2019年03月27日

不可解なぼくのすべてを(1)

不可解なぼくのすべてを (1) (MeDu COMICS)
不可解なぼくのすべてを (1) (MeDu COMICS)

不可解なぼくのすべてを|COMIC MeDu (こみっくめづ)

表紙の絵がかわいいやったーと興味を持ったところ、なんと作者さんが昔読んでた『B.A.D.』のイラスト描いてたkonaさん(@kt_konyam)じゃないですかということで、これは読まないわけにはいかないてしょうとなった作品。

読んでみるとこれがかなり面白い。表紙のキャラ、この子がメインのヒロイン(?)なんですけど、ぱっと見で男の娘かなと思うとそんなことはなく。読みはじめてわりとすぐにジェンダーがテーマの話だとわかるので、トランスジェンダー的な感じのキャラなのかと思うとそれも違う。この子はいったいどういうキャラなんだろうかと、わかってようなわからないようなまま収録されてる話を読み終えた感がありましたが、あとがきまで読んでようやくわかりました。この子、Xジェンダーなんですね。

Xジェンダー、それは体の性別は存在していながらも、心の性別でもある性自認において、自分を体の性別と同一だと思えず、かといってもう一方の性別であるとも思えない人を指す言葉。平たくいえば、自分を男とも女とも思えない人のことでしょうか。

そうとわかるとすとんと理解できるものもあるんですが、たがらといってそれですべてを理解したつもりになってはいけないし、なによりそれ自体は本作の魅力のほんの一部にすぎないのが、この作品の面白いところ。

作中に登場するキャラクターたち、これが表紙の子以外も特筆すべき特徴を持った子たちばかりで。彼らは主人公の兄が店長を務める男の娘カフェで働いているんだけど、ジェンダーをテーマにしてる話なだけあって、そのそれぞれに男の娘としてふるまう背景があるんですよね。トランスジェンダーの人がいたり、ゲイ(バイセクシャルの可能性も否定できない?)の人がいたり、女性化願望めいたものを持ち合わせている人もいる。LGBTという枠ではすべてをくくれなくとも、ここに登場するキャラのほとんどはなんらかのマイノリティーにあたるように思うんですよね(もしかしたらQueerに該当するのかもしれないけど、これについては知識がないのでわかりません)。

なので、カフェで男の娘になる理由としても、単にかわいい格好が好きな人もいれば、より自分らしい姿になれる場を求める人もいるし、表に出せず抑圧された気持ちをすこしでも満たせる場としている人もいる。

けれど、そんな理屈は背景程度に理解した上で、なによりやっぱり男の娘たちのかわいさがとてもいい作品なんですよ。見た目は男の娘なキャラばかりだし、そんなキャラクター同士で恋バナしたり、女の子の服をああだこうだしながらわいわい会話してるのは見ててとてもかわいらしいことで。そしてなにより、より自然体な自分を出せる場ならではの彼ら/彼女たちの表情は、とてもキラキラして見えるんですよね。

「ぼくの性別を、おまえらが勝手に決めるな!」とは、表紙の子であるメインヒロイン(?)もぐものセリフではありますが、もぐもに限らず彼ら/彼女たちは世間から偏見の目を向けられることをおそれて、そんな自分を隠すようにして生きることにフラストレーションを抱えているのであって。それに対して作中のカフェで働く姿はより自分らしいと思える姿なんですよね。押しつけられるこうあるべきという姿ではなく、自分がより自分らしくあれる姿。それを望むのは決しておかしなことではなくて、誰もが持ちうる普遍的な気持ちであって。だからこそ、おおっぴらにより自分らしくあれるこのカフェに集まる皆の表情って、輝いて見えるんですよね。

個人的には特にめいちゃんが、自分らしさの扉の先を見つめて、おずおずうきうきしてる姿が最高にかわいいと思いますね。のろけてるときの鈴も、幸せいっぱい感があふれててかわいいことかわいいこと。自分を抑制しがちな子たちが心の底から楽しんでる表情を見れるのって、すごくいいですよね。

とはいえ、それぞれの子たちにとって、男の娘カフェというのは必ずしもベストな回答ではないというのもポイントでしょうか。特にもぐもにとっては、男であるけど女っぽくもある男の娘というのは、自分のことを男とも女とも思えず、どちらに所属しているとされることにも違和感を覚えずにはいられない性質であるだけに、そこが安心できる居場所となるにはもういくつかのステップが必要かなあというところ。その意味で、カフェが男の娘カフェという枠は維持しつつも、それぞれのらしさを理解し尊重する職場に変わっていってる様子なのはいい感じに思えますね。あたたかい空気が感じられて。ときどきギスギスしたりするのは、まあ必要な段階ということで?

ともあれ、男の子・女の子という枠組みを揺さぶって、そんなことよりとにかくかわいいと思わせてくれるキャラクターたちの話で、そのついでにジェンダー的なものについても感じとれる作品でした。すごくいいと思います。いろんな人に読んでもらいたい。次の巻も楽しみにしたいです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 15:59| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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