2010年08月11日

扉の外U


扉の外〈2〉 (電撃文庫)

扉の外〈2〉 (電撃文庫)

  • 作者: 土橋 真二郎
  • 出版社/メーカー: メディアワークス
  • 発売日: 2007/05
  • メディア: 文庫


bk1はこちら


前回のゲームに敗北した二年八組は疲弊しきっていた。そんなとき、高橋たちは新たなエリアを発見する。久しぶりにありつく豊かな物資に喜ぶクラスメイトたちだったが、そのエリアで新たなゲームが始まることとなる――という感じのお話。


前に読んだ『Xの魔王』だけでは飽き足らず、他にもメガネ男子分の補給できそうなラノベということで積読を漁っていたときにこの本を見つけました。次の瞬間にはこれしかないという根拠のない確信とともにこの本を読むことに決めていたという、よくわからないエピソードがあったような気がします。

そんな感じで読みだしたわけですが、読んでみるとこの作者の作り出す独特なストーリーにヤられました。制約条件下におかれた集団内で浮かび上がる不満や不安、それらが初めは皆対等だった集団生活をどんどん不安定にしていく様子、その描き方が非常に巧い。しかも、その上で話もラノベっぽくしっかり出来上がっている。これを両立できているのはすごいというほかない。ストーリーとして面白かったかと聞かれると、確かに自信を持って面白かったと言い切ることはできないけど、それでも私は、これはライトノベルの傑作であると言い張ります。超オススメ!

今回のゲームは1巻のときよりもシンプル。けれど、集団内で不和が発生するように仕組まれてるところには相変わらず悪意を感じます。全員が対等であるというのは一見理想的だけど、誰かの上に立っていないと不満を感じる人は必ずいる。そしてその人が自身の欲求を暴力に乗せて訴え出したとき、皆が対等では抑止するものがない。暴力を止められるのはそれを上回る暴力だけ。実世界では国家が行使している巨大な暴力が、あの世界には存在しない。だから、これでもかとばかりに人間の醜い姿を見せつけられる。読んでて胸糞悪くなってくる話です(褒め言葉)。小規模なゲームによって実社会の一面が浮き彫りにされるというのは面白いですね。これって実は心理学や経済学などをもとにしてるのでしょうか?
途中で正樹さんが再登場したときには彼女ならやってくれると期待したんですけど、やはりというか、一度深刻化してしまった対立は一人のリーダーの力だけでは何ともなりませんか。恨みはそう簡単に消えるものではない、と。そもそも、彼女には特にふるえる暴力がないのがつらいか。

主人公は1巻から変わっているみたいですが、1巻を読んでから少し時間が経っていたので特に気にならず。というよりも、今回の主人公の高橋の方が、腹に一物抱えつつ皆をまとめていくところとかで人間臭さが見えて好感が持てました。一番助けたい人のためなら他の皆を嵌めて絶望のどん底に追い落とすことができる。土壇場でためらわずにそんな決断ができるこのキャラが大好きです。ゲーム後に彼もまた船外に出たようですが、このままフェードアウトしてしまうのか、それとも3巻でまた登場してくれるのか。


という感じで。いやそれにしても、こんな話を書きあげられる土橋さんはすごい。完全に虜になりました。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 14:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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