2016年09月14日

エスケヱプ・スピヰド(5)

エスケヱプ・スピヰド 伍 (電撃文庫) -
エスケヱプ・スピヰド 伍 (電撃文庫) -

すごい。徐々に明らかになる敵側の面々が、主人公側とことごとく対になるような人物ばかり。一巻からして、過去を背負い、過去を乗り越え、いまを生きようという心情がばしばし伝わってくる話だったけど、ここにきてさらに過去からいまにつづく宿縁めいた対立の構図が見えてくる。その、これでもかどばかりに絡みついた過去からの因縁の、一気に弾け出す瞬間に向けて、ぞくぞくと期待混じりの震えが這い上がってくることといったら。両者の最終的な対決に向けて、どれだけお膳立てするつもりなんですか、この作者さんは。ここまでくるとさすがに並び立てない人たちもいそうで、その結末に至るのがこわくもあるんですが、でもやっぱりその先にどんな未来を見せてくれるんだろうかと期待せずにはいられない。このはりつめていく緊張感、たまりませんね。

あと、鴇子様の対になる存在としていきなり姉上様が登場したことにテンションが上がりまくりですよ。鴇子様って、皇女の記憶を持ったクローン体っていう、わりと属性分類上で扱いの微妙なキャラなんですけど、その姉上様は、これは正真正銘の皇女その人であるわけで。これで何の迷いもなくこの作品を推せるぞと……って、何の話ですか。そうじゃなくて、ここまで皇室が話に関わってくることは特になかったにもかかわらず、ここにきていきなりの登場。それも、敵側にただの一部軍人たちの暴走では片付けられない正当性を与える神輿になれるだけの権威を備えた人物。こうなると、対立の構図としてもいよいよもって白黒はっきりつけないわけにはいかなくなってきますよね。本当に、憎らしいほどの配役でよ。まあ、鴇子様同様の存在である可能性はまだ否定できないのですけど。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 00:52| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月02日

獣の奏者(3)探求編

獣の奏者 3探求編 (講談社文庫) -
獣の奏者 3探求編 (講談社文庫) -

あれほどきれいに片が付いたと見えたにもかかわらずのセィミヤの落ち着かな気な様子は、それだけ見ると首をひねりたくなるようなところでころではあるけど、前回ラストを思い出してみると、実は彼女、役としては主役級でありながら、明かされた真実に関していえば茅の外に近いところにおかれてましたっけ。目の前に動かしがたいまでの事実だけをつきつけられてから十年あまり、ここまで何の説明もなしって、エリンさんや、あんたら鬼かとつっこみたくなったんですが。そのことに疑問も抱いていたハルミヤならまだしも、セィミヤって、神にも等しき王家に生まれたからこそ高潔な心をもって国を治める指導者となろうという思いを心の芯にしてましたからね。それを人の座へと下ろしてやるということは、それはすなわちその芯を抜き取ってしまうということで。臣下たちはそれでも急激な変化を望まず彼女を立てようとしてくれてはいますが、そうはいってもセィミヤとしては何を心の拠り所としていいかわからないところでしょう。シュナンならばあるいは何か代わりになるものを一緒に見つけていくこともできるかと期待もできましたが、なまじ旧来の臣下たちがシュナンに敵意を向けるばかりに宮廷内の仕事ははかどらず。そして彼らがそんな態度をとるのは彼らがセィミヤを敬う気持ちを持ち続けており、シュナンこそは穢れた一族の者でありながら彼女を人の座へと下ろすこととなる変化をもたらした筆頭格と目されているからであり。セィミヤが彼らに率先してシュナンに協力するよう促せばそれである程度うまくいくだろうと頭ではわかっていても、それをすることは自分の立場がそうして引きずり下ろされてしまったことを自ら認めることと同義であり、最後にすがりつくはりぼてさえ失っては、彼女にとって生きている意味さえ見失ってしまうことになりかねないんですよね。それがわさるからこそ、セィミヤは一歩を踏み出すことができずに不安を取り去る救いの手を待つほかなくなっている。本当に、どうしてこんなになるまで放っておいてしまったのか。だから、王獣に可能性を見ればそれに飛びつかずにはいられなくなってしまう。うん。これはもう、前回、雰囲気だけいい感じにしてそれでよしとしてしまったツケの回収に回らなければならなくなった、そういう話でしょう。願わくは、真王の心に長く平安のもたらされんことを。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 19:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年1月の読書まとめ

以下、最終更新3月24日の文章なんで、現状のことを書いてるような部分はそのころのことということで。

1月は10冊。一日辺りの読書ノルマをゆるく復活させてみたところではありますが、成果は出ていると言えるのかどうか。 こちらよりも歴史系の本に対する熱が高まっているこの頃ですが、まあまあこちらもぼちぼち読んでいきたいです。

この月に読んだ中からのお気に入りは1冊。

[☆☆☆☆]天冥の標(7)新世界ハーブC / 小川一水  感想
天冥の標VII 新世界ハーブC (ハヤカワ文庫JA) -
国内SFより。一冊通した面白さというよりはラストで気付かされた事実に対する衝撃で持っていかれた感のある一冊。いやぁ、だって……ねぇ? 未来には希望が溢れてるって、信じたいじゃないですか。ある程度避けがたい問題が見えている近未来ならともかく、人類が宇宙に進出するような遠い未来であればなおさら。それなのに……という。苦しげなうめき声が漏れてしまいそうな読後感。それでもと、希望を願わずにはいられないシリーズです。

ほかに、『最後の魔法使者(1)魔法の使徒(下)』とか『いなくなれ、群青』とかも結構楽しめました。こういう作中の話やキャラクターの雰囲気がいい感じの話はいいですよね。何度か書いてる気がしますが、少し前からこういう作品に小説を読む快さを感じています。

以上、そんなところで。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 19:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書まとめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

いなくなれ、群青

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex) -
いなくなれ、群青 (新潮文庫nex) -

正義感と行動力に溢れる真辺と、彼女の行動に仕方なさそうに、でもそれが当然のように付き合う七草。この二人の関係はよかった。はじめはただの腐れ縁かと思ってたけど、だんだんとそれに加えて七草がそういう真辺のことを大切で、まぶしいくらいに心惹かれる存在だと思っているのがわかってくると、二人のやりとりそのものが快く感じられるようになって。けど、だからこそ、明らかになる真実はやるせなくて、七草の怒りに共感してしまう。たとえ難しいことだとしても、彼の願う通りになってほしいと思ってしまう。結末は、これでよかったのか、どうなのか。よかったんだろうと想像をめぐらせるにとどめるか、シリーズ第二作にも手を伸ばすか。悩ましい。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月01日

後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール

後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール (集英社スーパーダッシュ文庫) -
後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール (集英社スーパーダッシュ文庫) -
なんだよこれ!? やっぱり石川博品はすげえよ。なんでそれを組み合わせようと思ったんだって奇抜な設定を、その奇抜さはそのままに、もっともらしい話を作り上げてきやがる。なんで後宮の話なのに野球なんてしてんのさ。キャラクターたちはまじめに野球してるからそういうもんなんだろうなと思って読み進めるんだけど、ふっと我に帰るとやっぱりなんでこんなところでとツッコミいれたくなってしまう絶妙なあんばいで。野球小説として面白かったかとなると微妙なところだったとは思いますが、次から次へと飛び出す作者らしいかけあいのノリは健在で。それがやっぱり楽しかったんですね。さすがに奇抜な設定を隠しもしないつくりなんで、打ち切られたのもやむをえないかなーとは思いますが、作家のファンとしてはいつも通りに楽しませてくれる話でした。もう一冊出てるみたいなんで、そっちも、いずれ。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:52| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする