2020年02月13日

エクレア orange あなたに響く百合アンソロジー

エクレア orange あなたに響く百合アンソロジー - 仲谷 鳰, あらた 伊里, 缶乃, 平尾アウリ, ほか
エクレア orange あなたに響く百合アンソロジー - 仲谷 鳰, あらた 伊里, 缶乃, 平尾アウリ, ほか

同名アンソロジーシリーズの5冊目。今回もいい百合短編がたくさんでたいへんいい一冊でした。

個人的にいちばん好きなのはカボちゃさんの「私たちの交点」。委員会とか部活とか、そうした学生ならではの環境のなかで、人間関係のことや将来のことで悩みがあったり。いつかの学生時代の空気感を思い出させてくれるあれこれを背景に、文学少女と部活少女のふたりの交流が描かれる。表面的には接点がなさそうで、序盤を読んでいてもあまり気が合いそうにないふたりではあったんだけど、何度か接していればなんとなく伝わってくるものはある。第一印象からすれば意外な一面だったり、なにか抱えこんでいる問題がありそうなことだったり。けれど相手の内心に踏みこんでみるほどには思いきれず、かといって放っておけるほどには冷淡にもなれず。適切な距離感を探るようにしてすこしずつ交流を深めていく様子が、とても繊細でいいものだと思ったのです。これぞ学生百合の一コマと感じさせる空気感でした。

同じく学生百合だと竹葉久美子さんの「陽炎のうた」もよかったですね。ちょっとホラーっぽい設定からのえっちな展開にドキドキさせられたりもするんだけど、設定が設定だけにふたりの関係性はとても感情に訴えかけてくるものがあって。ここから先に続いていかない、短編ならではの読後感を与えてくれる話ですね。

そこをいくと、同じ学生百合でも宮原都さんの「切れない距離」は、この先の展開が気になる話でしたね。設定的に三角関係ではあるようですし。なかなかにシリアスな展開になってくれそうというか。

あらた伊里さんの「ティアドロップス」は、学生百合になるんでしょうかね? 小学生って学生……? そんな疑問もわいてきますがそれはともかく。最近読んでる作者さんのほかの作品でも感じるキャラクターの勢いはこちらでもバンバン伝わってきて。この、女の子たちがにぎやかにわちゃわちゃしてる感じ、すごく好きなんですよね。ピアノの先生のツッコミとか、独特なノリがもう大好き。けれどなによりも、いちばん最初に出てきた年の差という伏線をきれいに回収してストレートに濃度の高い百合に落としこんでみせる展開がみごとすぎて。甘々疑似姉妹百合、とてもいい……。コメディとしても、百合としても、短編としても、とても好みな話ですね。

学生百合もいいですが、社会人百合もいいものではありまして。桐山はるかさんの「不器用たちに幸あれ」はそのなかでもいちばんの好み。すごい人だと思ってるんだけども叱られてばかりで苦手に感じていた主任が実は自分のことを評価して気にかけてくれていたということをプライベートな場で伝えてくれるのは、それだけでもうありがたい気持ちにさせてくれる展開ではありまして。ましてやそこで、自分にしか見せてないであろう親しみやすい一面を見せてくれるとなれば、これはもうギャップでドキドキが止まらなくなってしまおうというもの。こんなところを見せられたら、しばらく別の意味で同じ空間にいづらくなってしまいそうなんですが、神田さん、帰りの車で事故ってないといいですね……。主任の笑顔のかわいさにやられた。

川浪いずみさんの「帰ってきたクソ女」も好みな話で。この本のラインナップとしてはタイトルが強烈だけど、話はまっすぐな百合の話。警戒心を抱きながらも好きなものは好きだからどうしようもないという、そんな大人な関係がドキドキさせてくれることで。ふたりのやりとり、猫のくだりでは声に出して笑ってしまいました。そして、そんなこんなを含みながらも、短編の分量でこの話をきれいにまとめてくれるラストがとてもいい雰囲気なのでして。読後感もとてもいい。いい短編マンガだと思います。

その他、むっしゅさんの「ちゃんと見てって話」は高校生の女の子と大学生の女の子の年の差百合。年上のおねえさんを慕う高校生とそんな彼女につきあってあげるおねえさんという様子がどこか姉妹っぽさも感じさせていいものではありまして。くわえて、構ってほしいのにぞんざいにあしらわれたり、かと思えばちょっといじわるにからかってきたりする、そんなおねえさんの態度にずるいずるいと内心で怒ってみせたりする女の子の様子がたまらなくかわいく思える話なのでした。いいですよね、こういうの。

ずるいといえば、古鉢るかさんの「たゆたうくちびる」のラストも、態度としてはアレなんだけども、それを感じさせないずるい表情がなんだかちょっとかわいいかもと思えたり。

とりあえずはそんなところで。今回もいい一冊でした。百合好きな方はぜひぜひ。


posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 23:30| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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