2019年05月29日

100分de名著 2019年2月号 オルテガ 大衆の反逆 多数という「驕り」

オルテガ『大衆の反逆』 2019年2月 (100分 de 名著)
オルテガ『大衆の反逆』 2019年2月 (100分 de 名著)

100分de名著 オルテガ『大衆の反逆』 2019年2月 | NHK出版

闘いの場に身をおいた人物の言葉は重い。

言論によって内乱に向かう時代の潮流と闘ったスペインの哲学者オルテガ。代表作『大衆の反逆』を中心にしてまとめられるその考えは、過激な思想に流されるばかりの「大衆」、「大衆」とは違う存在を受け容れる思想としてのリベラル、自らを作りだす周囲の環境およびそれらを築きあげてきた死者たちへの意識、過激な変革に違和を抱く保守観など。全体として、初心者にもわかりやすい平易な解説書でした。

解説された彼の言論からは、多数派の独善に陥り暴走する大衆を止めようとして考えだされたのだろうレトリックがいくつも感じられた。その最たるものが「生きている死者」の考え方だろうか。なんの縁もない学者・政治家がなんやかんや言って通じなくても、血のつながった父祖を含めた死者たちの思いを想起させられることは、独善からの脱却をもたらすうえで効果を発揮しうる考えではあったことだろうと思う。とはいえ現実としては、暴力に訴えてでも自分たちの考えを押し通そうとする潮流を食い止めるにはいたらなかったわけだけれど。

けどそれでも、現在においてもなお見るべきところの多い人物であるように思われる。
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2019年05月28日

進化は万能である 人類・テクノロジー・宇宙の未来

進化は万能である──人類・テクノロジー・宇宙の未来 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
進化は万能である──人類・テクノロジー・宇宙の未来 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

偉大な先駆者や計画的なトップダウンによるものではない、自然発生的な変化の積み重ねによってボトムアップ的に「進化」してきた人間社会の姿を様々な分野から描き出そうとする野心的な著述。

進化とはそれすなわち、累代的な変化の蓄積である。ドラスティックな変革ではなく、たとえそう思えることであっても、その瞬間だけを見ればそう見えるのかもしれないが、その変革を用意する背景が少しずつ準備されたうえでの最後の一撃が画期的な印象を与えているにすぎないとする。

筆者の主張によれば、歴史さえもが偉大なリーダーは単に時代の表象でしかないことになり、その登場を準備し台頭を支えた民衆たちこそが時代の「進化」のカギであったことになる。さらにいえば、変革の必要性が生じる社会的な状況さえ整えば、現在知られている偉大なリーダーがいなくても、別の人物が似たような事績をあげてのけただろうということもできる。それにしたがえば、いま現在のこの世界にいたる人間社会の発展は偶発的でありながら必然的でもあった、とでもなるのだろうか?

さすがに記述がさまざまな分野にまたがっているためか、多分に問題提起の度合いが高い箇所もありながら、興味深い内容だったとは思う。特に、上からの指導や計画によるものではない、社会のあちこちから自然発生的に現れた進歩の伝播・深化による、計画されたわけでもないにもかかわらずの効率的な発展システムの形成というのは、アメリカに代表される自由主義社会のダイナミックな発展のメカニズムを称揚し解き明かすためにこの上なく力強いメッセージであるように感じられた。

たいへん刺激的で、それゆえに面白い一冊であった。
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2019年05月27日

アルバート家の令嬢は没落をご所望です(1)

アルバート家の令嬢は没落をご所望です 1 (B’s-LOG COMICS)
アルバート家の令嬢は没落をご所望です 1 (B’s-LOG COMICS)

これはヒロインと従者の関係がいい感じですね。従者のほうが上下関係気にせずずけずけとものを言って、公爵令嬢であるヒロインはそれにあきれてときにクビにしたいと面と向かってこぼしたりしながらも、なんだかんだで気のおけない間柄のようなやり取りを楽しんでいる。傍から見ててとてもお似合いな間柄に思えるんですよね。身分的に本来許される関係でないことを除きさえすれば。

突然前世の記憶を取り戻したヒロインがゲームの世界云々いいだしたり、悪役令嬢らしく没落を目指すなんて気の触れたようなことをいいだすやいなや、頭がおかしくなったのかなんてツッコミを真正面から入れられるのって、どう考えても普通の主従のやり取りじゃないですよね。でもこれがまた息の合ったテンポでの言い合いになったりするから楽しそうではあることで。

そしてこの従者、抗うことなく悪役令嬢としての没落の道を歩もうなんてするヒロインに対して、一応ひき止めはするものの、そこまで強く反対したりはしないんですよね。お嬢が決めたことならば、よくわからないこだわりでも付き従うのみとばかり。それどころか、お嬢がその気ならば、しっかりお膳立てもしてあげようと、積極的に協力したりもする。

その裏にある異図はなんだろうかと思うところですけど、まあ、ラブですよね。お嬢が本来のゲームの「ヒロイン」にいじわるしたつもりがすっかり親切なお友だちと思われてしまってるのは生温かく見守りながらも、主と距離の近い「攻略対象」の男キャラが彼女ではない本来の「ヒロイン」との距離を縮めてるのをいい笑顔で見届けたり、傷つく役回りも進んでするお嬢を心配して挙動不審なくらいに気にかけてみたり。いいですよね。恋ですよね。

完全に身分違いの恋だけど、没落してしまえばそこは解消されるともいえるところ。とはいえそれはヒロインにとっては小さくない代償を伴うはずのもので。女主人と男従者のいい感じな関係の話ではありながら、不安と楽しみが同居する悪役令嬢タイプの物語。本来の「ヒロイン」も素直でかわいらしく、楽しみなシリーズですね。ただマンガの次は何か月後か。これはいっそ原作小説で読んでみるのもいいかもしれませんね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 20:59| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

初めて恋をした日に読む話(2)

初めて恋をした日に読む話 2 (マーガレットコミックス)
初めて恋をした日に読む話 2 (マーガレットコミックス)

初めて恋をした日に読む話 2/持田 あき | 集英社コミック公式 S-MANGA

順子先生、ふだん恋愛方面を筆頭に残念さを発揮しまくってるくせに、ときどき急にかっこいい大人な一面を見せてくれたりするからずるい。ギャップですごく心に響いてくるんだもんなあ。

失敗して情熱を見失っていたかつての優等生はからっぽの失敗した自分を知るからこそ次に見つけた機会に全力で取り組める。恋なんてしてる暇もないほど仕事に打ち込んでいたくなる。いいですよね。生徒の学習指導に一生懸命な順子先生、とても輝いてる。しかも、そんな一生懸命な姿にひかれて恋の予感もどんどん高まってきてる。雅志も仕事できる男としてバリバリかっこいいとこ見せてくれるようになってきたし、由利くんは年の差がもどかしいほどの一直線ぶりをさらに感じさせたくれるようになってきたし。美和じゃないけど、おもしろくなってきたとは思いますよねえ。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 17:21| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

おっさん冒険者ケインの善行(1)

おっさん冒険者ケインの善行 1巻 (ガンガンコミックスUP!)
おっさん冒険者ケインの善行 1巻 (ガンガンコミックスUP!)

おっさん冒険者ケインの善行 1 | SQUARE ENIX

ヒロインたちのパーティー「高所に咲く薔薇の乙女団」、ここの女の子たちがワイワイしてる感じ、絵的にとてもかわいらしくていいですね。ワイワイしてる話題がだいたいおっさん絡みなのがなんではあるけれど、それはさておいても気持ちがあふれでちゃうタイプの女の子たちのもの思いぶりは見ていて本当にかわいらしい。そんな彼女たちにふり回されがちなリーダーのマヤさんには同情したくなる部分もあるけれど、その一方でそれをだしにして顔がよくてかわいい女の子たちをからかってお楽しみをしてたりとするようなので、これはこれで楽しそうではある。いいパーティーですよね。百合的な視点でとてもおいしいというか。まあ矢印が向いてる先はだいたいおっさんなんですけど。

そのほか、ギルドの受付嬢のおねえさんもアナストレアさんからやたらに敵意飛ばされてキレぎみな様子はおもしろかったし、孤児院のエルフお母さんも小さいころからケインを知るがゆえの成長しても親子な感じのやりとりがいい感じだったりと、少女組のにぎやかなかわいらしさに対して、大人組のおちついた包容力あるかわいさもなかなかいいものでした。女性キャラがだれもかれも魅力的なキャラばかりなんですよね。

これはなかなか楽しみなシリーズになりそう。次の巻も期待したいですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 15:38| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。―AΩ―(2)

即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。-ΑΩ- 2 即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。【コミック版】 (アース・スターコミックス)
即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。-ΑΩ- 2 即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。【コミック版】 (アース・スターコミックス)

https://www.comic-earthstar.jp/detail/sokushicheat/

「……高校って思ってたより面白いところだったんだな」(P56)。

ホントだよ! 1巻の花川たち然り、この巻の橘も然り、こんな頭おかしい奴らが何人もいたら、そりゃ退屈しないわ。関わり合いにならない距離から眺めていられるかぎりにおいてだけども!

この世界に来てる日本人、本当にそろいもそろってろくでもなさすぎる。意味がわからなすぎてむしろ笑えてくるレベル。なんとも新感覚なおもしろさ。そしてそんな中で、いつもツッコミ心を忘れず楽しませてくれるのが壇ノ浦さんであり。まあ彼女の彼女でいろいろおかしいんですけど、周りのキャラが輪をかけて一般人から足を踏みはずしすぎてて相対的にまともに見えるという。ちくしょー!

ストーリー的にも、最終的にはやっぱり即死なんだけど、どいつもこいつもキャラが濃いから即死までの展開を楽しませてくれるんですよね。主人公は反則的なチート持ちなんだけど、敵対するキャラもたいがいバランスブレイカーなクラスのスキルの持ち主ばかりだから、油断はさせてくれない流れに仕立てられてるというか。いかに即死につなげるかの筋立てもなかなかおもしろいですよね。

ともあれ、今回もおもしろかったです。次の巻も楽しみ。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:04| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月26日

The Court Magician

(雑誌収録作品ではありますが、雑誌として読んだわけではなくWeb上で単品として読んだ作品なので、悩みながらもWeb小説カテゴリで)

http://www.lightspeedmagazine.com/fiction/the-court-magician/

短編作品(3160語)。ネビュラ賞最終候補、ヒューゴー賞・ローカス賞最終候補(ともに本選はまだ)。

タネも仕掛けもある奇術ではない、本物の魔術師になることを願った少年に待っていたのは、おのれの大切なもの――自分の体の一部や気に入っていた物、親密さを感じていた人――と引き替えに摂政の悩みを解くことを義務づけられた宮廷魔術師としての生だった。

願いを叶えた代償としての喪失の重さがずーんとのしかかってくる展開がたまらなかった。

残念なのは、自分の英語力が拙くて、ラストでどうなったのかまったく読み取れないこと。大人向けの作品はまだ自分にはレベルが高すぎるのかもしれない。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:24| Comment(0) | Web小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

予言の経済学(2)巫女姫と転生商人の異世界ギルド代表選対策

予言の経済学 2 巫女姫と転生商人の異世界ギルド代表選対策 (レジェンドノベルス)
予言の経済学 2 巫女姫と転生商人の異世界ギルド代表選対策 (レジェンドノベルス)

レジェンドノベルス|シリーズ別一覧|予言の経済学

事業への株式システムの導入までならまだしも、イノベーター理論(アーリーアダプターとかアーリーマジョリティーといった感じの考え方)による需要の流れの予測とかになると、経済学というよりも経営学の領域に入ってきてないですかねという。いやまあ大きなくくりでは経済学といえるんだろうけど。

ともあれ、今回は特に転生商人大活躍な話であった。ほかの人のコメントで見かけたんですが、今回もミステリー的な構造で。サブタイトルにもなっているギルド代表選に絡んで不穏な動きがすこしずつ伝わってくるなかで、主人公の打った布石の効果が形となり、最後に結末とともにその深層が明かされる。そうした感じの流れが今回も読み味として楽しませてくれる話でした。巫女姫の見せ場があまりなかったのがややさびしいところではありますが、そのぶん幼なじみの商人娘さんがあれこれ立ち回ってた印象なのでこれはこれで?

それにしても、学園の中からはじまった地方出自の商人の話が、1巻では王国西部公爵領域に広がったかと思えば、この巻では全王国規模への広がりを見せ、次回はさらに帝国にまで広がっていきそうな気配もあり。膨らむスケール感にわくわくさせられます。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:21| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月24日

弱キャラ友崎くん(2)

弱キャラ友崎くん Lv.2 (ガガガ文庫)
弱キャラ友崎くん Lv.2 (ガガガ文庫)

小学館::ガガガ文庫:既刊情報

対戦ゲームのNo.1とその挑戦者という間柄からはじまった日南さんとの関係が、生徒会の選挙では立場を逆転して勝ち負けを競い合う。それぞれの持てるすべてを駆使して勝ちにこだわるふたりの姿勢がおもしろかった。そして結果が出た後にも、とにかく楽しい試合だったみたいなふたりの表情が清々しくてすごくよかった。やっぱりこのふたりの関係、いい感じですよね。まあ約一名、重傷者を出してしまった感はあるけれど。

ともあれ、勝負を通じてお互いわかりあってる感じのある友崎くんと日南さんだけど、わかってきたこととして、ゲームに対するスタンスにはやや違いがあるっぽい。日南さんは、作中でもいわれているように、正攻法をひたすら量をこなすことで総合力をつけてどんな壁も正面突破してみせる正統派。求めるのはその先にある勝利のみでありながら、その努力量は常人からしてみれば恐れ入るばかりであって。それが彼女のかっこよさの源泉になっているんですよね。

一方の友崎くんは、今回の戦い方が特にそうだったんだけど、正攻法よりも彼我の長所と短所を分析して、今のリソースで可能なベストな攻略法を追求していく感じ。対策型の戦略ではあるけれど、彼我の距離を冷静に見据えてその間を一歩ずつ縮めていくことに意義を見いだすタイプのゲーマー、だろうか。

彼我の間にあまりにも距離がある場合、いきなり勝利ばかりを求めてしまうと今回の七海さんのようにダウンしちゃう危険性が高そうなんだけど、その日できる少しずつの成長を積み重ねた末に達成を目指す方向性のほうが現実的に思える。まあでも今回はとにかく相手が悪かったとしか。というか、日南さんはそのスタイルでどこを目指してるのかという。本当にとんでもない人ではある。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:53| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月20日

リバタリアニズム アメリカを揺るがす自由至上主義

リバタリアニズム-アメリカを揺るがす自由至上主義 (中公新書)
リバタリアニズム-アメリカを揺るがす自由至上主義 (中公新書)

リバタリアニズム|新書|中央公論新社

リバタリアニズム。それは上からの権力を取り除いて、さまざまな領域で自由の拡大を志向する政治思想。経済的な規制を排除して自由を志向する面では保守派に見えるが、社会的なマイノリティーなどの不平等を排除して誰もが自由に生きられるよう権利の向上を志向する面ではリベラル派にも見える。左派や右派、保守やリベラルといった区分では分類しきれない思想であるその自由至上主義について、本場アメリカを中心にして、その思想の持ち主たちを何人も訪ねながら、そのさまざまなあり方を紹介する一冊。

なかなか興味深い本だった。リバタリアンなるものについては、ピーター・ティール関連の本を何冊か読んでいるうちに興味を抱いていたところではあったのだけど、その内実としては彼ひとりの来歴を追うだけではとうてい理解しきれないほどに幅広いあり方があるようで。特に彼の場合は左右でいえば明確に右派の人物なので、もっと左派的なリバタリアンというものも当然ありえたわけで。

実際、アメリカでは、その本場だけあって、それなりの数のリバタリアンがいるらしい。本書で取り上げられている調査では、有権者の「おそらくは10〜12%」ほどがリバタリアンであると推定されているという。リバタリアン党というそのものずばりな政党もあるそうだが、選挙においては民主党・共和党それぞれの候補に広く分散して投票する傾向にあるとのこと。さすがに二大政党制に割って入れるほどの勢力ではないので、合理的な選択としてはそうなるかというところ。

とはいえ、本書において紹介されるリバタリアンの人たちの政治との関わり方を見ていると、固定的な政党支持よりも政策単位での各党への働きかけという形によって、自分たちの望む社会の実現を目指しているようで。草の根的に集まって自分たちの理想の社会を作りだそうとしたり、シンクタンクで活動してよりよい社会政策を提言したり、さまざまな活動が行われているとのこと。主義主張的には多分に理想的な印象も受けるけど、実際の活動は現実的というか。本書執筆にあたって著者が選んだのがそういう人たちだったという傾向の話なのかもしないけれど、ラディカルに社会を変革させようとするよりも、自分たちの理想に向けて漸進的に改良していこうとするムーブメントのような印象を受ける部分もあり。数としては多くないのでそのくらいの活動が現実的なレベルな気もするけれど、その一方でよくも悪くも有力な人物も存在しているようなので、推定人口割合的にもアメリカ社会に対して小さくない影響力を持っているのかもしれない。

個人の自由を尊重する観点から、移民やLGBTQといったマイノリティーへの差別に反対するという考え方は納得のいくものだったけど、その延長というか、個々人の自由意思の集合体としての民意をも重視することから、国家や地域の一方的独立にも賛成する立場であるという一面には驚かされずにはいられない。まあ理屈としてはそうなるかと理解できないではないけれど、紹介されてる事例がだいたい南北問題の関わるものなので、その一面を無視しての同意は難しく感じられるところであり。

ともあれ、自由な発展を目指す思想というのは面白さを感じられるものではあり。その発展の先にどういった社会が見えてくるのかというのは興味深いところ。さらに理解を深めていきたい気にさせてくれる一冊でした。

あと、個人的におもしろかったのは、パトリ・フリードマンによるシーステッド構想が紹介されていたところ。ピーター・ティール関連の本ではそういった構想もあるらしいという程度には記述があったけどそれ以上の情報はなかったので、実際に計画が進展しているらしいと知ることができたのは、物語の続きが見られたような楽しさがあり。どうも、現地政府の協力を得ながら経済特区としての発展を目指す方向性っぽいので、「国家からの自由」とはまたすこし違った感じに進んでいるようにも思うけど、ひと月ほど前に別件でタイの国家ともめたシーステッドの事例を見かけただけに、堅実な一歩ではあるだろうか。
ラベル:渡辺靖 中公新書
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:24| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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