2019年08月06日

やがてうたわれる運命の、ぼくと殲姫の叛逆譚

やがてうたわれる運命の、ぼくと殲姫の叛逆譚 (ファミ通文庫)
やがてうたわれる運命の、ぼくと殲姫の叛逆譚 (ファミ通文庫)

やがてうたわれる運命の、ぼくと殲姫の叛逆譚 藍月 要:ライトノベル | KADOKAWA

これはよい年上ヒロインファンタジーラブコメであった。

特に、三姉妹の一番上のオルカさん。これが、おもしろくらいにポンコツなおねえさんでして。……いや、普段はクールで凄腕な魔物狩りなので、ポンコツという言葉からすぐに想起されるキャラとは違うんだけども、主人公の前でだけおかしいくらいのポンコツぶりを発揮してしまう人なんですよね。……と書いたところで、やっぱりポンコツは違うだろうかという気もする。でも、主人公の前でだけ普段のクールさが跡形もなく消え去って、不審者まがいの動揺ぶりを力技で押し隠そうとして塩対応レベルでクールすぎる感じになってしまう様子は、平時の頼れる魔物狩りぶりと比べるとどうしても「ポンコツ」という言葉でもって形容したくなるものでありまして。

三姉妹ともに主人公の少年に好意を抱いているのではあるけれど、ほかの誰よりもその想いが強いがゆえに、またそれまでそうした想いとは無縁の人生を生きてきたがゆえに、好きな相手を視界に入れるとあふれ出んばかりの感情を処理しきれずにてんぱってしまう様子がたいそうかわいらしいことで。

まあただでさえ、この話の主人公のレン君はまだ声変わりも来ていなさそうな少年にすぎなくて、その一方で三姉妹の最年長オルカは彼と比べれば片手に余る年齢差。本気の気持ちを伝えればその瞬間に犯罪臭がただよってきそうな絵面であり。それに、その年頃の少年にとって、その年齢差がどれほど大人と子どもという隔絶を感じさせずにはいられないものかを考えれば、自分の気持ちは迷惑になるものでしかないと、自嘲ぎみになるのもうなずけようというもの。

ただし、少年の側からすれば、そんなオルカの葛藤はなんのその、女性ながらに魔物狩りとして男顔負けの実績を積み重ねるオルカたち三姉妹は少年心にはヒーローのような存在であって。なかでもその長姉にして最強のオルカは憧れの存在ですらあったりしたわけで。

奇妙な態度を取ってしまって呆れられたかもとか嫌われてしまったかもなんて、ひとり百面相したり奇声をあげたりしてるオルカの様子は、それでもレン君の前では精一杯にかっこいい大人の女を取り繕おうとして取り付く島もない感じの態度になってたりするのと合わせて、それはもうニヤニヤと眺めさせてもらえるものでして。たいへんにやにやしいラブコメぶりでございました。

そして、そんな彼女の想いが報われるラストの展開を見ていると、これ、実はレン君の物語じゃなくてオルカの物語だったのでは、なんてことも思えてきたり。

後半、魔物あふれるファンタジー世界らしいバトルもあったけど、そうした命懸けのバトルを経た末のラストがようやくそこなのかという到達点は、おそろしくじれったいくらいの遠回りな第一歩だなあなんて思わされたりもしましたが、個人的にはこういうの大好きなんですよね。これで終わっても話としてはきれいな終わり方だとも思うけど、可能ならばその先の彼女たちの姿を見てみたいという気持ちにさせられるものがありますね。

実に興味深い【年上のお姉さん学】なる学問ともども、シリーズのさらなる進展を期待します。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:23| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

虚構推理(2)

虚構推理(2) (月刊少年マガジンコミックス)
虚構推理(2) (月刊少年マガジンコミックス)

『虚構推理(2)』(片瀬 茶柴,城平 京)|講談社コミックプラス

現在の彼女を名乗りながら適度に距離を置かれてる琴子と、別れを選択をしたものの未練はある元彼女の紗季さん。ひとりの男をめぐって威嚇したり鋭いツッコミを入れ合ったりして火花を散らす、愉しい楽しい恋のさや当てが本格始動した!

やばい、これ、めっちゃおもしろい。琴子は元カノの紗季さんに対して、現在の彼女としての優位性を(ムダに)誇示しにかかるんだけど、九郎が琴子といる時間を素直には楽しんでないことがうかがえるエピソードばかりで、紗季さんならずともツッコミどころがありすぎて返り討ちにされっぱなしで。けれど、一方の紗季さんも、そうして九郎のタイプの女の子はむしろ自分のほうであることを指摘しながらも、自分自身は別れる以外の選択ができないことを痛感しているがゆえに痛み分け以上にはもっていけない掛け合いの流れ。

そうして、双方に(ムダに)心理的ダメージだけを蓄積させていくという、きわめて不毛なキャットファイトが展開されることになるのであったという。なんという愉快な光景であることか。邂逅後に互いにネットで特定のワードに釣られまくってるところまで含めて笑った。

しかも、その間、間にはさまれているはずの苦労の出番は一切なし。完全に女による女だけの戦いであった。本人のあずかり知らぬところでムダな戦いがヒートアップしているという事実にさらされる九郎の心中やいかに。やー、見てる分には最高に笑える見ものではあるんですけれども。「なにがメエだ」よ、本当にwww

というか、その渦中に現れた九郎的には、そこで琴子をかばう様子が微塵もないのがまた笑えるというか。九郎と琴子の関係って、ひいき目に見ても腐れ縁的な雰囲気にしか思えないところがあるんですよね。ひたすら琴子のほうからぐいぐい寄っていって、九郎のほうでは諦観まじりにそれを受けいれている感じというか。まあその分、遠慮の必要もない関係であることがうかがえて、その点に関しては意外にも悪くはない雰囲気とも思えるのであって。

桜川九郎というキャラも、相当に因果な業を背負わされてるようではあるんだけど、そんなある意味人間じゃない男に熱を上げられる女の子というのは、相当に貴重な存在ではありますよね。とはいえ、すんなり心を許すにはかわいらしさよりもうっとうしさが勝るのが琴子というキャラでもあるんだけど。

それにしても、ジャンルとしてはミステリなのかなと思って読みだしたシリーズですけど、ずいぶん妖怪要素の色濃いキャラの背景になってますね。輪郭の見えてきた「鋼人七瀬」の事件も、怪異譚といったほうがふさわしそうな感じで。色恋方面でも怪異方面でも、先が気になる展開になってきましたねというところ。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 19:47| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

キーミスティックアンダーカバー

キーミスティックアンダーカバー (バンブ-・コミックス Qpa collection)
キーミスティックアンダーカバー (バンブ-・コミックス Qpa collection)

表題作の、攻めの変態ぶりにツッコミ入れずにはいられない受けとのやりとりもそれはそれでおもしろかったけど、それ以上に、最後に載ってた短編「千夜めぐり」がよかったですね。

記憶を消されてしまう最後の夜、花向けとして想いを募らせていた相手に抱かれる一夜限りの記憶。そんなシチュエーションで、最後の夜だからと優しくいたわろうとする攻めの男に対して、最後だからこそめちゃくちゃになるまでかわいがってほしいとねだる受けの男娼ちゃんがすごくいじらしいかわいさにあふれてたんですよね。

いつも客の好きにされる男娼だからこそ、最後の夜はそうしていやな気分を味わうことなく、おだやかに過ごしてほしい。そうした気遣いはうれしいものではあるんだけど、なまじ好意を抱く相手だからこそ、そうした気遣いは逆に執着のうすさと映ってしまうわけで。男娼として最後の夜に差し出せる最高の餞別は己の体以外にはない。けれどそれすら欲してもらえないとなれば、それは己の価値はその程度のものでしかないと言われたかのようであって。

最後の夜だからこそ、そんな別れはあまりにも悲しくてやるせない。そう思うがゆえに、自らの手で自分の体を高ぶらせ、相手の男の目の前でいやらしい姿を見せつけることで欲望をふくれあがらせ、いてもたってもいられない気分に駆られるままもむさぼらせる。ペースも考えずにひどくがっつかれて、そうしてやっとうれしげにほほえむ姿は、たいへんにいじらしくてかわいかったです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:23| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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