2019年04月06日

七姫物語 東和国秘抄 〜四季姫語り、言紡ぎの空〜

七姫物語 東和国秘抄 ~四季姫語り、言紡ぎの空~ (メディアワークス文庫)
七姫物語 東和国秘抄 ~四季姫語り、言紡ぎの空~ (メディアワークス文庫)

七姫物語 東和国秘抄 〜四季姫語り、言紡ぎの空〜 | メディアワークス文庫公式サイト

先王の隠し子として、群雄割拠する国の一勢力の姫君として担ぎ出された少女・カラスミ。偽りの出自のお姫様として彼女を見出だした悪い大人たちであるテン・フオウ将軍と軍師トエル・タウらとともに、にぎやかながらも穏やかな日々を過ごしていた彼女の七宮としての日常が、突如として戦乱の渦中へと巻き込まれていくとこになる出会いが鮮烈で、そこからの怒濤のような展開に一気に引き込まれた。

スロースターターながら、いったん話が動き出すとページをめくる手が止まらなくなる。そんなおもしろさの一冊だったように思います。

争い事とは無縁の日々を過ごしてきたカラスミの目を通して追体験するからこそ、後戻りのできない抗争の只中に立たされたことを、困惑や怒りや痛みや、はち切れそうなほどに膨れ上がる感情とともに理解することができる展開がすごくよかったです。争い事が起き、多くの血が流された。群雄が覇を競う情勢から、それはある程度予測される出来事ではあった。しかし作中で起こったことは、カラスミの手の届かないところで始まり、ひとまずの終息を迎えるまで彼女の出番はほとんどないままだった。どうして今回の争いは起きたのか。どのように戦いは推移したのか。あげられた成果は、流れた血に値する成果をもたらしたのか。それらはおおよそのところとして作中で語られてはいた。しかし、その距離感はカラスミからはどうしても遠い。まるで遠い国で起きた出来事のように。彼女を姫君として奉る人々は、自分のために戦に向かい血を流していったにも関わらず。

そのことを、カラスミの心情と重なるように、悔しいと思わされる。不甲斐ないと思わされる。本当の姫君であるならば、もっとよい行動が取れたはずなのにと思わされる。だからこそ、もっと多くのことを知りたいと思う。自分は自分を奉る人たちのためになにができるのか。仲間たちとともに、どんなことができるのか。そして、今回の争いを起こした張本人はなにを考えているのか。その人を止めることはできるのか。知りたいと思う。知るために成長していきたいと思わされる。これから先に起こる出来事にも立ち向かっていきたいと思わされる。強い感情の爪痕を残される。それが、どうしようもなく心地よく感じられる。そんな読書体験。読み終わったときには体の内にこもった熱を逃すように、はあーと、大きな吐息が漏れるような作品でした。

とてもいい一冊。期待の持てるファンタジーシリーズ。かつて電撃文庫で出ていた作品の新装版とのことですが、そちらは未読。次の巻も楽しみに待ちたいです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:03| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする