2019年06月13日

あの人の胃には僕が足りない(3)

あの人の胃には僕が足りない(2) (モーニングコミックス)
あの人の胃には僕が足りない(2) (モーニングコミックス)

『あの人の胃には僕が足りない(2)』(チョモラン)|講談社コミックプラス

そうですよ! まごうことなきラブコメですよ!(某セリフに対して)

好かれたいと思う男の子がいるものの、人間のフリをしているにすぎないワタリだからこそ、人間的でないことをおそれずにはいられない。人間から見ておかしなところを知られて嫌悪感を抱かれてしまうことをおそれずにはいられない。

けれど、そんな不安を抱える満腹先輩の様子は、好きな男の子に嫌われてたくないと願うかわいい女の子の姿でしかなくて。それどころか、恋する少年フィルターのかかりまくった舟次くんからしてみれば、そんな満腹先輩の姿は、ドキドキしすぎてどうにかなってしまいそうなほどに、余計に好きな気持ちが高まってわけがわからなくなってしまいそうなほどにかわいい姿でしかないんですよね。

だから、不安を抱える満腹先輩に、思いっきり照れながら自分の気持ちも添えて、おかしくなんかないとまっすぐに伝えずにはいられない気持ちになるんですよねという。そして、そんな舟次くんだからこそ、人間のなかで生きるワタリである満腹先輩も心を許したふにゃりとした笑顔を見せることができる。

このふたりだからこその、好きな気持ちが溢れだして止まらなくなってくるような素敵な関係。すごくいい関係ですよね。大好きです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:10| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月11日

オペラ座の恋人(5)・(6)

オペラ座の恋人(5) (オパール文庫) オペラ座の恋人(6) (オパール文庫)
オペラ座の恋人(5) (オパール文庫) オペラ座の恋人(6) (オパール文庫)

オペラ座の恋人D |オパール文庫
オペラ座の恋人E |オパール文庫

よかった……とは言えない部分も多々あったけど、でもひと言で表すならこの言葉になる。よかった……。

落ち着くべきところに落ち着くところを見届けられた安堵感。けれどそれ以上に、見違えるほどに立派になった結花の成長を思い返す感慨に。

思えば、クラシック音楽が好きすぎるだけで、自分に誇れるところがあるわけでもなく、友人らしい友人も大学に一人しかいなかった女の子が。ベルリンの歌劇場で果たした運命の出会いをきっかけにして、どれほど大人の階段をのぼっていったことか。

もともとクラシックつながりで覚えのあったドイツ語は長期休みに連れまわされるようにヨーロッパの各地をめぐるなかですっかり実用レベルになり、英語や礼儀作法もいろんな上流階級の人たちと接することで自然と使いこなせる水準で身についていき、それに関連してビジネス関連での興味や知識の幅も広がって、そしてなにより女性としての美しさも磨き上げられていって。

シリーズ後半と初期の頃を比べれば、もう違いは歴然ですよ。とりたてて言うところのなかった垢ぬけない女の子から、スキル面でも人脈面でも引く手あまたで目をひかれる魅力的な女性へと。その間、わずかに2〜3年。それだけあれば変化には十分ともいえるんでしょうけど、それでも大学生という可能性に満ちた期間を思わせてくれる見事なまでの成長ぶりですよね。こういう話は本当に胸をしめつけられるような、それでいて憧憬を抱かされずにはいられないような魅力で、心をわしづかみにされてしまうものがあります。

3・4巻からひきつづきの、結花の心の深い部分に巣くっていた恐れとの対峙については、微妙に解決してないような気がしてならないんですが、それでも結花本人が出した答えは、そうであるからこそ祝福せずにはいられない尊さがあって、いつまでもふたりの関係がつづくことを願わずにはいられない気持ちにさせてくれるものがあります。それに、何もかもを相手に預けきったペットと飼い主の関係(だけ)ではなく結花自身も積極的になるからこそ選び出すことができたふたりの形だと思うと、このふたりの夫婦の姿というのは、もう本当に、どこまでも祝福したい気持ちにさせてくれるんですよね。

愛する人ができて、賑やかな友人たちに囲まれて、幸せな家族と出会えて、一生ものの決意をして、一生ものの枷で縛りつけられて。そうして最後の最後にしみじみと幸せを実感する結花の姿が見れたのは、シリーズの結末としてなによりうれしかったです。

そしてそうなってもまだ貴臣の前で初々しく赤面したりする姿はあいかわらず男をそそる危うい魅力に満ちていて。この5・6巻だとふたりとも多忙でなかなか顔も合わせられない時間がつづいたりしていたことから欲求不満を募らせたり、会えた時間にその気持ちをぶつけるように互いに貪欲に体を求めたり、結婚するとなれば避妊も解禁で子どもができても構わない、むしろ早くにほしいくらいだよねな感じの浮かれたような行為の数々は、やっぱりとてもエロティックだったと思います。

結花本人としては、貴臣を中心とした周りに流されるようにして過ごしてきた結果。なので、本人としては自分がすごい人であるなんて(この期に及んでなお)微塵も思ってないんだけど、結婚式に集まったメンバーがもう本当にすごいんですよ。本人にはどれだけ自覚がないとしても、もうとっくに平凡どころではないですよね。

結花以外では、やっぱり絵里とラリーのカップルがよかったですね。ラリーからの公開プロポーズに取り乱す姿がすごくかわいかったです。エリー、お幸せに……。

それと、貴臣の姉の千煌さんも。貴臣が頭の上がらない存在として、基本的にどこでも我が物顔で振る舞う貴臣がやりこめられる姉弟のやりとりはそれだけでいいものでしたが、それにくわえて弟同様に結花の庇護者を自負する姿がとても頼れる女性ではありました。最終的には、結花とも家族としての絆で結ばれて、幸せの形をより広げていくことになって。この辺は本当にできすぎなくらいではあったんだけど、でもやっぱり幸せに満ちあふれた家族の姿というのは見ているだけでよろこばしいものがあります。

本当に、思えば遠くへ来たもので。全6巻、あとがきによると3840ページ。書籍のティーンズラブ小説としては異例の大作ながら、それでもあちらこちらとまだもっと見てみたかった場面がいくつも思い浮かんでくる。それほどにどっぷりと浸れる物語でした。

平凡な女子大生だった結花の、めまぐるしいまでの三年間の物語。素晴らしいシリーズでした。このシリーズを読んでいたここ二週間ほどはずっと、幸せな微睡みのなかで過ごしているような、幸せな読書の時間でした(読み終わった直後は頭がぼーっとしっぱなしで、なんだかまだ地に足がついてない感じもしますが……)。

素晴らしい物語をつむいでくださった作者さんに心よりの感謝を。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:49| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月08日

十三歳の誕生日、皇后になりました。

十三歳の誕生日、皇后になりました。 (ビーズログ文庫)
十三歳の誕生日、皇后になりました。 (ビーズログ文庫)

十三歳の誕生日、皇后になりました。 | 書籍 | ビーズログ文庫

シリーズ本編ともいえる『茉莉花官吏伝』のほうは未読。とはいえこちらはこちらで独立した話なので問題なく楽しめました。

十三歳の誕生日、莉杏は皇帝に後宮入りを願い出にきたはずが、現れたのは皇位を乗っ取ったばかりの皇子・暁月という男で、という話。

わけもわからないうちに皇后として簒奪の共犯者のようにされてしまった流れを思えば、いかにも暁月が悪人のようなんだけど、莉杏の
目を通してみると、露悪的ではあるものの悪人には映らないんですよね。それどころか、理解者に乏しいなかで誰よりも真剣に国の行く末を案じている人物ではあるようで。究極の悪行である簒奪も、そこに起因するものであるらしい。

らしいというのは、この話の主人公である莉杏がまだ十三歳になったばかりの少女であることもあって、そこまで権力闘争の深層を理解してはいない語り口になっているからであって。暁月をはじめとした周囲もあえて子どもにそんな汚い世界を見せないようにしてる部分もあるんでしょうけど。

それに象徴されるように、莉杏の長所は利口さではない。むしろ彼女の美点は、先入観を抱けるほどの知識もないことからくる素直さであって。皇后の夜の務めは文字通りにいっしょに寝ることであるなんていわれて、気合い十分で湯たんぽ代わりにされてる様子なんて、悪意からどこまでも距離を置いていさせたくなるほどの無邪気さの塊ぶりであることでしょう。あちこちに確執が渦巻いているらしい暁月の周りにおいて、莉杏がどれほど人の善意を思い出させてくれる存在であることか。

それに加えて、莉杏の美点は一心な健気さにもありまして。暁月って、露悪家だし、出会いは一方的に巻き込まれるような流れではあったけど、根っからの悪人ではないんですよね。それどころか、自分の都合で巻き込んだ莉杏のことを誰よりも気にかけている。莉杏のほうでもそんな彼の性質に気づけているからこそ、ほかでもない彼の皇后として、立派な女性になりたいという思いも抱けてくる。いい関係ですよね。

そんな莉杏が立派な皇后になるべくいくつかのステップが歩まれていくのがこの話だったともいえるでしょうか。章題が一問目、二問目となっているのに象徴されるように、この本の内容は莉杏が直面したいくつかの事件に答えを出していく話の流れ。出題者は暁月で、莉杏の側は考える役。結構重大な事件も起きるし、そもそも暁月としても莉杏が答えを出せるとは期待していない。子どもを寝かしつけるためのたわいもないやり取りのつもりだったはずなんだけど、莉杏ははりきって調査をして、先入観のなさから鋭い視点で答えに迫っていく。それと同時に、暁月を取り巻く周囲の情勢もだんだんとわかってきて、もっと立派になりたいという思いが強まっていく。暁月のほうでも、意外な活躍を見せる莉杏をだんだんと自分が巻き込んだ被害者としてではなく、隣にいる者として誇らしく思う気持ちが芽生えてくる。本当にいい関係ですよね。

特に最後のやりとりはすごく素敵で、ぜひともそうなったふたりの姿を見てみたいなあと思わされずにはいられませんでした。その過程も含めて、もっともっとふたりが互いにどんな成長を見せてくれるのか、見てみたくなるふたりではありますね。

そんな期待に応えるわけではないですけど、あとがきによると、このふたり、本編の二巻以降に登場しているようで。しかも、時系列的にはこの本の後のふたりであるようで。これはもう読まないわけにはいかないでしょう。そんな気持ちにさせてくれる一冊でした。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:34| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月07日

オペラ座の恋人(3)・(4)

オペラ座の恋人(3) (オパール文庫) オペラ座の恋人(4) (オパール文庫)
オペラ座の恋人(3) (オパール文庫) オペラ座の恋人(4) (オパール文庫)

オペラ座の恋人B |オパール文庫
オペラ座の恋人C |オパール文庫

「……貴臣さん、ベルリンへ、帰ろう?」(4巻、558ページ)

3・4巻もすっっっごいよかった。もうボロボロ泣かされてしまった。特に3巻ラストの、結花から貴臣に初めて好きと告げることができた場面。2巻での「すきなひと」発言以来、どれほどその場面を待ちわびたことか。さかのぼれば1巻のときからすでに、自分の想いに蓋して、貴臣に愛されるときだけその気持ちに応えることを自分に課してきた結花が、初めて自分から気持ちを告げた瞬間。もう感無量でしたね。いや、これだけで感無量になってたらこの先どうなっちゃうのって感じでしょうけど。

ほかにも、上に抜粋したセリフの場面でも。普段は遠慮しいしいな結花が、体を重ねているとき以外の場面で心の底から貴臣にすがる瞬間というのは、もうそれだけで感慨深いものがあります。一方的なまでに歪んだ関係でよしとして、心の奥深くに切ない想いを隠している結花の心情を知っているだけに、なおさら。

結花が貴臣に対して感じるうれしさに、安堵に、こわさに、何度も感情を高ぶらされずにはいられない。物語に引きずられて、感情を揺さぶられて、泣いて、笑って、表しきれない感情を吐息とともに排熱して。ああ、本当にハマってるんだなあと、そのたび実感させられる。いやもうまじで好みすぎる作品です。

そんな3・4巻の話ですけど、1・2巻に比べて、シリアス度が上がっていたように思います。というか、基本的に東京中心の本編はシリアスな雰囲気中心で、幕間の海外中心の短編集は明るい雰囲気中心な気がするんですけど、今回はその短編集が3巻の初めのほうではじまって中盤過ぎくらいで幕引きになってしまったため、以後ずっと晴れやかになりきらない展開つづきだった印象になっている部分もあるように思います。なので余計にベルリンに込められた思いが響いてくるものがあったというか。読んでてなかなかつらい場面もありましたね。

でも、どれもこれも結花と貴臣のふたりには必要な場面なんですよね。住む世界が違うとはいえ、ここまで分かちがたいほどに互いを欲しあっている間柄を、「ペットと飼い主」の関係のままとどめ置くのはさすがに歪にすぎようというもの。まして、「飼い主」の側がそんな関係ではとうてい満足できなくなっているのであれば。

ただし、まがりなりにも「ペットと飼い主」の関係でうまくいっていたところに変更を加えることになるとなれば、波風が立つのは避けがたい。そして、そこで立ちふさがる障害は、やはりというか、結花その人なのであったというところが悩ましい展開なのであって。

結花さん、自分は普通の女子大生だから、貴臣さんの恋人(ましてや結婚相手)としては不釣り合いな女だからという自己卑下を頑ななまでに手放さない人で、そんなところがかわいらしい人でもあるんですけど、そうはいってもこれほどまでに貴臣から溺愛されていれば向けられる愛情の深さを認識できてもよさそうなもの。でも、結花にはいまだにその気配がない。貴臣との将来を信じることができない。結婚というものに希望を抱けない。

ここまでくるとちょっと普通ではないものを感じるというか、貴臣や友人たちとの間では明るく素直な一面を思うと疑問にも思えてくる。けれど、それはあくまで大学入学後の友人・知人や貴臣との出会いが彼女のそういった面を引き立てていただけで、それ以前に結花が抱えたトラウマやコンプレックスがきれいさっぱり消えてなくなっているわけではないんですよね(大学落ちたコンプレックスは貴臣に吹き飛ばしてもらえてましたけど)。

貴臣が目指すふたりの関係のゴールであるところの結婚が、それまでとこれからの結花のまるごとすべてを受け容れるものであるならば、本人も無自覚なレベルでその心に根深く巣くう暗い影を追い払ってやるのは必要不可欠な事項であることでしょう。

その意味でというか、この3・4巻の話をざっくりひと言でまとめると、対決、とでもなるでしょうか。 そのひとつは、結花の両親と。もうひとつは、結花本人と。

結花の両親。明るく素直な結花が舌打ちまでかますのにまずぎょっとさせられる人たちではあったけど、実際出てきてみるとそこまで悪い人たちという印象は受けませんでしたね。かといっていい親ともとてもいえなさそうだったけれども。そして、その点において結花に決定的なトラウマを与えた人たちであり、結花としてはその傷が癒えないかぎりは許せる人たちではない。ならば貴臣としても、最初から十二分にギルティな存在ではあったでしょうか。

個人的に、嫌なことをされた人たちに目にもの見せて溜飲を下げるという展開は嫌いなんですけど、でもこのシリーズの貴臣クラスになると、報復もスケールが段違いなんですよね。金とコネを使いまくって叩き潰す感じがもう笑っちゃうくらいの徹底的ぶりで。世界的企業の御曹司の持つ「力」というものを見せつけてくれること。そしてそれとともに、それほどの業の深さと裏腹の結花への愛の深さを感じさせてくれること。

けれどその一方で、結花本人との対決は、貴臣も相当に苦戦しているようで。こちらはなかなかコメディチックに笑える展開にもなってたりして、そういう意味でも楽しませてもらったりしたんですが。でもこれも、根っこはつながってるだけに決して笑ってばかりもいられないというか。むしろふたりが結婚というゴールを迎えるにあたってはここが本丸だけに、貴臣にもしくじれない余裕のなさが漂うのがハラハラさせてくれること。

どれほど入れこんでいるかを自覚しているからこそ結花を自分のものとして一生囲ってしまいたい貴臣と、まるですりこまれているかのように体のつながり以上の関係を信じられないからこそ貴臣の庇護の外の世界も欲する結花という、頭抱えたくなるような悩ましい構図。そんな話が本格展開される七章のタイトルが「人生選択の自由」というのは、重い章題ですよね。

このまま七章が5巻に続いていってるのかどうかはわかりませんが、どちらにせよ結花との対決はまだ尾を引きそうな感じなので、いったいどんな決着のつき方をするのかというのはたいへん気になるところ。3・4巻のときと同様、このまま5・6巻に突入したいですね。それで完結なので、どんな結末なのかというのも含めて、楽しみにしたいです。

シリアスなところ以外だと、短編集というか海外編で、結花が自覚のないままどんどん普通の女子大生の枠からはずれていってるのがおもしろくもありました。観劇などに伴う社交の場で貴臣や千煌さんに迷惑をかけないようにとヨーロッパ滞在中にマナースクールに通わせてもらうことにしたら、通った先が選りすぐりの学校すぎて交友関係が各国エリートの関係者ばかりになったり、そこでしっかり礼儀作法も身につけてきたものだから、貴臣によって用意されてる衣服と合わさって、わかる人には上流階級の子女としか見えない立ち居振る舞いになっていたりとかするそうで。いやー無自覚っておそろしいですね。

というか、交友関係については大学のほうでも仲のいいのは絵里とカレンくらいなので、東京でも大概なのが実情ではあるんですけど。というか、いつのまにか絵里とラリーの関係ができあがってる気配があってたいへん気になるところなんですけど、本筋とはあまり関係ないせいかあまり描かれてる部分がないのがさびしい。

というか、たぶんだけど、そもそもWeb版はもっと分量があったのを、書籍化にあたって重要度の低い部分はそれなりに削られてますよねという。おもわせぶりな描写があるわりにはそれそのものの場面がないというのがちょくちょく見受けられる気がするので。もういろいろ気になる部分があるんですが、これは書籍を読んだあとでWeb版にも手を出すべき流れなんだろうかというのがたいへんに悩みどころ。

1・2巻に比べて体を重ねている場面がかなりすくなかった気がするのも、それに関連して、なんでしょうかね。いやまあ1・2巻は、これ男性向けかよってレベルの量だった気もするので、女性向けのティーンズラブ作品ならまあこれぐらいかという気もしなくはないですが(だとしても描写のエロティックさは際立ってる気はしますが)。

まあさすがに1・2巻の貴臣さんが、40手前にもかかわらずがっつきすぎだったということで? キスマークをあちこちつけられすぎるせいで着る服が制限されるとかいうレベルですからね。キスマークは標準装備するものじゃないんだけどなあという。つけてるのは貴臣なのに、まるで結花のほうがいやらしい子のように見えてくる理不尽ぶり。まあ所有の証として、結花にとってなにより貴臣に愛されていることを実感できる印ではあるんだけども。

まあ貴臣ががっつく気持ちもわからないではないというか。キスマークをつけられて、足に鎖をつけられて、首からはネックレスをさげて、腕には男物の腕時計をはめて。そうして貴臣のものである証を形として感じられることにうれしさを見出すのが結花であり、余裕もなくすほどに体を貪られることでまだ気に入られていると実感できるのが結花であるので。いじましいほどの態度で、どこまでも男をその気にさせる素質を持つ子ではあるんですよね。

とはいえそれが歪んだ関係性なのは前述の通り。5・6巻でそのあたりのことにきちんと決着がつくことを願うばかりですね。

あと、表紙絵について。挿絵がないのでイラストは完全にこれだけなんですけど、おしゃれでムードもあっていい雰囲気の表紙ですよねというのが一見した印象なんですけど、実際に中の話を読んでみると、2巻も然り、これもそれも実はいやらしい場面のひとコマだったりするから、知ってしまうと正視しがたくなってしまうものがあるというか。いやまあよくぞイラストにしてくださいましたという場面ではあるんですけどね!

とりあえずそんなこんなで。いちお、この記事も、これ以前に読んだ本の感想が書けたらその後ろに移動する予定ですということで。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 20:20| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月06日

傭兵王の不器用な執着 買われた王女は愛を知る

傭兵王の不器用な執着: 買われた王女は愛を知る (ティアラ文庫)
傭兵王の不器用な執着: 買われた王女は愛を知る (ティアラ文庫)

傭兵王の不器用な執着 買われた王女は愛を知る |ティアラ文庫

傭兵から成り上がり、王を弑して簒奪を果たした隣国の傭兵王イザークと、叔父王に冷遇され従妹の身代わりのようにして彼のもとに嫁ぐことになった王女オリアーナの話。

叔父王に疎ましがられながらも、なかば閉じこめられていた神殿では聖女として、差し出された嫁ぎ先では王族出身の王妃として、期待される役割を果たそうとつとめるヒロインの姿が好印象な話でした。

叔父王の浪費によって乏しくなった国庫の援助の対価として、まさに差し出されるようにして嫁がされたことからはじまった関係。一方のイザークとしても、成り上がりの傭兵王から隣国の伝統ある王国から王女の嫁ぎ先として認められるほどの地位になったことを対外的にアピールすることを目的とした婚姻であり、結婚したという事実以外に求めるものはなかったはずなんですよね。当初のふたりの関係としては。

けれどそんなふたりの関係をさらに広げていくことにつながったのは、ひとつには、報われずとも王女としてのつとめを果たそうとするオリアーナの王女としての責任感によるものであり、またそうした彼女だからこそ、自然と周囲の人たち(イザークも含む)を味方に変えてしまう、助けてあげたいと思わせる魅力があったのであり。

資金援助の対価として嫁いだ先で、愛し合える人に出会い、王族として・王妃として、自分らしく活躍できる場を見いだし、望まれる居場所が作りだされていく。やさしい物語ですね。

その一方で、この作品はティーンズラブ小説なのであって。そういう場面ももちろんあるんですが、これがまたいいものだったのでして。

ヒロインのオリアーナ。責任感のあるまじめな聖女として育っただけあって、そちら方面の知識は基本的に乏しいんですね。自身の裸を見られることには羞恥を覚えるけれど、行為そのものについてはよく知らないものだから、快感を表すことにはとても正直だったり、いやらしめな行為もそれが普通だと言われれば疑わしく思いつつもしっかりやってしまったり。無知ゆえのアンバランスさがいやらしさを引き立てていてよいものでありました。まあ後々そのしっぺ返しをくらうことにもなってましたがそれはご愛嬌。

そしてお相手のイザークのほうも、そんなヒロインの素質を引き出すことが目的であるかのように、いじわるなことをしばしばしてくるんですよね。初夜から快楽にあえぐヒロインの姿を指摘する様子は言葉責めのようで、側妃を作られるのが嫌なら自身の体で俺を満足させてみせろとあおっていやらしく振る舞わせる様子は羞恥責めのようで。まあ半分くらいはイザークのほうも楽しんでた感はありますが、結果的にとてもいやらしい場面になっていていいものでした。

個人的には特に、ようやく打ち解けてこれたかという段階で、まだすっかり気を許しきれているわけではないだろう状態で、それでも気をやってしまいそうなほどの快楽であえがされながらもなんとか踏みとどまっているときに、望んでも叶えられずにいた王妃としての大役を与えると告げられた瞬間がお気に入りですね。快楽に流される一歩手前で必死に意識を保っているときに、その隙を突くようなうれしい知らせを死角から与えるひと言。そんなことされたら、うれしさでふっと気がゆるんで、そのまま洪水のような快感に足をすべらされて、わけもわからないほどの幸福感に包まれたまま意識失ってしまおうというもの。とても素晴らしい場面でした。合掌。

ともあれ、ティーンズラブ小説として、えろとストーリーが互いを引き立て合いながら、どちらもともに楽しませてくれる、政略結婚ロマンスでした。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:42| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月03日

オペラ座の恋人(1)・(2)

オペラ座の恋人(1) (オパール文庫) オペラ座の恋人(2) (オパール文庫)
オペラ座の恋人(1) (オパール文庫) オペラ座の恋人(2) (オパール文庫)

オペラ座の恋人@ |オパール文庫
オペラ座の恋人A |オパール文庫

「私は、貴臣さんのものです。貴臣さんの、ペットのウサギですから」(2巻、199ページ)

最高すぎる。最高すぎる……。読みだしたら止まらなくなった。それどころか、読めない時間にもあの場面その場面が思い出されてきたり、つづきではどうなっていくんだろうという思いが浮かんできて日常生活に支障をきたすレベルにまでなってしまった。夢にまで出てきた気がする。こんなにまでのめりこむような読書体験はどれくらいぶりだろうか。すっかりハマりこんでしまった。

ちょっと尋常じゃないくらいのおもしろさ。読んでる間、顔がにやけまくってやばいこと。ほとんどずっとにやけっぱなしになるから、30分・1時間ほども読んでいると顔が疲れてきて休憩をはさまないとしんどくなってくるとかいう意味不明なレベル。外で読むとか絶対ムリ。不審人物まちがいなし。でも読んでいるとこの物語の世界が最高に素晴らしくって、時間も忘れて雰囲気に浸りきってしまうんですよね。

この物語の魅力はなんだろうかと考えてみると、大きくはふたつであるように思えるんですよ。高級感も次元が違えばただただ呆然とさせれてしまうレベルの桁違いのセレブ感と、そんなお相手に選ばれたのが普通の女子大生であるという不釣り合いさから生じる歪さを抱えたふたりの関係性と。

物語の主役となるヒロインは、クラシック音楽が大好きな普通の女子大生・鳴海結花。お相手となるのは、ひと回り以上も年上で世界的な企業の御曹司である独身貴族・久世貴臣。普通に生活していれば出会うこともなかったはずのふたりが、同じクラシック趣味の日本人同士、ベルリン国立歌劇場の公演で偶然に席が隣り合ったことから関係がはじまっていく物語。

この作品、セレブのディティールがかなり具体的なんですよね。身につけているもののブランドや高級な食事のメニュー、ラグジュアリーなホテルの様相など、自分には縁遠くてピンとこないものばかりなんだけど、具体名を出して描写されるとそれだけでなんだかすごいものという気がしてくる。一つひとつはまるで呪文のようなんだけど、ずらずらと並べ立てられることで脳裏に浮かびあがってくるイメージは燦然とした格の違いを伝えてくるようで。

しかもお相手が桁外れの御曹司なものだから、実家の応援も相まって平然と超高級品をこれでもかと繰り出してくること。ホテルでのVIP待遇のなんたるかを体験させられるわ、文化財クラスの着物が出てくるわ、普段の食事がまずく感じられるほどの食べ物の味を覚えさせられてしまうわ……。おまけに、諸事情あったとはいえ大学受験に失敗したことで抱えていたコンプレックスも、日本の大学なんて目じゃないレベルの貴臣の学歴を示されればなんだかどうでもよ思えてきてしまうという。

ここまでくるともう笑っちゃうレベルというか。普通の女子大生である結花が肩身の狭い思いをするのもわかる。いちお、派手派手しいものではなく落ち着いた品のいいものを選んではいるようだけど、よく見ると実はすごくいいものであると他人の指摘で知らされるのは、ひと目でわかる高級品を贈られるよりインパクトが強いんだよなあ。

貴臣と付き合っていくうちにセレブなお友達やお知り合いもできたりしてるけど、みんなそれぞれに強烈だからとんでもない。読んでるうちにだいぶ自分の中での「リッチ」の感覚がずれてきたような気はしてるけど、でも周りの人の話を見てる感じ、貴臣さんまだ本気を出してはいないみたいなんですよね。もともと金に糸目はつけてないけれど、慣れない結花を驚かせすぎないようにだいぶ加減してるっぽいというか。そんなところでも桁違いのセレブぶりを感じさせてくれるからやってくれること。

けれどその一方で、住む世界が違うレベルでの貴臣のセレブぶりを実感すればするほどつらくなってくるのは結花のほうであって。

はたから見れば、目も当てられないほどの溺愛ぶり。数多の女から好意を寄せられながらもそれをうっとうしくはねつけていた氷の独身貴族がついに恋人を見つけた、過労死も危ぶまれていた仕事人間が仕事もそっちのけにしかねないほどのお気に入りぶりに逆に悩まされることになったなんていう実家周辺のコメディカルなやりとりにも象徴されるように、わりとすぐに結婚一直線なほどのイチャイチャぶりになってはいるんですよね。

けれど、その最大の難関は結花のほうであったという。

最初は貴臣がどこの誰かわからなかったからこそ、異邦の地で会った同好の士でありかつ互いにいいなと思いあう男女として、思いきって一夜の関係を持ててしまったりもしたんだけど、彼が誰だかわかってしまうと途端に一歩身を引いてしまわずにはいられない。普通の女子大生である自分が隣に立てる相手ではないと思えてしまう。それでも彼に引っ張り出されて逢瀬を重ねるにしても、おもしろおかしく噂にされるのを避けるためには人目をはばかる関係にならざるをえない。そうしてできあがるのは、表面的にはセレブな彼の愛人以外の何者でもないという関係であって。

結花本人としてはそれでもかまわないと思ってはいる。もともと釣り合わない相手だと思っているから、彼がそばに置いてくれるならその関係はなんだっていいとも思っている。彼がいつまで自分を気に入っていてくれるのかだってわからない。でも貴臣に愛されていれば、貴臣に愛される自分でさえいられれば、そこに何物にも代えられない幸せを感じることができる。

なんとも歪ですよねえ。お互い相思相愛で、貴臣のほうは結婚だってじゅうぶん意識している。けれど、結花のほうがその未来を期待していない。むしろ必死になって否定してさえいる。自分はただ気が向いたときだけ貴臣に愛されるペットのウサギでいいと、貴臣相手だけでなく口にしさえする。この切ないほどの想いがたまらない。ジャンル的に現代ものであるはずなのに、ある種の主従ものめいた感覚すら感じられてしまう関係性。こんな、こんなの大好きに決まってるじゃないですか。

そのうえ、そんな関係でセックスだってしてしまうからもういろいろとやばい。体を重ねる行為だって、貴臣がまったくの初めての相手だったというわけではないけれど、これっぽっちも知らなかった感覚を次々に教えこまれ、貴臣相手にはすぐにその気にさせられてしまう体にさせられて。今だけ愛してくれればそれいいからと刹那的なまでの快感に奉仕することに喜びを見出したり、焦らすような責めに耐えられなくなってささやかれるがままに(むしろそれ以上に)いやらしい姿態でのおねだりを意識することなくするようになっていたり。愛する人に開かれ塗り替えられていく快感ですよね。

お嬢様学校の出身ではあるけれど本人としては取りたててお嬢様という育ちでもなく、ただ他人よりクラシックが好きというだけの純粋な女子大生だった結花が、別世界の住人であるかのような貴臣に出会って愛を知り、香水をつけることを覚え、お酒の味を知り、愛を交わす幸せを知り……。本人はあまり気づいてないけれど、極上なまでの御曹司によってすこしずつ引き立てられ、美しい女へと磨き抜かれていく変化の過程を見ていると、この先の展開がものすごく楽しみになってくることといったら。

帯の惹句の「運命の出会いはベルリン――」とか「極上の男に躾けられる快感」とか、買う前に見かけたときはあんまりピンとこなかったんですけど、この1・2巻を読み終わった後で見直してみると、ものすごくしっくりくるフレーズに感じられますね。

あと、この作品、600ページというページ数も関係ある気がするけどそれ以上に、もとがWeb小説だからか、一冊のうちに山場的な盛り上がりを感じる場面がいくつもある。章的な区切りの入る部分はほとんど盛り上がって終わるというか、読んでるこちらの感情曲線を振り切るようにして小休止を入れてくる感じがものすごくよくって。上げて上げていったん幕、みたいな感じになるからもう次が気になって気になって、でもちょっと休憩ほしいみたいな心地いい疲労感を何度も感じさせられる読書体験という、なんとも素晴らしいひとときを楽しませてくれること。

特にベルリン。貴臣とイチャイチャして、セレブなお友達とワイワイして、貴臣とイチャイチャして……。ひたすらに幸せいっぱいな時空が展開されっぱなしなものだから、にやにやさせられっぱなしで、そのうえで場面の区切りは思いっきり後を引く余韻を残してくれるような感情の振り切りをしてくるものだから、何度放心状態に陥らされそうになったことか。

控えめに言ってやばい。普段ならとりあえず同月刊行の本はまとめて読んで、その次はまたダイス振ってその目が出たとき読むかという流れになるところなんだけど、ちょっとこの作品へのハマり具合は尋常ではないので、もうこのまますぐに3・4巻に突入する所存。その前に、取り急ぎこの感想だけ書いて投稿しておきます。

ただし、本の感想は前に読んだ本があってこそ次の本の感想があると思っているので、いずれこの本の前に読んだ本の感想が書けたら、ブログの投稿日時か公開日時かをいじってそちらの後ろに移動させる予定。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:58| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月29日

100分de名著 2019年2月号 オルテガ 大衆の反逆 多数という「驕り」

オルテガ『大衆の反逆』 2019年2月 (100分 de 名著)
オルテガ『大衆の反逆』 2019年2月 (100分 de 名著)

100分de名著 オルテガ『大衆の反逆』 2019年2月 | NHK出版

闘いの場に身をおいた人物の言葉は重い。

言論によって内乱に向かう時代の潮流と闘ったスペインの哲学者オルテガ。代表作『大衆の反逆』を中心にしてまとめられるその考えは、過激な思想に流されるばかりの「大衆」、「大衆」とは違う存在を受け容れる思想としてのリベラル、自らを作りだす周囲の環境およびそれらを築きあげてきた死者たちへの意識、過激な変革に違和を抱く保守観など。全体として、初心者にもわかりやすい平易な解説書でした。

解説された彼の言論からは、多数派の独善に陥り暴走する大衆を止めようとして考えだされたのだろうレトリックがいくつも感じられた。その最たるものが「生きている死者」の考え方だろうか。なんの縁もない学者・政治家がなんやかんや言って通じなくても、血のつながった父祖を含めた死者たちの思いを想起させられることは、独善からの脱却をもたらすうえで効果を発揮しうる考えではあったことだろうと思う。とはいえ現実としては、暴力に訴えてでも自分たちの考えを押し通そうとする潮流を食い止めるにはいたらなかったわけだけれど。

けどそれでも、現在においてもなお見るべきところの多い人物であるように思われる。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 20:12| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月28日

進化は万能である 人類・テクノロジー・宇宙の未来

進化は万能である──人類・テクノロジー・宇宙の未来 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
進化は万能である──人類・テクノロジー・宇宙の未来 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

偉大な先駆者や計画的なトップダウンによるものではない、自然発生的な変化の積み重ねによってボトムアップ的に「進化」してきた人間社会の姿を様々な分野から描き出そうとする野心的な著述。

進化とはそれすなわち、累代的な変化の蓄積である。ドラスティックな変革ではなく、たとえそう思えることであっても、その瞬間だけを見ればそう見えるのかもしれないが、その変革を用意する背景が少しずつ準備されたうえでの最後の一撃が画期的な印象を与えているにすぎないとする。

筆者の主張によれば、歴史さえもが偉大なリーダーは単に時代の表象でしかないことになり、その登場を準備し台頭を支えた民衆たちこそが時代の「進化」のカギであったことになる。さらにいえば、変革の必要性が生じる社会的な状況さえ整えば、現在知られている偉大なリーダーがいなくても、別の人物が似たような事績をあげてのけただろうということもできる。それにしたがえば、いま現在のこの世界にいたる人間社会の発展は偶発的でありながら必然的でもあった、とでもなるのだろうか?

さすがに記述がさまざまな分野にまたがっているためか、多分に問題提起の度合いが高い箇所もありながら、興味深い内容だったとは思う。特に、上からの指導や計画によるものではない、社会のあちこちから自然発生的に現れた進歩の伝播・深化による、計画されたわけでもないにもかかわらずの効率的な発展システムの形成というのは、アメリカに代表される自由主義社会のダイナミックな発展のメカニズムを称揚し解き明かすためにこの上なく力強いメッセージであるように感じられた。

たいへん刺激的で、それゆえに面白い一冊であった。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:46| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月27日

アルバート家の令嬢は没落をご所望です(1)

アルバート家の令嬢は没落をご所望です 1 (B’s-LOG COMICS)
アルバート家の令嬢は没落をご所望です 1 (B’s-LOG COMICS)

これはヒロインと従者の関係がいい感じですね。従者のほうが上下関係気にせずずけずけとものを言って、公爵令嬢であるヒロインはそれにあきれてときにクビにしたいと面と向かってこぼしたりしながらも、なんだかんだで気のおけない間柄のようなやり取りを楽しんでいる。傍から見ててとてもお似合いな間柄に思えるんですよね。身分的に本来許される関係でないことを除きさえすれば。

突然前世の記憶を取り戻したヒロインがゲームの世界云々いいだしたり、悪役令嬢らしく没落を目指すなんて気の触れたようなことをいいだすやいなや、頭がおかしくなったのかなんてツッコミを真正面から入れられるのって、どう考えても普通の主従のやり取りじゃないですよね。でもこれがまた息の合ったテンポでの言い合いになったりするから楽しそうではあることで。

そしてこの従者、抗うことなく悪役令嬢としての没落の道を歩もうなんてするヒロインに対して、一応ひき止めはするものの、そこまで強く反対したりはしないんですよね。お嬢が決めたことならば、よくわからないこだわりでも付き従うのみとばかり。それどころか、お嬢がその気ならば、しっかりお膳立てもしてあげようと、積極的に協力したりもする。

その裏にある異図はなんだろうかと思うところですけど、まあ、ラブですよね。お嬢が本来のゲームの「ヒロイン」にいじわるしたつもりがすっかり親切なお友だちと思われてしまってるのは生温かく見守りながらも、主と距離の近い「攻略対象」の男キャラが彼女ではない本来の「ヒロイン」との距離を縮めてるのをいい笑顔で見届けたり、傷つく役回りも進んでするお嬢を心配して挙動不審なくらいに気にかけてみたり。いいですよね。恋ですよね。

完全に身分違いの恋だけど、没落してしまえばそこは解消されるともいえるところ。とはいえそれはヒロインにとっては小さくない代償を伴うはずのもので。女主人と男従者のいい感じな関係の話ではありながら、不安と楽しみが同居する悪役令嬢タイプの物語。本来の「ヒロイン」も素直でかわいらしく、楽しみなシリーズですね。ただマンガの次は何か月後か。これはいっそ原作小説で読んでみるのもいいかもしれませんね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 20:59| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

初めて恋をした日に読む話(2)

初めて恋をした日に読む話 2 (マーガレットコミックス)
初めて恋をした日に読む話 2 (マーガレットコミックス)

初めて恋をした日に読む話 2/持田 あき | 集英社コミック公式 S-MANGA

順子先生、ふだん恋愛方面を筆頭に残念さを発揮しまくってるくせに、ときどき急にかっこいい大人な一面を見せてくれたりするからずるい。ギャップですごく心に響いてくるんだもんなあ。

失敗して情熱を見失っていたかつての優等生はからっぽの失敗した自分を知るからこそ次に見つけた機会に全力で取り組める。恋なんてしてる暇もないほど仕事に打ち込んでいたくなる。いいですよね。生徒の学習指導に一生懸命な順子先生、とても輝いてる。しかも、そんな一生懸命な姿にひかれて恋の予感もどんどん高まってきてる。雅志も仕事できる男としてバリバリかっこいいとこ見せてくれるようになってきたし、由利くんは年の差がもどかしいほどの一直線ぶりをさらに感じさせたくれるようになってきたし。美和じゃないけど、おもしろくなってきたとは思いますよねえ。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 17:21| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする