2018年05月15日

弱キャラ友崎くん(1)

弱キャラ友崎くん Lv.1 (ガガガ文庫)
弱キャラ友崎くん Lv.1 (ガガガ文庫)

小学館::ガガガ文庫:既刊情報
弱キャラ友崎くん Lv.1 | 小学館

なにこれめちゃくちゃ面白いじゃん。

なにを隠そう、1巻発売時に試し読みで切った記憶がはっきりとあります。序章が、こう……スクールカーストものをよく出してたイメージのある一時期のガガガ文庫とか講談社BOXあたりの作品を思い起こさせるところがあったというか。ああいうのを苦手にしてた自分にとって、この序章はそれだけで回れ右させるのに十分なものがあったんですよね。けど、いつのまにかだんだんと人気が出てきて、気づけばガガガ文庫の次期主力級の人気になってるっぽいのを目にするにつけ、しだいに気になってくるものがありまして。そうしてものは試しにと読んでみた結果が冒頭の感想でございます。いやー、これは、自分の直感もまだまだだなと思わされるところ。こんな面白い作品を見切っていたとは。反省しきり。

というところで、今年になってから読んだ中で思い返してみるとわりとベスト級だったのではとも思える本作。内容としてはやっぱりスクールカーストものではありまして。ただ、そのジャンルの中ではやや変則的な印象を受けるというか、スクールカーストの存在は前提にしながらも、それをネタにして、それを土台にすえつつ、カースト底辺のゲーマーがまさにゲームのごとくそれを攻略していくことになる話。平たくいってしまえば、スクールカーストものにビジネス書的なノウハウ論をくわえた学生生活攻略指南小説とでもなるでしょうか。

これがくりかえしますけどめちゃくちゃ面白かったんですよね。リアルでスクールカースト底辺の陰気なキャラになるにはそれなりの理由があって、どこがダメで、それをどう直していくべきかが具体的に描かれてて、ちょっとした失敗を重ねながらも、すこしずつ成果があがっていき、底辺のままでは縁のなかっただろうクラスメイトたちとの思いがけない交流が生まれるようになっていく。振り返ってみればわりととんとん拍子ではあるんですけど、そこがまたよくって、読んでる人に成功にいたる明るいビジョンを示してくれるのがうまいんですよね。やればできるんだと思わせてくれるというか。

でも、読んでる最中にはとんとん拍子でうまくいってるとは思わせなくて。それどころか、失敗しながらでも挑戦すればするほど効果が出る感じというか、まさに経験値を積んでレベルを上げていく感じがとても楽しいんですよね。これがゲーマーから見た人生の進め方なのかと、また別の種族である本読みとしては目からうろこが落ちるような世界観の提示に目を見張らされるものがあって。最初はちょっとした用事を作って声をかけるにもうじうじ考えてしりごみしそうになりながらやっとのことだったのが、そのうち身構えることなく会話ができるようになっていき、後半には二人きりでのイベントなんかが生じる相手もできてくる。やった分だけ着実に成果が出てるのが目に見えてわかるこの感じ、ダイレクトに手ごたえのつかめる挑戦をしている感じがとても楽しいんですよね。

しかも、階層上昇のお供にはとびきりの美少女つきとくるんですよ。(ライトノベルの体裁としては)最高ですよね。まあお供というか、師匠というか、コーチというか、そんな感じですけど。ともあれ、本来はスクールカースト底辺であるはずの主人公がそんな挑戦できわめて効率的に成果をあげられている理由としては、同じメソッドの先達として役割づけられている彼女の指導とフォローの存在が大きくて。メンターなしでまねするのはやや危険がつきまとうのではという気もするのですが、それはさておき、カーストのトップ層に位置する彼女のバックアップがあるからこそ、同じく上層に位置する人たち(かわいい子もたくさんいる(ここ大事))とも風当たりなくお近づきになれるし、挑戦して失敗してもトラウマ級の傷を抱えることなく円く収めてくれるしで、めちゃくちゃ頼りになること。

そしてなにより、メンターであるところのその日南さん、とてもかっこいいんですよね。勉強も運動もできる完璧な美少女として認識されていても、普段の言動はクール系とまではいかずに愛嬌のある美少女で、どちらかというとかわいいという形容詞が似合いそうなキャラであって。でも、ちょっとした経緯で師弟関係っぽくなった主人公にだけ見せる同じ「ゲーマー」としての彼女の姿は、尊敬の念すら覚えるほどのトッププレイヤーぶりであって。これはもう本当に仰ぎ見たくなるレベルであって。だからこそ、主人公が目標に据えるのにもわかるものがあるというか。ラストのふたりのやりとりは、なんというかもう、主人公ならずとも高揚感に襲われるものがありますよね。1巻でここなら、2巻では、さらにその先では……と、期待させてくれるシリーズですね。次の巻を読むのも楽しみです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:51| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

とりかえ・ばや(4)

とりかえ・ばや(4) (フラワーコミックスα)
とりかえ・ばや(4) (フラワーコミックスα)

とりかえ・ばや 4 | さいとうちほ | 【試し読みあり】 – 小学館コミック
とりかえ・ばや 4 | 小学館

ちょっと石蕗さんすごすぎませんかね……。まだ確定ではないですけど、もし本当ならこれはもうおそるべしですよ。

ただ、そうして後戻りのきかない事態への発展においてはとんでもなさを見せつけてくれる石蕗さんだけど、手が早いという印象では特にないところがあって。本当に好きになった人としかそういう関係になってはいないように感じるんですよね。沙羅とのやりとりはどこまでも焦がれるような想いに満ちた愛情の発露ですし、四の姫とのやりとりを見てても気持ちが通じ合っているところは十分にうかがえる。喜怒哀楽の感情が激しいからこそ見ていておもしろい人ではあるし、他人の感情への共感力も高いからその場その場で見れば好ましい人物に思えてしまうこともあるのはわからなくないというか。けど問題は、その情熱の対象がひとりには限られないということですよね。あちらへの恋情も本物。こちらへの感情も本物というわけで。そして心を通わせることと体を重ねることがわりと境目なくつながっていくタイプなものだから、結果として沙羅があてこするような人物像ができあがるというもので。まあそうはいっても、ラストの展開はすごすぎですけど。

これいったいどうなっちゃうんでしょうね。ものすごく気になってきましたよ。めちゃくちゃ下世話な興味心ですけど。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:31| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月09日

アリスマ王の愛した魔物

アリスマ王の愛した魔物 (ハヤカワ文庫JA)
アリスマ王の愛した魔物 (ハヤカワ文庫JA)

アリスマ王の愛した魔物 | 種類,ハヤカワ文庫JA | ハヤカワ・オンライン

傑作。表題作「アリスマ王の愛した魔物」は東京創元社から出ている年刊SF傑作選にて既読の作品で、いまあらためて読んでもやっぱりとんでもない。そのほかの話は、「アリスマ王〜」に比べればSF色が強めの話が多いけれど、人と人、人と物、物と物が心を通わせあう交流を描いた話がやさしくも心に訴えかけてくるものばかりで。ベテラン作家の確かな手腕を感じさせてくれる一冊でした。

以下、各話感想。


「ろーどそうるず」

バイクの統合制御ユニットと、そこから送られてくるリポートを受信する担当ユニットとのやりとりという、人が登場せず物と物の話をいちばん最初に持ってくるこの飛ばしよう、嫌いじゃないです。人ではないにもかかわらず人間らしい思考をする彼らがどこかおかしく、けれど読み進めていくうちにだんだんと感情移入させられて、統合制御ユニットに待ち受ける苦難についつい読み入らされてしまう。うまいですよね。ラストが希望を持たせてくれる終わりかたで、これひとつでもある程度の満足感を得られてしまうくらいで。短編小説のよさですね。


「ゴールデンブレッド」

「タタミ・マット」なんていう、サイバーパンクな世界をイメージしてしまいそうな出だしからはじまって、けれど話としては、農村っぽい和風異星界に不時着した欧米風主人公が、その星から旅立っていこうとして果たせないでいるうちにそこの人たちと交流を深めていくという、人と人との文化の話。というか、これは姉さん女房との馴れ初め話ですかね。けんかっぽいやりとりをくりかえしながらも、なんだかんだでお互いのことを受け入れていく。ええ話やね……(しみじみ)。知識はともかく食の好みはそうそう短期間では変わらないだろうから、苦労しそうだけど。


「アリスマ王の愛した魔物」

森羅万象ありとあらゆる数を数えあげる性癖を有した小国の末王子が、戦乱の中から途方もない犠牲の上に覇業を築きあげる、ひとりの人の話。あるいは、異常な執着を持つ人と、その望みを叶える術を知る魔物の話。人を人と思わぬ人の話。くりかえしになりますが、傑作。幼いころから物事の数を数えることに取り憑かれてきた王子が、その数字を駆使し、数字と数字を組み合わせ、数字と数字を掛け合わせることで頭角を現していく物語。ファンタジー風の外見のなか、骨子にあるのは数学で、物語世界中では異常な領域にまで到達した数学力によって、ありとあらゆる可能性の中からあり得べからざる結果を引き出していく覇業ぶりができすぎなくらいに爽快で。けれどその過程において多大な犠牲ももたらされるんだけど、そんなことには無頓着に、ただただ数字を数えあげ、数字から数字を導き出し、数字をもとに覇道を突き進むことしか眼中にない王子(とその従者)がめちゃくちゃクールに狂ってて。敵も味方も情け容赦なく死屍累々にして、その上に築かれる国家の盛衰はすさまじく、凄絶の一語に尽きる。読んでてにやにやと気持ちの悪い笑みが収まらなかったことといったら。己の欲求に従い楽しみを追うがまま地獄のような覇業を成し遂げる王子、決定的な知識をもたらして王子をそそのかした魔物のような従者の物語、最高に面白かったです。読後呆然とした虚脱感に襲われてしまうようなすさまじい話。けれどきわめつけは、これだけとんでもない話を描いておきながら、ページ数としてはこの本のうちの40ページくらいの分量でしかないということで。こんな話を読まされたら、短編小説というものに魅了されずにはおられませんわ。文章の語り口としては、語り手が聞き手に昔ばなしとして語って聞かせるという体であって。ところどころに下卑た冗談が混じったりして、そのせいで話自体も猥雑とした印象になってしまうんだけど、そうであるからこそ荒唐無稽なまでのアリスマ王の覇業のすさまじさがいやまして感じられるところがあって。もうなにからなにまで、とんでもない一作でした。


「星のみなとのオペレーター」

小惑星の宇宙港で管制官を務める人と、彼女になついた謎の生き物と、ときどき彼女の気になる人の話。主人公の女性が彼らと交流を深め、お近づきになったりなられたりする話。読みながら「ウニと和解せよ」なんてフレーズが思い浮かんだり……というのはともかく、居住圏の拡大を求める地球外生命体とのコンタクトがあったりして、読みかけの同作者の別作品を思い浮かべたりもしましたが、こちらはどこまでもほのぼのとした雰囲気の話で。いくつかの話が最後の展開につながっていくつくりでありながら、それでいてこれも100ページなくすらすら読めてしまうというのが、やはり短編小説のおもしろさであり。


「リグ・ライト――機械が愛する権利について」

亡くなった祖父の遺産として自動車を相続した女性と、その車に必須の付属物として付随してきた女性型AIの話。あるいはタイトルにあるとおりの話。収録話中では最長で、100ページをわずかに超える長さ。とはいえこれもすらすらと読ませてくれるものがある話で。というか、主人公が同じ職場の女性と付き合ってる女の人という百合設定のおかげで、ふたりの関係と、そこにいわく主人公の好みのタイプな外見の女性型AIがくわわって、どんな関係模様になっていくんでしょうねとか、いろいろ気になってどんどんページをめくっていってしまうという、とてもわかりやすい百合好き読者の図と化していたという。とはいえ、話としてはもっとSF寄りな部分に焦点が当たるもので。機械が心を持つということ、機械が誰かを愛するということについて、現実世界以上の技術水準ではありながらそれでもなお発展途上の子どものようなAIを通して、それがどんな感じのことなのか、雰囲気をうかがわせてくれる話でありまして。この辺、もう少し詳しく描いた話も読んでみたいかなーと思わせてくれるものがあり。地味に関係が進んでるシキミと朔夜のふたりのやりとりももっと見ていたい気分にさせられるものがありましたし、長編化もぜひどうでしょうか。


という感じで、「アリスマ王〜」がとにかくすごくて、この話ひとつのためだけにもオススメしたいくらいですが、ほかにもしっかりまとまっておもしろい話がいくつもある短編賞作品集なので、気になる人には全部ひっくるめてぜひぜひと勧めてみたいところです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 23:24| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月02日

境域のアルスマグナ 緋の龍王と恋する蛇女神

境域のアルスマグナ 緋の龍王と恋する蛇女神 (MF文庫J)
境域のアルスマグナ 緋の龍王と恋する蛇女神 (MF文庫J)

境域のアルスマグナ 緋の龍王と恋する蛇女神 | 境域のアルスマグナ | 書籍 | MF文庫J オフィシャルウェブサイト
境域のアルスマグナ 緋の龍王と恋する蛇女神 - パルプピロシ/絵戸太郎(MF文庫J):電子書籍ストア - BOOK☆WALKER -

小さなころから懐いてくれてた妖魔の蛇が、契約主である主人公の命の危機に際して半人半蛇の姿を得て、主人公LOVEの暴走ぎみな妖魔妻として愛を叫びまくる話。ではなく、おじさまLOVEな養父一家の双子の問題児妹たちにからかわれふりまわされたり、かつての幼なじみと再会したりして、かわいい女の子たちに囲まれてどたばたとした交流を深めていく話。でもなく、亡き両親から受け継いだ力によって、情け容赦のない切った張ったの闘争社会に巻き込まれていく話。でもなく、その辺を全部まぜこぜにして勢いのままに読ませてくれる、近未来異能アクション。

最近あんまり読んでなかったタイプの話ですけど、異能バトルはやっぱりこういうゴテゴテとした設定がバンバン出てくるのがいいですね。ワクワクしてきます。たしか3巻まで出ているということで、次の巻を読むのも楽しみにしたいですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 18:43| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする