2017年09月25日

りゅうおうのおしごと!(2)

りゅうおうのおしごと!2 (GA文庫) -
りゅうおうのおしごと!2 (GA文庫) -
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負けることは自分の弱さを突きつけられること。明らかに格上と思っている相手ならば、負けてもしかたないと思うことはできる。けれど実力や年齢などの面で同格や格下と思っていた相手に負けることには言い訳のきかない苦さがある。相手が思っていたより強かった。それもあるかもしれない。でもそれ以上に、自分が弱かったという事実に直面させられる。実力がすべての勝負の世界で、彼我の優劣をはっきりと突きつけられる。これほど残酷な事実はない。しかも敗因に自身の未熟を明確に見てとれてしまえたら。これほど悔しいことはない。悔しくて、情けなくて、涙がこみ上げてきてしまう。

負けるということについて、勝負事の世界に生きる人の心情が真正面から描かれてたでしょうか。主人公の八一からしてみれば、弟子であるあいは究極的には他人ではあるんですけど、行く末楽しみな才能を秘めた弟子ということもあって、本当の家族のように、目に入れても痛くないくらいにべったり可愛がってた弟子の負ける姿というのは、自分のことのように悔しくなってくるものがあって。よくがんばった、惜しかったと、なぐさめてあげたい気持ちにもさせられる。

でも、作中の人物は誰もなぐさめの言葉なんかかけたりしない。あいが弱かったのだと、未熟だったのだと、その事実に正面から向き合わせる。それは目指すべきプロの棋士の世界が勝ち負けがすべての世界だから。負けて、負けて、何度も負けて、それでもめげずに強くなっていけた者だけが上にいける世界だから。そういう意味で、この作品の世界には厳しさがある。

けれど、そんな一時の気休めを、あい自身が望んでいなかった。負けて悔しい。自分の未熟さが悔しい。だから、もっと強くなりたい。自分には何が足りないのかを知りたい。彼女には、ただただ将棋に対する情熱があった。敗北をばねにして立ち上がる強さがあった。

だからこそ、期待してしまうんですよね。愛衣というライバルを得た彼女が、この先どこまでの飛躍を見せてくれるのか。また、あい以上に八一との縁の深い愛衣が、あいとは対照的な棋風の愛衣が持つ可能性についても。

才能ある弟子というのはやはり見ていて期待の膨らむものですね。いやあ白熱した名勝負を見せてもらいました。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 18:20| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月24日

「このライトノベルがすごい!2018」アンケート回答完了

毎年恒例の宝島社による投票企画。自分も1,2時間ほど前に回答を済ませてきました。「好きなライトノベルを投票しよう!!」とは違って、ブログに投票用エントリを残すタイプの投票企画でもないので、もはやいつぶりの投票なのか自分でもわかりませんが、好きラノのときともども、こういう企画に参加できるというのは、それだけで楽しいものがあります。

以下、送信した回答の内容と一部追記。公開する必要はまったくないのですが、ランキングにかすりそうなものがあまりないように思うため、自分の好きな作品を推す機会はきっちり活かすべく、ここに残します。

■文庫部門

1位:左遷も悪くない / 霧島まるは(アルファライト文庫)  2巻感想3巻感想4巻感想
結婚生活を通して生まれ育った家の文化が混ざりあい、新たな一家の雰囲気が生まれていく、あたたかく力強い家族の物語。

2位:お嬢様と執事見習いの尋常ならざる関係 / 梨沙(一迅社文庫アイリス)  感想
ラストの一文まで、文句なしな両片想いの主従譚。  ←某新人賞作品のキャッチコピーのパクリですが……。なかなか汎用性が高いと思います。

3位:なんちゃってシンデレラ / 汐邑雛(ビーズログ文庫)  1巻感想2巻感想3巻感想
アルティリエの変化が周囲の人々をも変えていく、異世界に浸透していく奇跡のような転生(憑依)譚。

4位:恋する救命救急医 / 春原いずみ(X文庫ホワイトハート)  2巻感想
しんどい仕事のしんどさと、心許せる人との交流と、どちらもあってのお仕事ものの面白さ。

5位:裏世界ピクニック / 宮澤伊織(ハヤカワ文庫JA)  感想
コミュ障ぼっちオタクな女の子によるガール・ミーツ・ガールな怪談系百合SF。

■単行本部門

1位:本好きの下剋上 / 香月美夜(TOブックス)  第三部1巻感想第三部2巻感想第三部4巻感想
立場が変わるたびに広がる世界、増える責任、けれどどこまでも相変わらずなマインの暴走・自爆ぶりにほっこりさせられる。

2位:女王様、狂犬騎士団を用意しましたので死ぬ気で躾をお願いします / 帰初心(エンターブレイン)  1巻感想
残念美形な犬人たちの言動に羞恥に染まる表情を隠せないリーゼロッテ(飼い主)の明日はどっちだ!?なドタバタコメディ。
2巻は残念ながら未読。

3位:あなたに捧げる赤い薔薇 / jupiter(アイリスNEO)  感想
自分ひとりの幸せよりも相手のこと、相手の世間体のことを考えずにはいられない。盲目ではいられない貴族の恋のこじれ模様。

4位:自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。 / しき(レジーナブックス)  1巻感想
婚約者の少女のポンコツな言動をほほえましくながめる面白さ。
2巻は未読。

5位:転生の神王妃 / 夢乃咲実(ビーボーイノベルズ)
チベット辺りにモデルを取ったという婚姻形態が面白い世界観。

期間内のライトノベルの読了数は167冊でした。ひと月あたりにすると14冊くらい。

■女性キャラクター部門

1位:ティアナローゼ / いじわる令嬢のゆゆしき事情
虚勢の仮面をかぶったツンデレにして主人公にとっての負けられない恋のライバルでもあり。王女でありながら年頃の少女でもある姿はとてもとてもかわいい。

2位:紙越空魚 / 裏世界ピクニック
相棒にだだっ子めいた感情を発露する姿がとてもかわいいコミュ障ぼっちオタク。

3位:ローゼマイン / 本好きの下剋上
どんな立場になっても忘れない飽くなき本への欲求と、どこかしらでやらかす暴走・自爆ぶりにほっこりさせられる。

■男性キャラクター部門

なし。 女性キャラクター目当てでばかり読んでいるとこうなるの図。

■イラストレーター部門

1位:成瀬あけの
いじわる令嬢のゆゆしき事情 灰かぶり姫の初恋 (角川ビーンズ文庫) - いじわる令嬢のゆゆしき事情 眠り姫の婚約 (角川ビーンズ文庫) -

2位:アオイ冬子
狂王の情愛 (ソーニャ文庫) - 愛しき花嫁に運命の花束を (ハニー文庫) -

3位:由利子
後宮陶華伝 首斬り台の花嫁は謎秘めし器を愛す (コバルト文庫) - 後宮幻華伝 奇奇怪怪なる花嫁は謎めく機巧を踊らす (コバルト文庫) - 後宮樂華伝 血染めの花嫁は妙なる謎を奏でる (コバルト文庫) -
モノクロでも鮮やかな色彩が目に浮かぶような中華風な世界観の衣装がいいですね。

イラストの好みは自分のなかでほとんど言語化されてないため、あまりコメントつけられませんでした。無念。


以上。コメントがやや長めなのは仕様です。簡潔な説明はどうも苦手で……。

レギュレーションについては作品部門が文庫本部門と単行本部門にわかれたこと以外で特に大きな変更点はないかと思いますが、それとは別に、投票先を決めるに際して個人的な縛りを入れてあります。「キャラクター部門およびイラストレーター部門も作品部門と同じ対象期間内から選ぶこと」「対象期間に刊行された巻を読んでいる作品の中から選ぶこと」。このふたつ。

それ以外の部分では特に制限を設けず選んだつもりです。「自分がライトノベルだと思う範囲すべての中から選ぶ」「集計対象外と明言されていようがいいと思う作品があれば選ぶ」といったところを意識しながら。とはいえ後者のほうは、特にこれだというものがなかったので、そのつもりだったと書かなければ読み取れないとは思いますが。

今年の上半期とその前後1か月くらいをのぞいて、読書に集中できていたとは言いがたい一年だったこともあり、今回の投票作品の決定はかなりの部分で個人的な上半期のベストがたたき台になってます。ここ一年で読んだ作品の自分のなかでの好みというと、あの時点からそれほど大きな違いはありません。ですが、あらためてレギュレーションを読んでいるうちに、「ここでは、あなたが“今最も旬で”“今最も面白く”“今最もすごい!”という作品をお訊きしたいと思います」という一文が目に入ってきまして。これを見ているうちに、ただ単に自分の好きな作品を書いて送るのは違うかなと思えてきたというしだい。なので、今回送った回答は、自分なりにその設問にふさわしいと思われる内容を考えたつもりです。どの程度それに応えられているかはわかりませんが。

ともあれ、個人的にはコメントが公開できたのですでに満足してる感もありますが、なにせよ結果発表を楽しみにしたいと思います。


最後に、投票のルールについて気になったこととして、文庫部門と単行本部門がそれぞれ5作品分の枠を埋めることが必須なのかそうでないのかが不明だったことを。例年通りなら必須ではなかったはずと記憶してるんですが、Twitterで編集部公式アカウントが必須だと思っている人の発言をRTしてなんの訂正も行っていないのを見るとその認識を肯定しているとも読めるわけで。必須の条件を満たさない回答はどうなってしまうのかと考えていくと、とにもかくにも5作ずつ記入しておくのが無難かという考えに落ち着いてしまって……。同じ思考に陥った人がどの程度いたかはわかりませんが、枠が足りないというほどにたくさん読んでる人はともかく、枠が余ると感じる人がとにかく手当たりしだいに書いていくことにつながりかねないのではないかと思うしだい。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 23:58| Comment(0) | 読書まとめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする