2015年06月30日

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン(4)

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (4) (電撃文庫) -
ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (4) (電撃文庫) -

なんだろう。ここに来て急に面白くなったように思う。しかも、今年読んできた中でも指折りなクラスで。理由はよくわからないんだけど、読んでるうちに自分の中でどんどん期待値が高まってきてるのを感じます。もともと一作目、二作目は気に入ってた作者さんではあったんですが、三作目もここに来て俄然気になってきましたよ。しかも、期待する理由は、一、二作目とは違うように感じられるんですよ。以前の作品は設定の面白さもさることながら主人公のキャラクターがかなり好みで、その辺りを主に楽しんでたはずなんですよ。けど、この作品、この巻の場合だと、そのいずれでもない。純粋にお話を楽しめているんですね。それも、ストーリーを楽しんでるというよりも、漠然とした言い方なんですが、小説を読むこと自体を楽しんでいるというか。特に、今回の話は章ごとに時間も場所も切れ目があって、けど話は一つ一つがそれで完結してる。いわばいくつかの短編ないし中編での連続で構成されているような巻だったんですが、そのどれもこれもが読み終わったときに満足感といくばくかの余韻を残してくれる素晴らしい話だったんですよ。第一章を読んだときに高揚感を抱き、最後の章を読み終えたときには心地よさとともに息をつける。これはもう、この巻だけですでに評価されるべき良作だと思いますよ。読んだ感覚としては、一冊で二、三冊分くらいの内容を味わえたような満足感。シリーズの展開としてもそれくらいの内容を一気に凝縮したんじゃないかと思えるくらいの読みごたえ。前の巻から5ヶ月と、ラノベとしてはやや間が空いてる方とも言えるんですが、この内容なら全然問題ないというか。むしろ、早いくらいなんじゃないかとも思える充実ぶり。ちょっと、この作者さんは改めて注目必至なんじゃないかと思えてきました。次の巻も期待しないわけにはいきませんよ。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 15:29| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

入れ代わりのその果てに(4)

入れ代わりのその果てに〈4〉 (レジーナブックス) -
入れ代わりのその果てに〈4〉 (レジーナブックス) -

説教系女子がすっかり入れ替わり先の体の持ち主のように、周りの助けを得られてこそのキャラになっておる。ただ、それも仕方ないというか。現代日本で身に付けたビジネスマナーの知識なんて、中世ヨーロッパ風の王族社会の中では細々としたところまで対応できるものじゃないですからね。そこは異文化の地で波風立てないようにしなければいけない立場ならではの対処ということで。でも、異世界に行くって、結構こういうことなんじゃないかとも思ったり。同じ現代日本の中でさえ、ところ変われば常識も違ってくることがありますし。

そして、だからこそ、さりげなく助けてくれる人のありがたさも身に染みるものがあるわけで。アルフォートさんのこの辺の気遣いは、なんというかうまい。実は不快な目に遭わないようにあれこれ気を配っているみたいなんだけど、そのアプローチがこちらにそれと思わせないくらいにさりげなくて。主人公もいろいろと気をとられていることはあるんですが、はっと気付いてよくよく考えてみて初めてそれらしきところが思いあたる程度なんだからもうすごい。一応形式上は夫婦になってるんだからその手の気遣いは当然かと思いきや、普段は人前で仲の悪くない新婚夫婦として違和感ない程度の振る舞いしかしないようでありながら、あちらでもこちらでまるで温室に入れられているかのように大切にされているらしい。そうとわかったときのふわっとした感覚はなかなか不思議な味わいでしたね。しかしそうなると、気になってくるのはそのアルフォートの内心。目の前で危険にさらされそうになると当然助けてくれるし、どうも色々気を遣われてもいるらしい。それなのに、表立って主人公への気持ちを表すことはまずなくて。主人公の方の都合もあれ、どうにも仮面夫婦のような印象を受けてしまう。まして、アルフォートには意中のお相手がいるという噂もある。主人公が最終的に元の世界に帰ることになるならそれでもいいんでしょうけど、だんだん今いる世界に愛着やしがらみやらを感じるようになってきていることですし、その辺り気になるところですよね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 15:24| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

文学少女、夢うつつ  (作者:ヘーゼンスキー)

(リンク先R18)http://novel18.syosetu.com/n9191ce/
(改題改稿予定があるらしいですが、記事投稿時点の情報で書いてます)

またか! またこんな終わり方なのか! またしてもやってくれおった……ちくしょうめ!

『トロイの言葉』の作者さんによる次なる作品。今回の話も趣向は催眠……だったんだけど、主人公の方からヒロインにそれを施してた前回と違って、今回はもともと意識を飛ばしちゃうヒロインの体質を利用して欲望の捌け口とさせてもらう話。催眠という時点でヒロインの意思なんてお構いなしではあるんですが、それをあまり感じさせないほどに意識改変を進めていた前回と比べて、今回はヒロインの体質につけいって暗示を広げていく設定だったので凌辱してる感がかなり強い。主人公の感情もヒロインに対する好意よりも欲望が勝って見えるところとかそんな感じで。

ただ、それでもはずさないのは、行為中のヒロインが基本的に無反応であること。極度の集中からトランス状態に入るヒロインなのでその間に何をしても気付かないし、そもそも反応らしい反応を示さない。それをいいことにめいっぱいその体を堪能する主人公の様子などは、前作から読んでたこともあってさすがと思わせてくるフェチな行為の数々でした。とはいえ、ヒロインが途中で気絶しようがかまわない、乱暴なばかりの行為は、個人的な好みからはずれてたかなあとも。

それでも、前作はよかったしと思って読み進めていたら、今回もまあ……やってくれおったのですよ。というか、今回のラストは前作にもまして衝撃的だったというか。読み終えたところでどんな反応していいのかわからなくて、しばらく頭混乱してましたからね。いい話だったと素直に受け入れているところはあったんですが、それと同時にふざけんなと読んでたスマートフォンを投げつけてしまいたい気持ちもこみあげてきて。その心理をどう表したらいいのかわからなくて、その場で固まっちゃいましたもん。

その最大の理由は、主人公の自分勝手さにあったといえるでしょうね。前作でもヒロインの心理状態を改変してましたが、あちらはまだ歪んでいながらも自分たちの幸せの形を考えてはいたんですよ。けど、今回の主人公にはそれすらなかったように思うんですよ。自分のことならなんとなくでも考えるんだけど、ヒロインについてはというと、一切といっていいほどない。自分が目指す方向性にヒロインは役立ってくれるから暗示を広げて手伝ってもらうんだけど、それがヒロインの望むことであろうとなかろうと関係なし。それどころかヒロインの望みなんて省みることもなく、それが当然のことであるように思いこませ、とにかく自分の都合のいいように利用し続ける。途中から二人目のヒロインも登場するけど、そちらも同様に利用するだけ利用する。主人公に関わったヒロインたちは、これでもかとばかりに人生をねじ曲げられちゃってるんですよ。その上で、なんですよ。そうしてやってきたのがあのラストだったんですよ。もうね、他人の人生めちゃくちゃにしておいて、一人だけ希望あるように思わせる終わり方をするなんて。そんな物語、許されていいのかって、思ってもしまったんですよ。

けど、しばらくして冷静になってから考えてみると、ありだとしか思えないんですよ。上に書いたような、ふざけんなって気持ちは消えないんですが、それでも、読了直後の本当に一番に浮かんだ感想は「いい話だった」なんですよ。軽く感動しかけるくらいの明るい終わり方だったんですよ。そう思わされた時点でもう「やられた」と言うほかないんじゃないでしょうか。作者の意図はどうあれ、これほどに感情を動かされたからにはこちらの負けだと思うんですよ。また、それほどの感情を起こさせるというのは、それこそが物語の力なんだとも思うんですよね。いやはや、これまた印象に残る作品でした。

活動報告でのあとがきを読んでいても、催眠をかけつづけるとどこかしら無理が出るはずという認識が作者さんの中にはあるそうで。だとすると、前作ともどもこのゆがんだ幸せの結末は、なかなかに感じ入るもののある話ではありました。

ともあれ次回作も期待していいのでしょうか この印象がうすれた頃に読んだ方がいいような気もしますが……。どうしましょうね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 15:16| Comment(0) | TrackBack(0) | Web小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする