずなので、事前知識として読んでおくのも悪くないかもしれません。


という感じで、最後の方は話が逸れてしまいましたが、背景の歴史についても改変を加えつつもしっかり作ってあるみたいなので、続きがとても楽しみです。このまま史実と関わりのないところで進むとしても、討幕につながっていく形で進むとしても、個人的には大歓迎です。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 21:01| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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