2019年02月22日

魔術師ペンリック

魔術師ペンリック (創元推理文庫)
魔術師ペンリック (創元推理文庫)

魔術師ペンリック - ロイス・マクマスター・ビジョルド/鍛治靖子 訳|東京創元社

マイベスト級にお気に入りの五神教シリーズに新作が出たということで。本国での出版情報を目にしたときから待ちわびていた邦訳版。去年のヒューゴー賞でシリーズ部門を受賞するというめでたいできごともありましたっけ。一応、発売直後に入手はしていたものの、ようやく読むことができました。

ひょんなことから口うるさい姉のような魔に取り憑かれたペンリック君の、いろんな意味でドキドキ魔術師人生開幕の一話目が特におもしろかったですね。予定されていた結婚は破談になったり地方貴族の末男から庶子神神殿の神官へと生き方の変化を迫られたりと失われていったものもあるけれど、遠い世界への憧れが叶えられたり新しく手に入れた力に新鮮な喜びに包まれたりと、新生活のワクワク感が楽しい話でしたね。

そして、魔を宿した者として、一方的で絶対的なまでの力を有する神と対峙する瞬間の、臓腑をぎゅっと鷲掴みにされるような感覚も。もっといろいろな過程を経てからの神判だとなおよかったかとは思いますが、この世界の神の存在感はやはりいいものだと感じさせてくれるものがありました。

今回登場した神は庶子神だったでしょうか。以前にも登場してるかどうかは記憶が定かではないんですが、ともあれそういった神や魔や、その後の話で巫師などのシリーズ共通の要素が登場しつつも、この連作中編としてはあくまで共通の世界のお話であるという程度に思っておいたほうがいいのかもしれません。

一話目よりも二話目、二話目よりも三話目でより顕著になっていたように思うのですが、五柱の神の恩寵で生かされる世界の人々の物語としてのファンタジー的な成分よりも、そういう世界で起こる事件を解決するミステリー的な成分が強くなっていったように思うので。まあこれはこれで、前三作で描かれてきた世界観があってこそ書ける話だと思います。

そしてそんな世界で、魔術師として庶子神教団の神官となったペンリックが、経験を重ねて魔とともにある世界の事件を解決していく様子は、当初を思えば頼もしいほどの成長ぶりがあって。すっかり馴染みのパートナーとなった魔であるデズモーナとの息の合ったやりとりもおもしろく、五柱の神によって好むと好まざるとにかかわらず運命を背負わされる感の強かったこの世界の魔術師に、こんな穏やかでほほ笑ましい道行きもありえたんだと、なんだか感慨深い気持ちになってくるものもありました。

訳者あとがきによれば、ペンリックの登場する物語はまだあと三話あるようで。そこではまたどんな姿を見せてくれるのかと、楽しみになってきますね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:37| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。