2015年08月31日

氷と炎の歌(5)竜との舞踏(1)

竜との舞踏 1 (氷と炎の歌 5) -
竜との舞踏 1 (氷と炎の歌 5) -

デナーリスのドラゴンが、これまで幾度も降りかかる脅威をその圧倒的な力ではね飛ばしてきたドラゴンが、悩みの種としてデナーリスの肩にのしかかりだす。これはもうなんともはや……。もともと、そういう安心できるはずの部分を突き崩されることで、もがき苦しむキャラクターたちに共感しながら読み進めてきたシリーズではありましたが、それでもこれはきつい。めちゃくちゃきつい。ここまでのデナーリス・ターガリエンの歩んできた道というのは、女王として立ち上がって以降、《ドラゴンの母》という、世界でただ一人の存在としての自負に裏打ちされてきた部分が一番大きかったといってもいいくらいだったんですよ。そこに己の利を見出だして都合のいいように利用しようとする輩もいましたが、それらをときにはね除け、ときに呑み込んでいきながら、虚実入り乱れた女王としての力を築き上げてきたのがデナーリスだったんですよ。それが、その中核であり、最も信頼できるしもべだったはずのドラゴンたちが、いまやデナーリスを脅かすようになりだしたんですから。ただでさえ、行く先々、異郷の地に暴風雨のような惨禍をもたらしながら進んできたデナーリスは、各地で生じる軋轢に頭を悩ませていたというのに。それなのに、よりにもよって、このタイミングで、ドラゴンがデナーリスの手にさえ余りだすなんて。これはもう読んでるだけなのにショックを隠しきれませんよ。覇道を歩みだした視点人物として、シリーズで一番気になってる人物なだけになおさら。あとから考えれば、これまでの作風的にもいずれやってくるはずの展開と予想はできたはずなんだけど。おのれジョージ・R・R・マーティン。

ただ、今回表面化したこの問題。いずれ七王国の玉座奪還を目指すデナーリスとしては避けては通れなかった問題だとも思うんですよね。七王国の地でようやく表面化しちゃった日には、どんな暴君としての汚名を被ることになったかわかったものじゃないですから。このミーリーンの地で、今のうちに解決策を見出だしてほしいところ。まあ、そんな悠長なこと言ってられる場合じゃなくなってるのがまた悩ましいんですが。

一番の問題点は、やっぱりデナーリスがすでに零落の身じゃなくなってることですよね。ドラゴンたちに言うことを聞かせられる可能性のある人といえば“母”たるデナーリスをおいて他にいないわけだけど、そのデナーリス自身が台風の目ともいえるほどの一勢力の長になってしまっている以上、危険を犯すことは許されなくて。そうでなくても人間だって餌としてしか見ていないのかもしれないドラゴンたちに、そうそう確信もなく近づくことなんてできるものじゃないですよね。しかしこうなると、メイスター・エイモンがデナーリスと相見えることなく力尽きてしまったのが惜しまれる。彼なら、まさに今必要とされている助言が与えられたかもしれないのに。デナーリスの奮闘に期待したいところですが、情勢は余談を許さないものになってますし、どうなることか。

一方、ウェスタロス大陸の方では、野人たちとの戦いに勝利した後、ジョン・スノウが《冥夜の番人》の総帥としての仕事に取りかかりつつあり。この辺は、第四部のサムウェル・ターリーの視点と重なるところもありながら、サムウェルに断固とした指令を下す程には総帥らしさを身に付けているようでありながら、ジョンの視点ではやはり悩める若人なのであり。「子どもの心は殺しなさい」というのは、人の命を預かる者に対してはまことにもって有益な言葉ではあるものの、まだ二十歳にもならない少年(だよね?)にとっては難しい献辞ではあるでしょうね。それでも、ジョンは今のところよくやってるというか、以前から厄介な手合いになりそうだったジャノス・スリントに対する処置は、総帥着任後それほどまもない一件として、団内に与える効果もあって実に痛快でしたよ。とはいえ、こちらも北から迫ってくるであろう脅威に対しては備えが十分というにはほど遠いのが現状であり。自己の方針を推し進めるジョンが次の壁にぶつかるのはそう遠いことでもなさそうな。

面白かったのは、ジョンがスタニス・バラシオンにした、北部勢力糾合のための献策。あの場ですらすらとあんな提案ができたというのは、スターク家の棟梁として立つつもりはないと口では言ってますが、もしそうした場合はどうするかと、考えてなかったわけではないということですよね。この辺は、手に入れようと思えばできなくもないだろうものを、この年の人間がすんなりとあきらめれるものかというような、そんな背反する心情をうかがわせてくれてよかったですね。

あとは、某章で登場したとある人物。目先の野心に目がくらませた末に、見苦しい最期を見せてくれて好感度最悪だったあの男。死んでてほしかったのに生きてやがったのかよと、その人物のことだとわかったときには思ったのもつかのま。読み進めていくと、わかる前からの描写でもそうだったんですが、その後の境遇がめちゃくちゃ悪いんですよね。バチのひとつも当たってほしいとは思ってましたが、誰がそこまでやれと言ったかとつっこまずにはいられないくらいのみじめな扱いに、哀れをもよおされてしまいましたですよ。さすがにあそこまでされてるとね、早く楽にしてあげてと、思っちゃいますよね。また調子に乗らせるのはノーセンキューですが。

という感じで、物語の内容についてはやっぱりすごくよくって、次の巻ではその表紙絵にも描かれてるブランドン・スタークの飛躍に期待ということで。

以下は、文章に対する愚痴を。

どうも、読んでて違和感を禁じえないんてすよ。こんな読み味だったけと、首をひねらずにいられなくなるというか。以前に読んだときの気分をそのまま持ち越してこれなかったというのもあったんですが、それ以上に、訳者さんの交代の影響が大きいように思えてなりません。改訂新版のあとがきにもあったように、引き継がれる固有名詞については、たしかに統一がしてありました。が、それ以外の一般的な単語や台詞回し等の全体的な文章において、明らかに読み味が違っているんですよ。第四部を読んだときには、いずれ慣れていくだろうと楽観的に考えていましたが、今回、時間をおいて読んで、その違和感は薄れるどころかさらにはっきりしてきたように思います。第三部までで自分の中に構築されてきたイメージ、作中世界の雰囲気があるだけに、この違和感はどうしても純粋に物語を楽しむ上で阻害要因になってしまっています。訳者交代の難しさだとは思いますが、この点については不満を述べておきたいです。まあ、純粋な第三部までの訳がよかったかというとそういうわけでもなく(というか改訂新版でしか読んでないので純粋な岡部氏訳は知らないのですが)、ともあれ、固有名詞を置き換えた(他にも変更点があるかどうかは不明)改訂新版としての第三部までの翻訳文はすごくよかったので、個人的にはあれが理想ですと付け加えさせてください。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 19:45| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月25日

2015年6月の読書まとめ

6月は3冊。これは自称ラノベ読みとして、わりと切腹ものの数ではないかと思うのですがどうでしょうか。まあ、どうでしょうかもなにも、逆立ちしたってこの数字は変わらないんですけどね。しかも、これを書いている現在、8月も下手をすると似たような感じになりそうでこわい。この6月については、中旬くらいまでは5月分に書いたとおりに忙しかったが理由になるはずですが、じゃあそれも一段落したはずの下旬はとなると、どうも久しぶりに読んだ『氷と炎の歌』の読み味にとまどって、なかなかペースが出なかった記憶。その気分転換にCK2とかの時間の吸いとられるゲームをやったりもしてたら余計に本を読む時間が減ってしまったという。そろそろ読んだ当時の印象があやしくなってきてる本も出てきているので、ささっと感想を書いていかねばなというところ。

6月のお気に入りはなし。お気に入りになるくらいの本がないと読書にあまり満足感が得られくて物足りないところではあるんですが、やっぱり数を読まないことにはどうしようもない問題であり。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 18:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書まとめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする