2017年02月26日

本好きの下剋上 〜司書になるためには手段を選んでいられません〜(2)神殿の巫女見習い(3)

本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第二部「神殿の巫女見習いIII」 -
本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第二部「神殿の巫女見習いIII」 -

やばい。すごく面白くなってきてる。神殿で巫女見習いとして働きはじめたことで、いち兵士の娘であったころよりも着実に見える世界が広がって、確実に面白さが増してきてる。いいなあ、このシリーズ。

階級・職業の違う人たちの世界をのぞけばそこには確かな違いのある別個の世界が広がっている。細かいところでそんな情景を感じさせてくれる描写がたまらないんですよ。今回でいうなれば、前回からひきつづいての貴族社会と、改めて見直した平民階級について。

まずいきなりテンションを上げてくれたのが、前の巻でのマインと貴族の子弟との間で起きた揉め事の解決法。あれから少し時間が経って、改めてこんな感じで処分が下ることになったと伝えられるかと思えばもうすでに執行済みの事後報告がされるだけという。しかもその内容が主犯の処刑という想像以上に重いものだったから、ぞっとさせられること。マイン視点で物語を読んでいると、てっきりマインに不快な思いをさせた償いとして処分を下すのかと思っていたんですけど、これもう完全に貴族の面汚しに対するみせしめの意味のこもった刑罰になってるじゃないですか! 人ひとりの命がこうもあっさり飛ぶのかと。しかも、一方の当事者であるマインには処分の妥当性の確認なんてなにもなく、後になってただ処刑されたとだけ知らされる。貴族こええ……。どのレベルの人々によって処分が検討されたかはわかりませんけど、奪うは一瞬とばかりの権力のすさまじさを感じさせてくれることで。

それと、貴族の中でも相当な魔力保有量であると知れたマインの身を狙ってうろつきだしたあやしい影についても。神官長やひきつづきベンノさんたちが慎重すぎるくらいに周囲に気をつけていることもあって、今のところ大きな危険には遭遇していないのだけど、その一方で失敗した下手人や神官長たちにマークされた人物が次々と不審死を遂げていくこの不気味さ。どう考えても口封じされてるんですけど、その死に方もどうも拷問や尋問をきらっての自死というより上層部や依頼元から見切りをつけられての処分なのではないかと思えるむごたらしいものが散見されて。ここでも人の命があっさりと……。なんでしょうね、この世界の貴族階級の人たちは、人間なんてそこら辺から生えてくるとでも思ってるんでしょうかね。替えなんていくらでも利くとでも。なんというか、本当に命が軽い気がしますね。いち兵士の娘時代は想像もつかなかった世界ですけど、ファンタジーな世界としては個人的にとてもいい感じだなあとも思ったり。

そんな感じで、マインの接する相手が貴族階級や裕福な商人たちとの関係が中心になってきたことで、改めてマインの実家の周りの裕福ではない平民階級の人たちの暮らしぶりを見つめ直して気づくこととしては、ああ、やっぱり現代人からすれば極端に不衛生な環境なのねといういまさらのような気づき。思い返せばマインになってすぐ、体が弱いにもかかわらず家の掃除をしまくったり、料理をするときはしっかり手を洗うことを徹底したりしてましたっけ。でも、転生ものではわりと定番的な部分でもありますし、そうはいっても無視できるレベルだと思ってたんですけどね。でもそれもマインのお母さんの出産場面でここまでしっかり描写されてしまうと、脳内で描く情景としてもごまかせなくなってきますわ。第二部になって急に現れてきたように感じていた理想化されてないファンタジー世界としての景色って、貴族階級がかかわってくる部分だけでなく、平民階級まで含めて実はそうだったんですね。前の巻で感じていた断層は、これで徐々に埋められていくことになるかと。ただそうすると、今度は難点として浮かび上がってくるのが、これまでの誤解の一因にもなってきたと思うところなんですけど、イラストの絵って、それにしてはきれいすぎるんじゃないでしょうかというところ。イラストはイラストで華やかでいいんですけど。どちらに合わせるのがいいのかという点は悩ましいですね。

あと、それに関してわりと真顔になってしまうのが、不衛生な環境を当然のものとして暮らすご近所さんを、マインがどうも嫌悪あるいは忌避しているらしいということ。出産の場面とか読んでても、現代人からすれば卒倒しかねない衛生観念の欠如ぶりではありましたけど、父母や姉は当然のようにこなしている近所づきあいを、マインはほとんどする気が見られない。これは、もともと病弱であることからくる自衛の一面もあるのかなと思いますが、それ以上に、やっぱり現代知識のあるマインとそうでない人たちでは考えに違いがありすぎて正面から接したらあらゆることで衝突が起きてしまうという一面もあるのではないかと思ったり。気ごころ許したルッツ相手にならどんな話もできるけど、その家族相手にでさえ、あんまり理解されてないままそういう性格だからで押し通してた節がありますから。常識的な知識の差はなかなか埋めづらいからしかたない部分もありますよねというところ。ただ、現代人の目から見て科学的に正しいのはマインの方になるんですけど、周囲の風習に対する嫌悪感や、むりやりにでも追い出されなければ自分の知識・やり方こそが正しいとひき下がらななかっただろう態度を見るにつれ、それらの風習を劣ったり誤ったりするとんでもないものと思ってるのがうかがえてしまうんですよね。事実としてそういうところもあるんですが、そんな意識を抱きながらの関係って、それはそれで健全・良好とはいいがたいというか。もう何歩か進むと差別感情と呼べるものになるのではないかなーとも思えたり。この辺は、貴族と平民と階級差によるものではなく、知識・教養の差からくる感情とでもいえましょうか。そういえば、マインが神官になりたいと言ったとき、マインの父親が急に怒りだしたことがありましたっけ。あれも、孤児は憐れみの視線を向けられる存在という感覚がうかがえたようにも思えたり。貴族は平民をさげすんで、平民は貴族をお貴族様と揶揄してみせて。けれど同じ平民同士の中にも職業や経済状況などで見下すような目線が存在しているということなのだろうかという。なんというか、どこの層も愉快じゃない部分があるんですねというか。でも、その世界に人々が息づいているというのは、案外こういうことなのではと思うところもあって。読んでいてとても素晴らしいファンタジー世界だと感じますね。

まあ、そうはいってもマインのまわりでは彼女の性格もあいまって結構コミカルにやわらいだ雰囲気になってる印象があるんですが。そして物語がマイン視点で進む以上、ある程度からは想像で好き勝手補ってるところでもあるんですが。

それでも、個人的な心地のよさやテンションの高揚を感じさせてくれる数々の場面を有した、理想化されていないこの異世界。そんな雰囲気を十分に感じさせてくれるこの第二部。世界が広がるにつれてこれまで見えてなかった部分も見えるようになってきて、ますます楽しみが広がってきている感覚があります。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月25日

女王様、狂犬騎士団を用意しましたので死ぬ気で躾をお願いします

女王様、狂犬騎士団を用意しましたので死ぬ気で躾をお願いします -
女王様、狂犬騎士団を用意しましたので死ぬ気で躾をお願いします -

これは面白かった。犬人たちの国の王族の生き残りとして見出された少女リーゼロッテが彼らの女王になる話なんだけど、犬人たちのノンストップな残念ぶりに最初から最後まで笑わせまくってくれるとても楽しいコメディ。

犬人というのは、犬と人の姿を自由に変異可能な種族であるそうで。人としての外見はどこに出しても恥ずかしくない美形ばかりで、主人公はそんなキャラクターたちに囲まれる少女となれば、読む前は恋の予感がしたりもしてたんですが、開始数ページでみごとにそんな期待を打ち砕いてくれるからやってくれるというか。なにせこの犬人たちときたら、人の姿をとれるといっても性格や習性は明らかに犬寄りなんですよね。ご主人様のことが大好きで、ご主人様に服従することが何にもまさる喜びで。いつでもご主人様のそばにいたくて、どんな扱いでもいいからご主人様に構ってほしくて、周りに客人がいようが部外者の目があろうがおかまいなし。犬の姿であるならまだ可愛げがあろうというそんな態度も、人の姿でされるとなまじ美形で有能ぞろいだけに残念度が際立つという。

どいつもこいつもそんなのばかりだから、彼らの女王になることになったリーゼロッテのはずなのに、ドン引きしたり羞恥に身もだえたりしまくりで。それはそれでかわいらしくはあったんですが、最後の王族だからといわれて責任感のようなものを抱きはじめたにもかかわらず、その向かう先が国民のためにも立派な女王様になるんだという決意よりも、ご主人様に気に入ってもらいたくて気合いの入りすぎた問題児たちをどうしつけていけばいいのかという実際的な苦悩になってしまうからおかしいこと。勝手に戦争はじめて国ひとつ滅ぼしたり、誰が一番ご主人様にかわいがられるべきかで大乱闘がはじまったり、放っておくとなにをしでかすかわかったものではない困った犬人たち。そんな彼らにご主人様として見出されたリーゼロッテは、作中でも言われていたように、女王様というよりも彼らの飼い主なんですよね。いやまあ彼女も、彼らに見出されるまではわりとつらい半生を過ごしてきたはずなんですけどね。サラッと流されてはいましたが。そんな境遇から実は王族の生き残りだったのですといわれて、そうして迎え入れられた国で待っていたのが、ご主人様大好きすぎて限度を知らない困った犬人たちの飼い主としての仕事であったという。ナンデヤネン。

そんなわんこたちの中で、個人的にいちばんのお気に入りはダシバですね。犬人がたくさん登場する作中においては唯一の純然たる犬で、活躍という活躍もまったくしないみごとなダメな子ぶりを見せてくれたわんこではあるんですが、ダメな子もここまでくるとある意味すごいというか。犬人たちに見出される前からのリーゼロッテの飼い犬にもかかわらず、番犬の役にはまるで立たなければ忠犬の評価にもほど遠い。そのくせ食うだけはしっかり食ってまるまるとした体をしているという。いかにも「ダメシバ!」な駄犬の中の駄犬ではありますが、そのダメシバぶりがかわいいといいますか。どこまでも活躍しない姿が、ノンストップで暴走ぎみな犬人たちの中にあってはむしろ癒しになってくれてたんですよね。後半の、まさかのキーキャラクター的な立ち位置には笑いましたけど。

そして地味にリーゼロッテも、基本的にツッコミどころ満載な犬人たちの暴走に振り回されて大変な役どころではあったんですけど、この子もこの子で結構な一面があったというか。マスティフさん家の狂犬を従えてみせた貫禄は、まさに「女王様」という感じではなかったでしょうか。いやまあ、本人にはそんなつもりまったくなかったんですけど。完全に勘違いモノの産物なんですけど、この子そっちの要素持ちであったかーなどと謎の感心をしてみたり。

そんなこんなで、笑えて笑えてたいへん楽しい話でしたので、つづきもあるならぜひ期待したいところです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

催眠遊戯

えろ有り感想です。それしかないともいう。

催眠遊戯 (ぷちぱら文庫) -
催眠遊戯 (ぷちぱら文庫) -

催眠で徐々に徐々に認識をゆがめて、もともと特別仲がよかったわけでもないヒロインと、そうとは意識させずにエッチなことをする関係に持ち込む話。催眠だからなんでもありな感じではなく、催眠だからこその周到な変化をもたらしていく過程が面白かったですね。その結果として起きた変化は、常識改変の類のようでありながらどこまでも相手の認識の隙をついたものであって。あくまでも協力してもらうという建前のもと、これくらいのことはつきあってもいい、ここまでならされてもOKという心理的なガードを巧妙にすりぬけて、べつにおかしいことはされていない、協力して得られる体験はとても快いという認識をすりこんで、そうとは意識させないまま二人きりのときにだけいやらしい表情を自分から見せるようになっていくという、なんとも興奮するシチュエーションで。

ただこれ、正直こわいというか。エッチなことをしてるにもかかわらずヒロインにはどこまでもそんな認識はなくて、当人としては表面上知らないうちに、主人公好みの高嶺の花だけど自分にだけはいやらしいところを見せてくれる最高の彼女ができあがるというわけで。微妙に人格改変的なところまで踏み込んでる気がするんですよね。そこまでやっていいのかというか。なんせヒロインの側から望んだものではとうていありませんし、最終的にも主人公はうれしそうだけどヒロイン側の気持ちが置き去りにされてる感がありましたし。なんとも、このジャンルの業を思わせる話ではありました。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 00:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月22日

パレス・メイヂ(1)

パレス・メイヂ 1 (花とゆめコミックス) -
パレス・メイヂ 1 (花とゆめコミックス) -

まっすぐな性格と忠義の心から今上の女帝に可愛がられる少年侍従という、最高に素晴らしい話であった。御園といるときにだけ、いたずら好きな少女のような姿を見せたりなどとても気を許した様子を見せてくれるのがとてもいいんですよね。そして、この巻の最後の話の、慣例を破ってでも御園を贔屓して儀礼に参加した場面、いかにも寵臣という感じで最高でしたね。最高でした。まあその分、次以降で陛下の元婚約者である鹿王院宮との軋轢が強くなりそうでこわいんですが。でも、ちょくちょくはさまれるモノローグ的に、完全に二人の縁が切られてしまうことにはならなさそうで? そういう意味では安心して読める……んでしょうかね? ともあれ、楽しみにしたいです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:50| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月20日

逆転召喚 〜裏設定まで知り尽くした異世界に学校ごと召喚されて〜

逆転召喚 〜裏設定まで知り尽くした異世界に学校ごと召喚されて〜 (ダッシュエックス文庫) -
逆転召喚 〜裏設定まで知り尽くした異世界に学校ごと召喚されて〜 (ダッシュエックス文庫) -

これはとてもよさげな出だし。いじめられてたり、なんらかの生まれの事情めいたものだったり、現実世界で生きづらさを感じていた少年少女が、召喚された異世界で異能の力を得て鬱積した感情から解き放たれる。この大枠だけでもう大好き。最高にわくわくさせてくれる設定。まだ本当に出だしという感じで、いろんな話が始まるのはこれからっぽくはあるんですけど、まずこの巻では主人公である柏木湊について。現実世界では学校でいじめの暴力にさらされていた少年。反撃をしようにも、そうすれば別のクラスメイトたちに危害が及びかねないからと自覚的に耐えることを選んでいた、そういう意味ではもともと強さを備えたキャラクター。そんな彼が、しがらみから解放されたこの世界で、いじめの主犯と対決し、異能の力による圧倒的な戦力差で打ち負かす。シンプルながらもこの爽快感。いいですね。いじめられっ子が異世界でいじめっ子に逆転というと、わりとありがちな気もするんですが、むしろ最近のWeb小説のブームよりも少し前くらいな印象も受けていたり。実際のところどうなのかはわかりませんが、少なくとも自分は好きな題材です。

あと、イラストも個人的に好みですね。ぶっちゃけイラスト買いした部分も小さくありません。カラーの絵とか序盤のモノクロの彩東さんのイラストをみた瞬間に、あ、これめっちゃ好みだって、買おうかどうか迷ってたのが一気に購入に傾きました。いちばんよかったのはなんといってもエマ先輩ですね。あの場面はとてもえろかったですね。狙ったように挿絵がついてて最高でした。そりゃあちょろくもなります。あと、どこがとはいいませんが彩東さんの一部の描き方、最近ところどころで見かけるような気がするんですが、最近の流行りだったりするんでしょうかね。ほらあの、たわ(ry
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 18:50| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

その指先でころがして

成年コミックです。R18商品です。いわゆるエロマンガです。ご注意ください。

その指先でころがして (二次元ドリームコミックス) -
その指先でころがして (二次元ドリームコミックス) -

表紙からもわかるように、基本的に男の子が女性から責められ焦らされ気の済むまで射精させられる展開。素晴らしい。男の子の方が自分から挿入したりすることもあるけど、主導権はどれも女性側が握るプレイ。発情した女性の快感を求める勢いに押し流され、男の子は怒涛のような快楽にただただもだえ苦しみ、情けなく射精させられるだけの玩具のようになる。一度ぐらいなら甘美な体験と思えても、飽くことのない女性側の嗜虐心や欲求によって、玉を揉みころがされたり亀頭を弄りまわされたり前立腺をぐりぐりと刺激されたり、否応なく何度も勃起させられて最後の一滴まで絞りつくされる快楽地獄が詰まった全9話(うち3話は連作)。どれも最高にエロくて素晴らしい話ばかりでした。

絵の方でも、与え続けられる快感に悶えたり情けなく射精を懇願する男の子を見てぞくぞくしてる女性たちの表情はたいへんいいものでした。猫系の獣人の女の子の、猫っぽくぴんと背筋はりつめたり、しっぽでも男の子をつかまえて放そうとしない様子とかもとてもよかったですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 18:31| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

新米姉妹のふたりごはん(1)

新米姉妹のふたりごはん (1) (電撃コミックスNEXT) -
新米姉妹のふたりごはん (1) (電撃コミックスNEXT) -

感情がそのまま面に出るタイプのサチと、人見知りするタイプだけどそんな彼女を見て目を細めたりキラキラさせてるあやりという、とてもかわいい新米姉妹の料理マンガ。お姉ちゃんになったんだからとはりきっては空回りぎみになるサチも、初めてできた姉といっしょにあれこれできるのがうれしくてしかたない様子が不器用ながらもばんばん伝わってくるあやりさんも、とにかくかわいくてとてもグッド。特に、家で一人で過ごすことが多かったことあやりさんがいろいろ気遣ってくれるサチ姉さんにしっぽ振ってそうな感じに懐いてる様子がとてもいいものでした。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:51| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月16日

艦隊これくしょん −艦これ−  陽炎、抜錨します!(7)

艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します! 7 (ファミ通文庫) -
艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します! 7 (ファミ通文庫) -

とうとう解散かー。思い返せば1巻当初の、問題児ばかり集めた面々でどうなっちゃうんだろうと不安でいっぱいのところからスタートして、それでも陽炎を柱としてみんながまとまっていって、それどころかいつのまにか隊の全員が頼りになる歴戦の駆逐艦娘に成長していて。これからもっともっと活躍する姿を見たいと思うまでになってたんですよね。よしんば解散しても、それぞれのキャラが元の所属鎮守府でどんな活躍をしていくのかというところも、知りたくもなってたんですけどね。どうやらシリーズはここで完結のようで。

今回陽炎がなにしてたかというと、基本的には佐世保で秘書官を務めた前回と同じく、今度は横須賀での秘書官業務。前線に立つよりも司令塔的な立ち位置になることで、熱い気持ちのおもむくままに戦う駆逐艦としての姿はあまり見られなくて、その点ではやや物足りなさもありましたが、その分は後輩である夕雲型の指導で楽しませてもらったところがあり。夕雲型の艦娘たち、登場当初はとても素直ないい子たちばかりで、問題児たちの集まりでもあるこの世界の駆逐艦娘としては珍しい性格の子たちでしたが、そんな彼女たちががさつな先輩駆逐艦娘たちの指導でみるみるうちに悪い駆逐艦の流儀に染まっていく様子は頼もしさを覚えればいいのか嘆き悲しめばいいのか。ともあれ変な笑いが出てきそうなあれよあれよという展開でした。ふへへ、素直でかわいいいい子が駆逐艦娘なんて勤まるはずあらへんかったんや……。

そんなこともあって、後輩も立派に(?)成長したことで、彼女たちも交えて、それぞれの鎮守府で第十四駆逐隊の面々がどんな活躍を見せることになるのかと、期待できるところだったんですけどね。ほかの艦種の艦娘たちとの交流も増えてきて、この経験がどう活かされることになるのかと、まさにこれからというところだったと思うんですが……。本当に、もっといろんな鎮守府、いろんな戦いの話を読みたかったと、完結感を読んでまず思わされるシリーズでありました。艦これのノベライズは、スニーカー文庫から最初に出たもの以外は読んでいるんですが、いちばん好きなシリーズは間違いなくこれでした。主人公が艦娘で、登場キャラも一部の駆逐艦娘中心にしぼったことで、彼女たちの視点から描き出される駆逐艦娘としてのあり方がとてもよく伝わってきて。主役の駆逐艦娘以外のキャラについてもこの世界に息づいている様子を見て取れるようになっていて。提督目線で大勢の艦娘たちを見下ろすような視点ではなく、同じ艦娘の目線で仲間たちを見つめるからこその、目の前の世界の一つ一つのあり方が感じられて、見えないその先への期待や想像が膨らませられたというか。

ともあれ、ここまで読んだ自分から言えることはやはり、ありがとうございましたと。素晴らしいノベライズを楽しませていただいたことに感謝の気持ちを。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 15:12| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月13日

お嬢様と執事見習いの尋常ならざる関係

お嬢様と執事見習いの尋常ならざる関係 (一迅社文庫アイリス) -
お嬢様と執事見習いの尋常ならざる関係 (一迅社文庫アイリス) -

アンバーとミシェルの関係めちゃくちゃよかった。行儀見習いの名目で他国に赴いたはずが立派な男装の騎士になって帰ってきてしまった王女ミシェルと、そんな彼女の幼なじみで誰にも言えない想いを寄せる執事見習いのアンバーの関係がですね。物語の視点としては半々くらいの割合で描かれていくんですが、アンバー視点でのあふれんばかりのミシェルへの気持ちがこれでもかと感じられることといったら。王女と執事見習いの立場では望むべくもないし、だからこそミシェルにだって告げることさえできないんだけど、そばにいられればそれでいい、ミシェルがもっとも輝いていられるようにサポートできればそれに勝る幸せはないとばかりに甲斐甲斐しいほどの仕事をこなすけなげさ。執事見習いとしての仕事もあるのに、それらをこなしながらも残るすべての時間をつぎこんでいるに違いないほどにミシェルのことを想っていて、けれど許されない気持ちだとわかっているだけにそれ以上の一線を越えることはぐっとこらえなければならない切なさ。本当にいい子ですよ、この子。本来のヒロインがさわやかで男らしい感じにしあがってるだけに、とてもヒロインっぽい。執事長から怒られて落ちこんでる間にほとんど無意識のうちに誰よりもミシェルの好みを知り尽くした服を仕立ててしまったりとか。とてもかわいい。

一方のミシェルも、道を歩けば女官や姫君たちから熱い視線を向けられる凛々しい騎士ぶりで、エスコートの男性役もお手のものどころか女性役の動きはさっぱりという見事なまでの男らしさ。実際に騎士としての腕もかなり立つようで、馬を駆って自ら作中で起こった事件の捜査にも乗り出すありさま。姫君としての行儀見習いに国を出たはずがどうしてこうなったという。しかもそれがこの上なく様になっているものだから、母后の嘆きもわかろうというもの。

アンバーに対する心情としては、アンバーがかなりストレートに淡い気持ちを内心で吐露しまくっていたのと比べると淡泊にも思えるくらいで、はじめのうちは頼りになる幼なじみくらいの感覚は伝わってくるものの、アンバーの一方的な身分違いの片思いなのかなあと思ってもいたんですよね。それでもとてもよさそうと。けど、だんだんミシェル視点でもアンバーではなく別のキャラと一緒の行動になると不機嫌さを表すようになっていき、どんどんアンバーに対する無防備なまでの内心が見えてくるようになりと、読み進めるにつれてめちゃくちゃすてきな関係だとわかってくるんですよ。このくすぐったいような心地いい関係。めちゃくちゃよくないですか? 帯見たら「両片想いラブコメディ」ってありました。まさにそれ。最後まで二人が決定的なひと言を口にすることはないんですが、ラストシーンのやりとりはもう、タイトル通り、身分違いの想いを描いた話としてはただただ感謝の言葉しかない素晴らしさでした。ありがとうございます。ありがとうございます……!
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 16:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月10日

本好きの下剋上 〜司書になるためには手段を選んでいられません〜(2)神殿の巫女見習い(2)

本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第二部「神殿の巫女見習いII」 -
本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第二部「神殿の巫女見習いII」 -

シリーズ5冊目にしてついに貴族が登場。神殿長や神官長といった貴族階級出身の人たちもすでに登場してはいましたが、あくまでも一部の例外的に映っていたというか、平民出身で平民以外との交流がないに等しいマインの視点からでは彼らと平民との違いがそんなに見えてこなかったところがあるんですよね。神殿長はなんかやたら偉そうだったけど、神官長はマインの持つ魔力や神殿の事情などもあって平民であるマイン相手でも話せばわかる人のように思えて。なので、常識の違いからくる意思疎通の問題はあるにしても、マインが貴族とかかわりを持つようになっても今までの調子でなんやかや受け入れられていくことになるのではないかなーと思ってたんですよ。でもね、これ、無理ですわ。そんな気軽にひょいっと飛び込める世界じゃないですよ。住む世界が違うってこういう感覚ですよね。貴族街に足を踏み入れて、貴族しかいない場に立つことで初めてわかる厳然とした身分意識。神官長のほうがむしろ少数派なんだろうなと思わされる見下され方。以前ベンノたちから、魔力食いだと知られたら貴族にいいように飼い殺しにされるぞと言われてましたが、その言葉がはっきりと呼び起こされる。愕然とさせられるような貴族社会とのファースト・コンタクトでありました。

いやもう、びっくりびっくり。この作品世界って、そんなに厳格な階級制度のある設定だったんですね。思い返してみれば、前の巻だったかで、レストランの準備で平民は皿代わりに硬いパンを使うとか、食べ終わったらそれを床に投げ捨てて残飯はそこらを徘徊する犬が処理するとか、まるで海外のファンタジー作品読んでるみたいな理想化されてないファンタジー描写に驚かされたところはありましたが。というか、平民の中での生活は現代文明を持ち込むための知識のあれこれこそ細かく描写してあるなーと感じたものの、中世ヨーロッパ風のふんわりしたファンタジー世界という印象だったはずなんですけどね。貴族的な文化に近づいていくと夢のないファンタジー世界が顔をのぞかせだすのはどういうことなんでしょうかねという。面白いなあ。小説家になろう発でこんなファンタジー世界を見ることができようとは。平民街と貴族街のギャップにはまだ不整合感を感じる部分もありますが、この巻でようやく貴族が何人何十人と出てくる場面が登場したことからして交流の乏しい階級なのだろうかと思えてもいるので、もっともっといろんな場面を読みたいところです。貴族階級の場にほんの少し立ち入っただけなのに世界が倍くらい広がった感覚があって、それなのにもっともっととこの世界のことが知りたくなる。いい物語ですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:16| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする