2017年01月31日

霊感少女は箱の中

霊感少女は箱の中 (電撃文庫) -
霊感少女は箱の中 (電撃文庫) -

『断章のグリム』は読む機会を逸してしまった感があるとはいえ、『Missing』や『夜魔』を楽しんだ読者としては、この作者さんの新作を読まないわけにはいかないでしょうということで。試し読みで読めた範囲での第一章のおまじないで起きた心霊現象も、作者さんらしくなにか来ると思わせてその期待通りにぞっとさせてくれる展開とその描写で、これだけでもうつかみはばっちりというもの。

けど、一番よかったのは何かというと、ラストに明らかになる今回の事件の真相だったんですよね。主人公である瞳佳の友人の麻耶という少女については、最初から多少予想はついてましたが、一部は当たりで、でも予想を超えたところで今回の事件にかかわっていて、そのかかわり方がとてもやるせない気持ちにさせられるものだったんですよ。瞳佳にとってはどうしようもないところで事件にかかわりを持つことになっていて、けれど彼女によって事件が決定的に悲劇の様相を帯びることを定めてしまった。それは瞳佳自身も考えたように、まさに瞳佳によって今回の事件が起こされたという決して動かすことのできない事実を彼女に突きつけるもので。巻き込まれた人たちの末路が悲惨なものであればあるほど、その数が一人二人と数え上げられていくことになればなるほど取り返しのつかない罪悪感に苛んでくれて。とても素晴らしい読後感に浸れる話でしたね。こういうの大好きです。もともと霊媒体質で心霊的な事件に巻き込まれがちだったという瞳佳ですけど、今回の事件ののち、どんな精神状態で学校生活を送ることになるのか。似たような境遇の真央とどんな関係になっていくのか。たいへん気になりますね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 16:09| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月29日

インヴィジブル・シティ

インヴィジブル・シティ (ハヤカワ・ミステリ文庫) -
インヴィジブル・シティ (ハヤカワ・ミステリ文庫) -

閉鎖的なユダヤ人のコミュニティに、自分を置いて出ていった片親がユダヤ人という出自のおかげですんなりと受け入れられて他紙の記者にはつかめなかった真実に近づいていくことになる奇妙な縁。面白かったですね。

宗教色の強い生活を送るユダヤ人社会を舞台にしながらも、その中で信仰生活に抑圧を感じる者、疑問を感じる者、けれど信仰を離れることを考えているわけではなく、より生きやすい生活、幸福になれる生活をあくまでも同じ信仰の内側で模索する人々の信仰生活の描写がよかったです。価値観とか道徳とか常識とか、分かちがたく生活の根底に根差している感じ。大仰に感じるようなものではなく、宗教ってこういうものなんだろうなあと。

被害者の情報も、一人の知人・縁者から聞いてわかった気になっていたらそれはあくまでも一面的なことにすぎなくて、信用を得ていくうちに何回かにわたって何人にも聞きこみを重ねていくことで後半にまでいたってやっと詳細な為人がわかる流れもよかった。何方向からも情報が集まることで平面的なプロフィールが立体的な奥行きを持ちはじめるようだったというか。この辺は、もしかしたらミステリーならそれほど珍しくはない描写かもしれませんが、普段読まないジャンルでもあり、新鮮に楽しむことができました。

最後、余韻を残しながらもこのまま続けようと思えば続けれそうな感じの終わり方だったなあと思っていたら、やっぱり本国では続編も出ているようで。そちらも邦訳を期待したいですね。今回の事件の取材を通して、嫌いだとばかり思っていたところから印象が変わってきた母親と出会うとしたらどんな再会になるんだろうかと、とても気になります。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 21:29| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月28日

艦隊これくしょん −艦これ−  陽炎、抜錨します!(6)

艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!6 (ファミ通文庫) -
艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!6 (ファミ通文庫) -

陽炎、中間管理職的役職を拝命す。目の前で直率の駆逐隊5人を嚮導してればそれでよかった立場から、いきなり鎮守府に所属するすべての艦娘および事務作業等に関する処理を請け負う秘書艦になってしまいてんてこ舞いの陽炎の様子が面白かった一冊。着任早々、山のような書類を目の前にして途方に暮れてしまったかと思えば、前任者から仕事のコツを教わるうちに肩の力を抜いて駆逐艦陽炎らしい要領のよさと体当たりで解決するスタイルで秘書艦の任務もすぐに板についてしまうのが彼女のすごさであり。これを見せつけられると、期待の有望株という各所の評判も、陽炎がとまどうような買いかぶりというわけでもなく素直にうなずけてしまうところ。作戦指揮に関してはまだ迷いもみられるようですが、これも経験を積んでいけばなんとかしてくれることでしょう。弱気になったところを助けてくれる駆逐隊の仲間もいたりと、ここまでの第十四駆逐隊の嚮導としての経験が結実したこの秘書艦回だったように思いますね。曙はツンデレかわいい。次がもう最終巻ということで、名残惜しいところではありますが、どんな終わり方をしているのか、楽しみにしたいと思います。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 03:01| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月26日

本好きの下克上 〜司書になるためには手段を選んでいられません〜(2)神殿の巫女見習い(1)

表記上わかりにくいですがシリーズ4冊目。

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第二部「神殿の巫女見習いI」 -
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第二部「神殿の巫女見習いI」 -

階級が違えば常識が違う。平民である一人の兵士の娘から貴族階級である神殿の巫女見習いへと立場が変わると、これまた転生時のような感覚の違いに悩まされることで。第一部後半でようやく慣れてきたと思ってきたところにこれなのでまたまたてんてこ舞いになるわけですが、深刻になりすぎずにコミカルささえ感じさせてくれるのはマインの愛嬌のおかげでしょうか。本を読むことが大事でそのほかのことをめんどくさいからと無視してたら問題が起きたり、その性格を神殿でもさっそく覚えられて本を読ませないぞとちらつかせながら巫女見習いとしての学習をさせられたりとか、立場が変わって大変なときでもマインはやっぱりマインなんだなあと思わされるエピソードの数々にくすっとさせられるのがとても安心させてくれます。

階級と常識・感覚の違いをいちばん感じさせてくれたのはルッツとルッツのお父さんとのいざこざを神官長立ち会いのもと解決に導いた場面だったでしょうか。ルッツのお父さんは平民として、もっというと一人の職人としての理屈と感覚を言葉少なな性格とともにルッツにつきつけるんだけど、頭ごなしの否定に思えるその言葉が神官長の求めに応じて背景的な考えが明らかになってくるにつれて互いの認識の齟齬がわかってくる流れ。面白かったですね。ルッツのお父さんがあまりにも言葉少なすぎだったり、家族間のコミュニケーション不足だったりした面もあったとは思うのですが、ここで思わされるのは読者である自分も、この世界の昔気質の職人の感覚はあまり共有できていないものだったんですよね。マインという平民育ちの主人公に近い位置の人としてなんとなく理解できてきている気もしていましたが、ところ変われば常識も変わる。わかった気になっていると思わぬ勘違いをしてしまうこともあるのでしょうね。貴族階級の、人を使うのが当たり前、むしろ使わないのが非常識という感覚も、われわれ現代人からするとなじむのに苦労しそうですが、まあその辺はマインとしては慣れないとどうしようもない世界ですので、なんとかしていってくれることを期待しましょう。

メインの舞台が変わって主要な登場キャラにも変化があり、登場頻度が減ったことをさびしく思うキャラもいますが、ともあれ第二部もまだはじまったばかり。どんなところに落ち着くのか、どんなことをしでかしてくれるのかと、楽しみにしたいですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 21:52| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月21日

エクレア あなたに響く百合アンソロジー

エクレア あなたに響く百合アンソロジー -
エクレア あなたに響く百合アンソロジー -

百合アンソロジーという響きが素晴らしく聞こえる今日この頃。

どの話も10ページから20ページ台くらいの短編で、あまり情感を感じさせる間もなく終わってしまう話もありますが、設定からだけでもそこはかとなく漂う百合の匂いに目を細めて楽しむことができる話ばかりでありました。

●缶乃「無職とJK」
これはとても続きを読みたい話。ストレートに慕ってくる女子高生相手に真央がいつまで子供に対する大人として接していられるかがとても気になる年の差百合。最後のモノローグにもあるように、転がりこんでしまえば大人としての面子的なもの以外はすべてうまいこと解決しそうな構図なので、いつ転ぶのか、どう転ぶのかと、想像を膨らませるだけでも楽しさがあります。

●伊咲ウタ「かみゆい」
話のテーマでもある髪の描き方がたいへん眼福ものでした。チカがいじってみたいと思うカオルのさらさらつやつやとした髪、そう思うチカ本人のかわいく編みこまれた髪、とてもよかったですね。実際にカオルの髪をまとめることになった場面での静謐さの中にただよう色気もやばくて。ほかの作品も気になる作者さんですね。

●伊藤ハチ「うさぎのベルとオオカミさん」
これはもうなによりベルちゃんがかわいいですね。ちっちゃいながらも喫茶店の店員として素直で一生懸命なところとか。笑顔の似合う頑張り屋さんですね。そんなうさぎ娘の隣に表情に乏しいオオカミのお姉さんを並べるビジュアルが、なにか、こう……いいものがありました。

そんなところで、百合として楽しめてるかどうかはよくわからないところありますが、たくさんの短編が収録されているので、少なくともいくつかはいいものが見つかりますねということで。今後読むマンガの参考になればと思うところです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 13:52| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月18日

ヒロインな妹、悪役令嬢な私

ヒロインな妹、悪役令嬢な私 (PASH!ブックス) -
ヒロインな妹、悪役令嬢な私 (PASH!ブックス) -

なんだろう、この可愛いキャラクターたちは。自他ともに認めるシスコンで天才と自称してはばからない主人公クリスティーナ、お姉さまがこの世のすべてともいえそうなレベルで大好きな妹ミシュリー、社交の場で出会ってクリスティーナ大好きになる婚約者のシャルル。この3人が絡むともうとにかく可愛くて可愛くて。ミシュリーもシャルルもクリスティーナにもっと自分のことを構ってもらいたくてしかたないちびっこたちだから、こんなやつよりも自分を自分をときゃいきゃいけんかしながら主張しあってるのがたいへん可愛らしくて。シスコンなクリスティーナ視点では天使なはずのミシュリーの見えてはいけない黒い部分がのぞいちゃってたり、シャルルもふだんはわりとのんびりしたマイペースな感じなのにガチにマジげんかに発展しそうになってたりして軽くイメージがぶち壊されちゃったりもするんですが、そんなことさえほほ笑ましく思えてしまうのが幼い子どもたちのやりとりというもので。クリスティーナとしてもどちらもどちらで好きだからなんとかかんとかなだめすかそうとする苦労が手に取るようにわかるのがたいへん面白いんですよね。もう延々この3人だけで話を循環させててもいいんじゃないかというか、それがすなわち天国なのではないかと思ったりもしましたが、まあそれでは話が進みませんか。

けどやっぱり話の軸としてはクリスティーナがミシュリーのことを世界一可愛く思っているということで。シャルルのことも好いているとはいっても、やはり婚約者としての初来訪時にミシュリーとけんかするようなら帰れと真顔で言い放つシスコンぶりがクリスティーナというキャラクターの核なのであって。なによりも妹を可愛がりまくるのがクリスティーナらしさではあるんですよね。ミシュリーのほうでも、自分のことをかわいいとくりかえしくりかえし言ってくれるクリスティーナの自信にあふれた物腰をかっこいいと言って応えたりして。3人からシャルルを抜いた姉妹もたいへん愛くるしい仲のよさで。もうもう、この二人だけでも至福の姉妹愛空間でございました。

その一方で、マリーワとのやりとりはとにかくコミカルで。ムチまで持ち出す厳しい指導からエスケープしては怒られて、自分は天才なんだから本番ではあっと驚かせてやると大見得を切っては詰めが甘くて怒られてと、とにかくクリスティーナが調子に乗っては鬼の指導で泣きを見る展開に笑わせてもらって。でも、そうして何年も指導に当たってきたために本質的なところではだれよりもクリスティーナのことを理解していて、というギャップがたまに胸を打つからずるいんですよね。特にラストなんて、なんかもうじんとくるものまでありましたからね。というか、冒頭であの文章があっての、結局あれは何だったんだろうと思っていたらラストの場面ですから、一冊の本としての作りのうまさですよね。思わずうならされる構成の妙。たまらない満足感の残る読後感でした。

最近完結巻の出たシリーズではありますが、まだまだいろんな人に読まれるべき作品ではないでしょうか。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 14:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月16日

七王国の騎士

七王国の騎士 (氷と炎の歌) -
七王国の騎士 (氷と炎の歌) -

時代は違えど、やりきれない苦みとどこからかわき上がる高揚感が残る読後感。これこそは、この作者の描く『氷と炎の歌』の世界ですね。

そんなわけで、本編のおよそ100年前の世界を描いた外伝です。ウェスタロス大陸がまだ竜の紋章のターガリエン家によって一応の平穏に包まれていた時代。がたいがいいことだけが売りの放浪騎士ダンクこと〈長身のサー・ダンカン〉と、ふとした縁から彼の従士となることになった生意気盛りの少年エッグの二人を主役にした、中編3編からなる一冊。

やっぱり自分はこの世界の物語が好きなんだなあと再確認させてくれる話ばかりでしたね。一応続編の構想はあるらしいですが(本編の作業優先であと回しになってるらしい)、これだけで終わってても全然問題ない作りですし、『氷と炎の歌』シリーズに興味がある人、でも本編は分厚くて気おくれしてしまうという人に、まずはこの本から試してみてはと勧められる一冊だったと思います。ドラマ版もいい入り口になっているとは思いますが、映像と小説ではやっぱり受ける印象が違うと思うので。もしかしたら細かい部分でよくわからない箇所があるかもしれませんが、気になったら本編も読んでみてはというところ。そしてもし、この本の話が面白いと感じられて、もっとこういう話を読んでみたいと思った人には、迷わず本編へ進んでいただければ幸いです。そこには驚愕と興奮の戦乱の世界が待っていますので。


というところで、初心者の方向けの紹介はここまでにして、以下は*SPOILER ALERT*の注意書きのもとに感想を書いていきます。

まず読んでいてツッコミを入れずにはいられなかったこととして、「本編の100年前の話のはずなのに、本編にも登場してた人物がいるんですけど!」というのははずせませんね。いやまあ、御年100歳超という話ではありましたが。でも、100年ですよ? 1世紀もの時間というのは、地上に生きる人をまったく新しい世代に交代させるのにじゅうぶんな時間であるはずで。まして、医療技術の発達していない中世をモチーフにした世界ですよ。そんなところにこれでしたからね。登場人物紹介を見てもしやと思いはしたものの、為人を聞くにどう考えてもあの人で、驚くやら笑えてくるやら。とはいえ、そういう人物がいたからこそ、本編との地続きな世界をより一層感じることができたようにも思えたり。

100年もの隔たりがあれば社会にも大きな違いが生じるもの。上でも書きましたが、この外伝の舞台になるのはターガリエン家の御代のウェスタロス。牡鹿の紋章のバラシオン家はまだ諸侯の一角にとどまっていて、そしてなにより、本編で描かれているような予断を許さない過酷な戦乱の時代ではない。〈ブラックファイアの反乱〉と呼ばれる内乱が終結したのが10年ちょっと前のことで。ターガリエン家にその象徴たるドラゴンはすでにないものの、しかし彼らの統治を覆せるほどの勢力はまだなく。一朝ことが起これば国がひっくり返りそうな危うさはありながら、それでも表面上は王家の威勢を保ちつづけているという、そんな時代の話。

それと、季節も違いましたね。本編では、スターク家のモットーにもあるように、冬がやって来ようとしている厳しい環境での物語。それに対してこの外伝は夏。夏の入りから盛夏にかけてという感じでしょうか。短い夏の後に長い長い冬がやってくるという独特な循環をする気候であり、移り変わりに年単位の期間が普通に経過するという世界なため、話と話の間で数年が経過していますが季節は変わらず夏のまま。そんな、うだるような暑さの中での話。

話の内容を見ても、様々な地位や年齢の人物たちの視点から描かれていく本編とは違い、この外伝では視点人物は放浪騎士のダンクに固定されており、いわば下々の立場から見たウェスタロスが描かれていたように思いました。放浪をつづけながらも食い扶持は稼がねばならず、そのためにあれこれしてみるも王侯貴族たちの気まぐれによっては簡単に首が飛んでしまいかねずという、数日先は闇な世界。本編を読んでいると立場が上の人たちにもいつ不測の事件が起きて一族郎党もろとも生死にかかわる事態になるかわからない、油断大敵な暴力の階層社会を思い知らされたりもしたんですが、一方のこちらはある程度のところ「なるようになるし、なるようにしかならん」といった深く考えないことによる気楽さが根底にあるようにも思えたり。正直どっちもどっちな感じですが、この誰も彼もがしんどい生を過ごしているようにうかがえるところが、この世界観の面白さでもあると感じています。

では、この世界における騎士とはどんなものなのか。ダンクについては先ほどちらっとふれたとおりな感じですが、本文中で称していた“草臥しの騎士”だけが騎士であるわけではなく、というよりも彼らは騎士の中でも最底辺に位置する宿無し(つまり主のない)の放浪騎士にすぎないのであって。作中に登場する人物たちをながめていると、貴族階級の出身者が多いんですよね。公の位を有する有力諸侯の子息でさえも、位を引き継ぐ前は騎士としての敬称で呼ばれている者が少なくない。しかし騎士という言葉が指す人々には、上流貴族の子弟であろうと生まれの卑しい民であろうと関係なく含まれている。そこに共通するのはサー・〜の称号のみ。なので、典型的な騎士とはとなると、ちょっとイメージしにくい。現代に生きる我々が「騎士」という言葉からぱっと浮かべるイメージとしては、本編に出てきた〈花の騎士〉あたりが近いでしょうか? ほかの人物を思い浮かべる人もいるでしょうが、生まれが卑しく華やかさに欠けるダンクがそこにあがることは考えにくい。けど、それにもかかわらず、ダンクは一面的な騎士の理想像として描かれているんですよね。

強きを挫き、弱きを守ること。主君に忠節を尽くすこと。誇りと正義を忘れぬこと。それらは権力や財力や諸々を含めた力こそがすべてという有り様をことあるごとに見せつけてくるこの世界においても、騎士のあるべき姿としての共通理解が広く浸透しているようで。乱世ではない時代だからこその価値観なのかもしれませんが、だからこそそうありながら五体無事に諸地方を放浪していられるダンクの姿がとても稀有なものとして映るんですよね。まあ実際ダンクのような人物はこの時代でも珍しいようですし、精神的にも肉体的にも大けがは何度もしてるんですけどね。でもダンクの場合はそれでも懲りないというか、間違ったことをしたとは思っていないというか、そもそも過去のことを深くはかえりみない性格というか、騎士の務めを果たすべき場に居合わせると結局は考えるよりも先にあるべき行動をとっている。この辺は師であった〈銅貨の村のサー・アーラン〉の薫陶によるものでしょうか。もしかしたら「うつけのダンク」の本領なのかもしれませんが。しかしなんにせよ、彼ほど純粋に騎士道を体現している人物は出てこない。下層の者はその日の糧を得るために悪賢く立ち回り、上層の者は家や体面にしばられずにはいられなくて。なまじ世故に長けた者ほど保身の術を覚えていって、「うつけのダンク」だけが騎士としてあるべき行動を取ることができる。騎士というのは本来高貴な者の務める身分であるだろうはずなのに、この現実はなんという皮肉でしょうか。しかし、騎士道とは臣下の道とは似て非なるもの。「鈍なること城壁のごとし」。それはどんな世間のわずらわしさに対しても純粋な生き様を保ちつづけられることへの賞賛の言葉ともなりうるのではないかとも思ったり。

とはいえ、ダンクがそうありつづけられていることには、エッグの存在を見過ごすことはできないでしょう。老師と死に別れたダンクが道すがら出会った生意気ながらも愛嬌のある、妙に従士としての知識に長けた少年エッグ。彼が何者かについては、すぐに見当がつくところがあったので別段驚きはありませんでしたが、その豊富な知識も含めて、がたいがいいだけで頭のよくないダンクをくりかえし助けるに余りあるものではありました。彼がいなければダンクはいったい何度命を落としていたことか。とはいえ、エッグも少年らしく世間知らずなところがあって、ダンクより知恵はまわるものの詰めの甘さは隠しようもない。二人そろってそんなだからはらはらさせられることといったら。やはりこの時代は100年後と比べると平和な時代なのでしょう。総じてスマートに事件を切り抜けるということとは縁のないコンビではありました。でも、そんな二人が彼らのままやっていけるということが、この世界ではとても貴重なことだと思うのです。


さて、そんなところで各話感想を。ここからはSPOILER ALERTの度合いがさらに増しますのでお気を付けを。

「草臥しの騎士」

個人的にはこの話がいちばん好きです。本編っぽい雰囲気をいちばん感じたというか。出来した問題をなんとかクリアーすることができたと思ってほっとひと息ついた瞬間にうしろから頭をがつんとやられる展開がいかにもこの世界の話で、最初呆然としながらも読んでるうちにだんだん意味がわかってきて頭抱えながらにやにやとしてしまったことといったら。なんてことをしてくれおった。なんてことをしてくれおった……。この話を通してエッグが正式にダンクの従士になることもあり、その点だけ見ればいい話なんですが、崩れ去ったものがあまりにも大きすぎて慰めにはなりきらないという。やばい。

この一冊の中ではいちばん王族、つまりはターガリエン家の人々が登場する話でもありましたね。くわえて貴族の各諸侯家も。バラシオン家の〈笑う嵐〉は後世のロバート・バラシオンを彷彿とさせる人柄で、血筋ゆえだろうかと思ったり。それはそれとして、この話の時代の前の御世が下劣王とわれるエイゴン四世だったり、話中に登場する王子のエリオンの血の気の多さだったりと、ターガリエン家ろくでもない人物が多いなと思わされる話でもありました。そりゃあ打倒もされますわといいたくなるところなんですが、本編読んでるに最後の王はもっとやばかったみたいなんですよね。エリオンなら、もしかするとあのまま玉座に就いたらそんな感じになるのかもと思わせるところがありましたが。

「誓約の剣」

この一冊でいちばんハッピーエンドっぽかった話ですね。というか、この世界の話としてはこれはもうハッピーエンドといいきってもいいのではないかと思うのですがどうでしょうか。これはもう戦争だと思ったところから万事円く収まる急展開。ダンクが気を失っている間にほとんどすべてが終わってしまったので、彼ともども何が起きたかわからず呆気にとられた感じになるんですが、まあ解決したならいいか的な。ダンクもあとに残る形ではなくとも報われましたし、これ以上なにを望むことがあるでしょうか。……いやだって、この世界のことだから、欲張ったらその瞬間に利子つけて取り返されそうじゃないですか。

〈ブラックファイアの反乱〉が王土に残した影の深さに驚かされる話でもありました。15年もたっているというのに、正当な王に味方した者と反乱軍に味方した者の間で厳然とした戦後の立場の差が生まれている。そして、反乱軍とは自らそう名乗るものではないという、言われてみれば当然の事実が心に深く刺さる。この元反乱軍に所属した者の哀愁がなにより印象深い。

あと、レディー・ローアン・ウェバー、夫に4人も先立たれているという経歴で、〈紅後家蜘蛛〉とかいう毒々しい通り名にもかかわらず、その正体は25歳の可愛らしい少女然とした淑女とかいろいろ反則じゃないでしょうか。

「謎の騎士」

冒頭に書いたどこからかわき上がる高揚感をいちばん感じさせてくれたのはこの話。後世においてはひとつめの話と比べると歴史に埋没していってしまう話なのではないかと思うのですが、その背景にわたる話の規模、後世につながる影響を考えればいちばん大きな話だったんですよね。そんな危険な事態が進行しつつあるその渦中にダンクとエッグがひょっこり乗りこんでしまい……という、ある種ユーモラスな状況でありながら、決してコメディではないこの世界の物語としては洒落にならない大立ち回りが演じられることになるという。そんな、当事者のだれにとってもどうしてこうなったというしかないだろう展開で、けれどそんな中に下々の放浪騎士であるダンクの視点からはなかなか見えない上流階級の人々の思考が見えてくる。そうしてみると、いずれ本当にそんな世界にダンクが立ち入ることになる日がくるのかと、あわよくばの期待がふくらんでしまうのを禁じえないんですよね。

その一方で、おそらく『氷と炎の歌』シリーズの初心者の方が理解しづらい部分があるとしたらこの話だろうなとも思います。前の話と同じく〈ブラックファイアの反乱〉の影が絡んでくるんですが、本編第五部の訳者あとがきでもふれられていた本編とのつながりがここで明らかになりますし、〈血斑鴉〉の不気味なまでの暗躍ぶりは本編におけるあのキャラと同じ秘密を抱えているものと推測できますし。この辺はもう、気になる方は本編も読んでくださいとしかいえないところですね。

〈ブラックファイアの反乱〉関連についてもう少し。一方の雄であったデイモン・ブラックファイアって、そんなに正嫡の太子を廃してまでもと思われるほどに人望ある人物ではあったんだなあと驚かされる。よく考えればそうでもなければ反乱なんて起きないのではありますが。でも、その太子だってのちに有徳王と呼ばれている賢君なわけですよ。それなのに国を割るほどの内乱が起きてしまったというのは、ちょっと信じがたいところですよね。うかがい知ることができるかぎりでは、有徳王たるデイロン2世は武人としてはおそらくそれほどの才能がなかったんだろうというところ。政治面とか人を使う能力とか、そういった武人として以外のところで秀でていたのだろうけれど、太子時代にそれが世に知られることはなかったということなのではないか。そう考えると、ぱっとしない太子に対して名のある武人たちに慕われる異母弟という危険な構図が浮かび上がる。まあ、最後の一押しをしたのはエイゴン下劣王らしいので、やっぱり末期のターガリエン王家はろくでもないというところで話が落ちるのですが。


訳者あとがきがないのがやや物足りないですが、それについては先月発売のS-Fマガジン2月号もしくはcakesにて読むことができるので、自分のようにそちらも楽しみにしていた方はぜひ。

あとそういえば、この本からはすこし逸れるんですが、この感想を書くために本編の付録の年表を見返してたら、後の代の王様があの人物になってて特大の驚きを得た次第。そう思うと、この外伝シリーズの話も、印象が変わってくるところがあるような、ないような。いずれにせよ、やっぱりこのシリーズのつづきも出してほしいと思ってしまうところです。


そんな感じで、期待通りに楽しめる話ばかりで、たいへん満足のいく一冊でした。本編第6部はあいかわらずいつ出るかはわかりませんが、出れば面白いのはわかりきっているので、作者には気の済むまで作業を続けてほしいところです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 21:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月15日

2016年の読書まとめ

2016年は180冊。そんなに読んでたんだと自分でも驚いてますが、よくよくふり返ってみれば直近の9〜11月半ばごろまでの全然読めなかった時期が強く記憶に残っているのが大きいだけで、それ以外だとそんなに支障なく読めていた時期のほうが長かったみたいですね。2015年の79冊からは大幅増ですが、むしろこれはこの年が少なすぎたのであって、せいぜいその前の年並みくらいに戻ったというべきでしょうか。

2015年の目標で掲げた「月12冊で年間144冊を目指していきたい」というラインも余裕でクリア。というか、当時の自分はなんでそんなに読めない前提の想定をしていたのかと疑問も感じてしまう次第。その前後のまとめ記事を読み返してみると、歴史系の本への興味が高まっていた様子。そういえばそんなこともあったような……というか直近の9〜11月くらいにもそんなことがあったような……。つくづく進歩のないことで。

2016年のできごとで個人的にいちばんの特筆すべきこととしては、年単位で発生してた世間の新刊とのずれを解消できたことでしょうか。まあ解消できたというか、したという感じですが。ともあれ先ほどから何度もふれてる直近の全然読めなかった時期からの復活を機に、一度読む順番を仕切り直しまして。11月半ばころからは発売からそれほど間を空けることなく新刊を読める状態で再スタートできています。そうしてみて実感できることとしては、Twitter等で話題になっている本のことがよくわかるということですね。あの本たしかに面白かったよねーとか、積んでるあの本評判いいし楽しみだなーとか、個人的には興味惹かれなかったけど話題になってるし気に留めておこうかなとか、いろいろ入ってくる情報に対して当事者的な目線で接していける。ただそれだけのことが楽しいんですよ。新刊から遅れまくってたときなんて、最新の情報はほとんど、どうせ読むのはずっと先のことなんだしと、どうしても冷めた態度になってしまってましたから。読んでないものだろうとなんだろうととにもかくにも「ああ、あれのことね」とイメージしながら情報に接していられる喜びがあります。ただそれにともなって、仕切り直した時期以前に完結しているシリーズの続きを読むめどがまったく立たなくなってしまったんですが、これについてはすこし悩ましいところです。

二番目としては、このブログ的には一番ですが、感想の更新もかなり読了日に近づいてきたこと。現状がだいたい10日とすこしくらいでしょうか。まだ間があるといえばありますが、ブログを読み返すに最長で半年近くもたってから感想を更新してたようなので、それと比べれば個人的には賞賛すべきペースの速めようではないかとも思ったり。いやまあ、そもそもそんなにためこむなという話なんですが。というか、よくもまあそんなに経ってるのに感想書けたもんだと思ったりもしますが、そこはそれでもぱっと浮かぶ印象があるものだけ書いてたんだっけということで。一部のデータが消失してしまったため、だいたい3〜7月に読んだぶんは抜けてしまっていますが、一度書いたら満足してしまうところもあるのでそのままということで。ともあれ、これでラノベの話題がわかるだけでなく、自分からも話題の形成にうっすら関与していくことができればというところ。ひとつ前の記事の「好きなライトノベルを投票しよう!!」への投票もその流れですね。


という感じで、2016年の総括はこのあたりにして、2016年に読んだ中からのお気に入りを。今回もシリーズ単位で14作。半年分くらい読了感想データを失くしていることもあり、いつもに比べて紹介が雑になってる点はお許しを。やっぱりどこかに残しておかないと読んだ内容を忘れてしまうので。順番としては、最高5つ星で上からお気に入り順に。上のほうで書いてきたようなこの年の事情もあり、去年もそうでしたが、2016年内刊行の作品はほとんどありません

[☆☆☆☆☆]やがて君になる(1) / 仲谷鳰  感想
やがて君になる (1) (電撃コミックスNEXT) -
マンガより。恋する心が自分に訪れないことを悩む主人公と、そんな彼女にきらきらとした感情を向ける先輩と。なまじ最初に出会ったときは似た者同士だっただけに、ひとり特別な気持ちを抱くようになった先輩に嫉妬にも似た感情がゆれ動く。それがたまらなく愛おしい。そんな百合マンガ。お気に入りの筆頭がマンガなのはラノベ読み的にどうなのかと思わなくもないですが、実際そうなのでしかたがないのです。

[☆☆☆☆☆]年刊日本SF傑作選 さよならの儀式  感想
さよならの儀式 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫) -
国内SFより。SF入門におすすめの、珠玉の短編集。その2013年版。SFとしてのアイディアを傑作にまで高めるみごとな描写力の話に読みいる。特に冲方丁のごった煮でパンクな世界観は圧巻。

[☆☆☆☆]ドラゴンの塔(上)魔女の娘・(下)森の秘密 / ナオミ・ノヴィク  感想
ドラゴンの塔 上巻 魔女の娘 -  ドラゴンの塔 下巻 森の秘密 -
海外ファンタジーより。ただの村娘として生まれた少女が、魔法の才能に目覚めて王族との関係を持つまでになり、しかし最終的には魔女としての密やかな道を歩むにいたる、その起伏に富んだ物語が胸を打つ。領主に選ばれるはずが主人公にその座を奪われる形になった親友の少女とのその後も変わらぬ友情、助け合う関係もとてもいいものでした。

[☆☆☆☆]オーバーロード(5)王国の漢たち(上) 〜 (7)大墳墓の侵入者  / 丸山くがね  6巻感想
オーバーロード5 王国の漢たち [上] -  オーバーロード6 王国の漢たち[下] -  オーバーロード7 大墳墓の侵入者 -
ライトノベルより。好きな人を好きな状態のまま自分のものにするためならなんでもするというほどに、頭脳と権力を駆使して一人の青年を囲い込もうとするラナー様の異常な愛情が素晴らしい。クライム君には何も知らないまま、強く生きてほしいですね。

[☆☆☆☆]天冥の標(7)新世界ハーブC 〜 (8)ジャイアント・アーク(1) / 小川一水  7巻感想8巻PART1感想消失
天冥の標Z -  天冥の標8 ジャイアント・アークPART1 -
国内SFより。6巻の地獄絵図から、希望が見えるかと思いきやまるで見えてこない閉塞感にうめき声がもれてきそうな傑作SFシリーズ。8巻のPART1で時系列が1巻に追いついてまさにこれからというところなんですが、やっぱりもうこの人類は詰んでるような気がしてならないおそろしさ。イサリの健気さはそんな中で貴重な清涼剤と言いたいところなんですが、それすらも有終の美という言葉すら思い浮かんでくるからたまりませんね。

[☆☆☆☆]ティアリングの女王 上・下 / エリカ・ジョハンセン  上巻感想下巻感想
ティアリングの女王 (上) (ハヤカワ文庫FT) -  ティアリングの女王 (下) (ハヤカワ文庫FT) -
海外ファンタジーより。母の死により新たに即位することになった若き女王。経験は圧倒的に足りず、人間的にも未熟なところを抱えていながらも、教えこまれた女王としての責務を胸に危険もかえりみず突き進む信念の猪突さがさわやかな心地を与えてくれる。
邦訳2作目はまだ出てないようなんですが、本国で出た最後の3作目がそれまでと比べて評判かなり悪いみたいで、つづきを期待していいのか、このままいい作品だったという記憶だけ残しておいたほうがいいのか、悩ましいところです。

[☆☆☆☆]エスケヱプ・スピヰド(5) 〜 (6) / 九岡望  5巻感想6巻感想
エスケヱプ・スピヰド 伍 (電撃文庫) -  エスケヱプ・スピヰド 六 (電撃文庫) -
ライトノベルより。最終決戦に向けて、これでもかと因縁の糸を張り巡らせるお膳立ての数々。ついに戦端が開かれたときの弾けるさまざまな思い。その一つ一つが胸に迫るものがあるんですよね。

[☆☆☆☆]りゅうおうのおしごと! / 白鳥士郎  感想
りゅうおうのおしごと! (GA文庫) -
ライトノベルより。師匠と過ごしているときの可愛らしさが一転して真剣そのものな表情に変わるギャップ。えげつないほどの真剣勝負によってはっきりとわかってくる才能の片鱗。どこまで見せてくれるのかと、知れば知るほど期待を抱かせてくれるお弟子さんで。

[☆☆☆☆]クシエルの使徒(1)深紅の衣 / ジャクリーン・ケアリー  感想消失
クシエルの使徒〈1〉深紅の衣 (ハヤカワ文庫FT) -
海外ファンタジーより。官能と作りこまれた世界観のファンタジーの組み合わせはやっぱり素晴らしいですね。痛みを快感に変換してしまう被虐体質のフェードルが、一難去って、けれど安穏としてはいられずにまた夜の世界の妖しさと陰謀の世界の危うさに足を踏み入れていくのがとてもはらはらとさせられる面白さ。

[☆☆☆☆]折れた竜骨 / 米澤穂信  感想消失
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) -
国内ミステリーより。魔法の存在する世界で論理を組み立て犯人を突き止めていく面白さ。魔法の存在を当たり前のものとして、けれど魔法を使わない場合も当然考慮に入れてという、ファンタジー世界ならではの描写がとてもよかったですね。犯人が明らかになった瞬間のやられたという感覚もたまらない。こういう話ならミステリーも悪くないと思わされた一冊。
ただ、少なくとも同作者でファンタジー世界の話はこれしかないみたいなんですよね。

[☆☆☆☆]海色のANGEL(1)ルーナとノア / 池田美代子  感想
海色のANGEL 1 ルーナとノア (講談社青い鳥文庫) -
ライトノベルより。容姿はそっくりだけど性格が反対の二人の人生が交わりかけたところで一気に交錯して通りすぎてしまう急展開。その少女に課すには厳しい運命に、つづきが気になります。

[☆☆☆☆]盟約のリヴァイアサン(4) 〜 (5) / 丈月城  5巻感想
盟約のリヴァイアサン IV<盟約のリヴァイアサン> (MF文庫J) -  盟約のリヴァイアサン V<盟約のリヴァイアサン> (MF文庫J) -
ライトノベルより。やっぱりこの作者さんのハーレム形成過程の描き方はとても好きですね。

[☆☆☆☆]ゲーマーズ! 雨野景太と青春コンティニュー  感想
ゲーマーズ! 雨野景太と青春コンティニュー<ゲーマーズ!> (富士見ファンタジア文庫) -
ライトノベルより。すっきりした人間関係からはじまって、あれよあれよという間に誤解が積み重なって複雑にねじれた構図ができあがっていくという、わかっていても笑わずにはいられない学園コメディ。

[☆☆☆☆]剣刻の銀乙女(4) 〜 (5) / 手島史詞  4巻感想消失
剣刻の銀乙女: 4 (一迅社文庫) -  剣刻の銀乙女5 (一迅社文庫) -
ライトノベルより。ルチルとエステルの、ヒロイン同士の関係がいいんですよね。互いを認め合って、主人公を通じた関係の外でも友情のような信頼関係が育っているのがうかがえる。これは百合でしょうか? いいえ、主人公も加えたハーレム関係の一角です。


以上です。感想が残っていないために読了直後は高評価をしていたはずなのにほとんど印象に残ってなくて見送ったタイトルもありますが、ひとまずこんなところで。

だいたい半分が非ライトノベル作品なのは近年の傾向通り。そのなかでもファンタジーとそれ以外が半々くらいなのは少し意外でしたが、ファンタジー以外のものは本当に面白そうだと思ったものしか手を出していないので、打率がいいのは当然といえば当然でしょうか。ライトノベル作品に関していえば、少女系の作品が一つもないのが物足りないところ。完結が早い作品が多いこともあって、無理やり新刊に追いつかせるまではあまり量をこなせていなかった影響かと思います。2017年はここを増やしていきたいですね。

同じく増やしていきたいところとしては、児童書もあげておきたいところ。児童書にラノベ読みに勧めれそうな作品を見つけるたびに、海外ファンタジーを最終到達点にして、児童書からライトノベルを経由してそこに到達するコースが描けるのではないかという希望的観測をふくらませている今日この頃でして。その補強のためにも児童書作品のことをもっと知りたいと思っていたり。というか、個人的に児童書でも楽しめるものがあるとわかってきて興味を持ちはじめたところともいえるのですが。


そんなこんなで、最後に2017年の目標を。

まず冊数に関してですが、言うだけなら1日1冊読めたらなーと言いたかったりもするんですが、さすがにそれが無理なのはわかりきっているので、月あたり20冊で1年では240冊くらいを目標にするのが現実的なところでしょうか。毎年夏から秋にかけてペースを持ち崩すことが多いので実現できるかはわかりませんが、それがなければじゅうぶん可能な数ではあるということで。それに、1日1冊を完全にあきらめるつもりもなくて。読んでる本は、いまもまとめでカウントしている小説だけではないんですが、それも含めれば達成不可能ではないのではとも思っていたり。マンガとかありますし。最近、百合が気になってるんですよね。

それと、さっきも書きましたが、海外ファンタジーおよびそういった作風のファンタジーを推していきたいなと。ライトノベルジャンルにおいて、ファンタジーはそれこそあふれかえってるわけではありますが、でもそれはあくまでもライトノベルジャンル内においての話であって。そこからはずれるとあんまり個人的に面白そうなファンタジーって見つからないんですよね。けど見つけると好みに合うものが案外多かったりするから、というよりいちばんのお気に入りの作品が見つかるのがジャンルの外だったりするから、詳しい人にどこをどう探せばいいのか教えてほしいというか、その代わりこちらからもいい作品があったら紹介しますんで的な、そんな感じのあれです。一応、現状の捜索範囲は海外ファンタジー、児童書、あとこれはまだ完全にこれからになりますがWeb小説というあたりを予定してます。それでどの程度いいものが見つかるか。

ともあれこんなところで。2016年ふりかえりと2017年の抱負はおしまいです。今年もいい作品にたくさん出会えることを祈りつつ。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 00:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書まとめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月14日

「好きなライトノベルを投票しよう!! 2016年下期」に投票します

まだいくつか、読んで面白ければ投票したい本はあるんですが、そろそろタイムアップということで、このあたりで投票します。

それにしても、この企画に投票するのって本当に久しぶりな気がするけどいつ以来なんだろうかと調べてみたら、なんと2011年下半期以来でした。実に5年ぶり。そんなに長いあいだ新刊から遅れを取っていたのかと遠い目をしたくもなってきますが、ともあれ投票です。

11月半ば以降に発売したシリーズ(の最初の1,2冊)しか読めていないとはいえ、読んだ中からどれを選ぼうかという作業はそれ自体がとても楽しいものでして。そんな中から選び出したるは以下の本。

■なんちゃってシンデレラ 王宮陰謀編  旦那様の専属お菓子係、はじめました。 / 汐邑雛 (ビーズログ文庫)
なんちゃってシンデレラ 王宮陰謀編 旦那様の専属お菓子係、はじめました。 (ビーズログ文庫) -
【16下期ラノベ投票/9784047343276】
シリーズ2冊目。主人公視点では最初からずっとそんな感じだったために過保護ぎみなのが普通なのかと思いきや、ほかのキャラの視点で見るとわかる人にはわかる溺愛ぶりと判明する甘々な関係の描写がとてもよかったですね。よくよく思い返せばもとからそんなだったような気もするんですけど、いやでもあれくらいは普通なのでは、とか感覚がおかしくなってくるナディル殿下とアルティリエのやりとりに幸せな気分にさせられます。そんな感じのことをもう少し長めに書いた感想はこちら

以上、1作です。

……ええと、はい、1作です。まことに遺憾ながら1作です。読んだ本を何度見返してみてもこれ以上出てきませんでした。

まじか…………。

久しぶりの投票が1作だけってあまり格好がつきませんが、かくなる上はいたしかたなし。もうひとつだけ、『愛玩姫の調教』も候補として考えはしたんですが、自分でもストーリーで評価してるのかえろで評価してるのか微妙な作品ではあるので、規定いっぱいに10タイトルあげてる中にしれっと紛れこませるならともかく、2タイトルのうちの片方がそれというのはちょっと……と考えたすえに見送ることに。

その辺も含めて、次回はもっと期間内の本をたくさん読んで、枠いっぱい埋めれるように面白い作品を見つけておきたいです。
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2017年01月12日

やがて君になる(2)

やがて君になる (2) (電撃コミックスNEXT) -
やがて君になる (2) (電撃コミックスNEXT) -

そうなるかー……いやそうなりますねという2巻目。なにを言ってるかわからない感じだけど、実際難しい問題ではあります。

誰かを特別に思う気持ちがわからない主人公の小糸侑と、そんな彼女と同じく「好きって言われてドキドキしたことない」という生徒会長の七海燈子。似た者同士だと思っていたのに、燈子が侑への好意を抱いてしまったことから、半ば流されるように付き合いをはじめたのが侑だったわけで。基本的には二人の気持ちはかみ合わないんですよね。燈子のほうから一方的に好意を与えるばかりで。侑から返せる気持ちは心のどこを探してもなくて、せいぜい仲のよい先輩後輩関係としてのサポート程度。燈子のまぶしいほどの気持ちを見せつけられるほどに、自分も彼女のように誰かを好きになれるようになりたいと隠れて心を痛めてる侑とのすれ違いがなんとも切ないですよね。

……という一面もあったんですが、侑のほう、これ、正直もうかなり定義しづらい心理状態になってますよね。完璧な生徒会長だと思われている燈子の弱い一面を知ってるからこそ心配したり、彼女のことを好きになりたいという願いを抱いていたりと、広義の意味ではこれはもう燈子を好きになっているといってもいいのではないでしょうかという。槙くんから二人の関係を聞かれたときの態度なんて、自分のことよりも先輩のことのほうを大切に思う思考の表われのようで、それだけでいいものを見させていただきましたという気分にもなるんですよね。ただ、作中のその場面でも侑が言っているように、「普通」の範疇とも言ってしまえば言えてしまう。恋仲だと思えばそうともとれるし仲のよい先輩後輩だと言われればそうともとれるという、とても微妙な状態なんですよね。

「好き」って、どこからそう呼べる感情なんでしょう? たしかに侑には燈子ほどのきらきらした感情はうかがえないし、特別に思う人に対して心が高鳴るようなことも起きてはいない。けど、誰かを自分のこと以上に心配できるその気持ちは、まぎれもなく好意だと思うんですよ。そこに恋心が絡むか否かは別にしても。むしろこれは、恋や愛に対するタイプの違いなのかもしれないとも思うんですよ。燃えるような恋をする人もいれば、いっしょに過ごす時間がほかのだれよりも心地よくて、それがなにより大切だという人もいる。ドキドキする気持ちがそれを恋だと教えてくれることもあれば、「普通」の好意を積み上げたうえで気づけば総じて「普通」ではなくなっているということもある。いまの侑は、まだ燈子と特別な関係にあるというのは難しいかもしれないけど、いつかそこに届くのは可能だと思うんですよね。ラストの燈子のモノローグが不穏だったけど! めちゃくちゃ不安煽るモノローグだったけど! そこまで結構いい感じの将来予想ができてきてたのに、またすぐに不安にさせてくれることで。まったくもって、一筋縄ではいかない関係ですね。まあ前の巻の情報だけでも、燈子ってなんかしら過去に心の傷を抱えてそうではありましたが……。なかなかこじれることになりそうですね。

その関連で、ではないですが、今後にひと悶着ありそうなのが、侑と副会長の佐伯先輩の関係ですね。1巻でも、燈子が侑にご執心なのを面白くなさそうにしてるところありましたが、今回ひとつふたつ場面をはさむだけでさらっと二人の確執を描きだしててすごいなというかこわいなとも思ったり。とはいえ、侑が入学してくる前までの燈子と佐伯沙弥香の関係って、いまの燈子と侑の関係と似ているところがあるんですよね。ほかの人にはしないような相談を燈子がして、だれよりも燈子のことをよく知っていてと、まるでいまの侑が彼女の場所を奪ってしまったような感があって、それはたしかに面白くないだろうなというところ。とはいえ、侑とのいちばんの違いは燈子に対するスタンスですかね。彼女の場合は信頼と応援がうかがえる。それに対して侑は心配がとにかく先に立つ。この辺は、第一印象に由来するところなのかなと思いますが、なまじ燈子と接してきた年月の違いがあるだけに、結構深刻な対立になりえそうで、これもまた不安をかきたてるところですね。

さて、そんな問題も抱えつつ、生徒会の劇はどうなるのかとか、侑の気持ちはどんな変遷をたどっていくことになるかとか、いろいろ期待しつつ、3巻も楽しみにしたいですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 16:55| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする