2020年02月22日

Unnamed Memory(4)白紙よりもう一度

めちゃくちゃ好き。仕切り直しのAct.2、どんな話になるかと思ってみれば、めちゃくちゃ好みな話になってるじゃないですか。

実はこの第二幕、期待よりも不安が先行してたんですよ。ティナーシャとオスカーの物語としては第一幕の中ですでに見たいものは見きった感があったので。その後もつづいてはいましたけど、正直蛇足になってしまうのではと思ってました。けど、そんなものは要らぬ心配でした。第二幕、第一幕の展開を踏まえることでさらに好みの展開になってますよ。

好きあっているのに結ばれることが許されない関係のふたり。そんなもの、大好きに決まってるじゃないですかという。前の時間軸では結ばれたふたりが、今回は間に立ちはだかる障害によって自ら気持ちに蓋をしようとする。そのあまりのものわかりのよさが腹立たしくて。けれどそれでもときにどうしようもなくもれ出てしまう慕情があまりにも切なくて涙を誘われそうで。どうしてお前らはそうなんだと叫びだしたい気持ちにさせられる展開なんですよ。つらい……はー好き。

というのもこの第二幕の世界、3巻ラストを読めばわかる通り、第一幕とは似て非なる世界なんですよね。同じ国は存在する。同じキャラクターも存在する。けれどそれら/彼らが過ごしてきた時間は微妙に、あるいは決定的に違いがある。となれば、同じ魂を有しているキャラクターであってもあちこち差異は生じてくるもので。ティナーシャとオスカーの間でいちばん物語に大きく影響してきているものとしては、ふたりの立場、そしてそこからくるふたりの関係性ですね。歴史が変わった世界で、ティナーシャは明確に王であった。オスカーも、実質的に王であった。王としての立場がふたりの結婚を遠ざけるとなれば、過去のティナーシャを助けたオスカーの行動にはなんの意味があったのかという気もするけれど、あれはもうあの場にいあわせてしまえば後悔のない選択だったはずですからね。なにも言えぬ。そしてこのもどかしい状況である。やったぜ。

Act.1の1冊めである1巻と比べると、ラブコメのコメ分がうすまってラブ分が増量されてる雰囲気でしょうか。とても好み。ちょくちょくAct.1の展開を想起させられる文章が入ってきたりするのがまた攻撃力高いんですよね。「殺し文句」とか、前の時間軸の記憶は一切ないオスカーの口から出てくるともうやばい。出会いは違うし、ティナーシャの立場もすっかり変わってしまったけれど、それでもオスカーは彼女に心奪われる。そのことに例えようのない運命を感じずにはいられなくって。ほんと好き。

まあ今回はティナーシャさんのほうからだいぶアタックしてた感がありますけども。まあなんせ3巻ラストがラストでしたからね。ティナーシャがオスカーという人物に特別な感情を抱くことは自然なことでしょう。とはいえ今回のティナーシャさん、そのタイミングで幸せな時間を過ごしてて、その後が女王としての現実の政治との格闘で無味乾燥に消費された影響か、第一幕のときより精神的に幼い気がするんですよね。オスカーにいじわるされて頬をふくらませているのがとても似合って見えるようなというか。オスカーと関わってることが多いから、自然とその当時の記憶に引きずられてるのかもしれませんが。なんというか、今回のティナーシャは誰かがうまく誘導してあげないと勝手に不幸せな道を突き進んでいきそうな生きるの下手さを感じるというか。でも、それに関していちばん適任なオスカーが穏当に自制してしまってるままなんですよね。どうしようもなくティナーシャに惹かれてるにもかかわらず。こっちも下手すると生涯独身コースを歩んでしまいそうというか。どうしようもなく不器用な王ふたりの話ですよね。好き。

そんなわけで、ふたりのまたすこし違った関係を楽しませてもらえる話ではありましたが、第一幕で謎のままに終わったできごとの真相が明らかになる第二幕としては、まだあまり進展をみせていないように感じられるのでもあり。その意味では、巻末の次回予告で次の巻がとても気になってくるところではありますね。そしてそのとなりにも驚きの発表があり。そちらともども楽しみにしたいところです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 15:29| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする