2018年04月22日

社内恋愛禁止 〜あなたと秘密のランジェリー〜

社内恋愛禁止 ~あなたと秘密のランジェリー~ (蜜夢文庫)
社内恋愛禁止 ~あなたと秘密のランジェリー~ (蜜夢文庫)

蜜夢文庫編集部ブログ

表紙ではタイトルの後半部分のほうが明らかに大きく表示されてるんですけど、正式のタイトル表記を見てるとそっちはサブタイトルっぽくも思えたり。

それはともかく、ティーンズラブ作品です。下着メーカーに勤めるOLで、人には秘密でセクシーな下着をつけるのが趣味の主人公・愛花と、下着のデザイナーで彼女の会社の社長になったお相手・高瀬のお話です。

初対面からしてセクシーな下着を買おうとしていたところにそのデザイナーの男性と出会ってという、人には見せられないような一面を知られてしまったことによるもので、そんな地点からスタートすれば、いろいろさらけだして大胆な関係になるのも早かろうという感じのふたりの話。女性向けとしてはかなりえっち度高めというか、前半はとくに気持ちの交歓よりも行為を楽しむタイプのえっちが多く、このペースだとほかのTL作品の倍くらいそんな場面があるのかと思ったりもしましたが、中盤以降は恋のライバルとなるキャラの登場で気持ちのすれ違いからきずなの深まりが描かれていってと、恋愛面もしっかりしてて。えろとらぶの二側面をそれぞれの要素を打ち消すことなく描きわけつつ最終的にひとつにまとまる感じはいかにも、ではないですがTLらしさをつきつめたひとつの形のようで印象的だったり。

……というところなんですけど、感想としてはどうしてもえろかったというところになってしまうという。大胆な下着をつけて、好きな人のことを思っていたら、それだけで体が疼いてきてしまったり。そんな状態なものだから、彼女を見かけたお相手のほうもすっかりその気にさせられてしまって、会社にいるのに周りからみたら明らかに不自然なスケジュールの空白を作ってまで行為に突入して興じあったりとか、ちょっと女性向けにしてはえっちすぎませんかね。個人的には大歓迎ですが。

そして、前半のえっちな場面はそういうところもあるのに、最後のえっちはちゃんと気持ちが深まる幸福感を感じさせてくれる描写になってるからまたいいんですよね。波乱があったことで心情の整理がついて、自分にはこの人しかいない、この人だからどんなことでも許せるという、何物にも代えがたい安心感に包まれる感じがあるというか。

以上、えっち度高めで手堅いお話ということで、男性のTL作品入門としてもすすめられるのではないかと思ってみたり……いやどうなんでしょうね?
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 21:41| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月20日

魔導の矜持

魔導の矜持 (創元推理文庫)
魔導の矜持 (創元推理文庫)

魔導の矜持 - 佐藤さくら|東京創元社

姉弟子が序盤で退場してしまって悲しい……(前書き)

それはともかく、シリーズ第三作。

今回もすごくいいテーマでした。誰かにとっての普通なことが誰にとっても普通なわけではなく、むしろその人以外には誰も理解できないことだったりする。けれどそれはその人にとっては当たり前のことすぎて、むしろそうじゃないことがどういうことかもわからないくらいに「普通」のことであって。誰かに説明しようとしても、子どもの頭では自分にだけわかる感覚というものをかみくだいて説明するなんてことはできるはずもなく。知識のある大人ならば、より専門的な知識のある先達ならばと期待をかけてみるも、これっぽっちも理解を示してはもらえない。それどころか、ほかの子どもたちならば普通にできることができないことから単にやる気がないのだと疎まれていき、しだいに落ちこぼれの烙印を押されてることに諦念すら抱くようになってしまう。それがどれほど人から希望を奪っていくことか。普通とされる才能だけが認められ、そこからはずれる素質がなんの価値もないものとして顧みられない社会が、普通からはずれた人たちに対してどれほど希望に欠けた社会として映ることか。だからこそ、理解できないながらも他人とは違う何かを持つ人だと肯定的に認識しようとしてくれる人物に出会えることの、なんとうれしいことか。普通ではないことがすなわち劣ったことなのではないのだと、本人にとってはまぎれもなく「普通」のことであるその感覚を育んでいいのだと言われることの、なんとありがたいことか。それはほとんど無価値同然に思われていた自身の存在そのものを肯定してくれることであって。まるごとそのまま理解されたわけではないけれど、少なくともそのままの自分を受け容れてくれる場所がある。まったく同じではないけれど、特異な存在は自分だけではない。ならば、いずれ何かの役に立てる日も来るのかもしれない。そう思えることが、どれほどの希望と安心感を与えてくれることか。弱い立場に置かれている人をあたたかく、力強く包みこんでくれる。とても素晴らしいテーマの物語でした。

なんですけど、ストーリーのバランスがややよくないような気がするというか。一作目でも思ったんですけど、ラバルタにおける魔導士と非魔導士の対立情勢はどうにも荒削り感があるんですよね。その影響か、そことエルミーヌとにまたがる話になると、どうにも物語の雰囲気がそちらに引きずられてしまうところがあるんだろうかというか。

今回の話でも、エルミーヌ組のキャラクターはすごくいい感じでした。アニエスの自由さはあいかわらずで、リーンベルにまでいろいろ影響を与えたりして、なんだかこの世界ではすごく特異な自由さを感じさせる魔導士養成の場を形成してたりして。カエンス君もそんな自由人やら負い目のある妹やら目を離すとぶっ倒れてそうで気を抜けない旧友やらに囲まれて、あいかわらずの苦労人ぶりがほほえましかったり。殺気だった雰囲気がただようラバルタと比べてこのほのぼのとすら感じられる空気ですよ。そこに今回のデュナンもくわわって、今後はどんな空気が醸成されていくことになるのかと考えると、それだけで次も楽しみになってくるところがあります。

次の巻は6月予定とのことで、くわえてシリーズ最終巻との予告もあり。もっとこのシリーズの話を読んでいたかった気もしますが、ともあれ次も期待したいです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:37| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月13日

先生とそのお布団

先生とそのお布団 (ガガガ文庫) -
先生とそのお布団 (ガガガ文庫) -

ガガガ文庫既刊情報へ
先生とそのお布団 | 小学館

読んでて心が痛い。なんだこれは。なんというものを書いてくれるんだ、石川博品は。めちゃくちゃ私小説風の話じゃないですかこれ。タイトルは私小説つながりで明治の某作品から取ってきてますか? でも、なまじ石川博品作品を全部ではないにせよそれなりに読んできた読者としては、この作品はつらい。たぶん一応ファンである作者の売れない現実をまざまざと目の当たりにさせられるのは悲しいものがある。面白い話を書ける人だと知っているだけに。実力はある人だとわかっているだけに。作者の商業的な成功を喜ぶことができないのが悲しい。そのために自分がなんの助けにもなれないことがくやしい。

そんな、なかなか斬新な読書体験をさせてくれる一冊でしたけど、なんだかんだいってやっぱり面白かったんですよね。「石川布団」という架空の作家の物語として描きつつも、固有名詞はいろいろ変えてるけど、これはあの作品のことだよねとか、作者の作品をいろいろ読んできた人ほどふつうにわかっちゃう部分があって。誇張があるにせよないにせよ、商業的にはぼろぼろで、つらいつらい言ってる布団さんだけど、ときに成功の予感にぬかよろこびしたり、やっぱりダメでどうしようと悩んでみたり、売れない作家の悲喜こもごもぶりが、くすりとさせてくれる面白さにあふれてるんですよね。

あと、相棒の猫。猫はいいですよね。布団先生以上の「先生」ぶりを発揮するしゃべるお猫様との作家生活は、景気のいい話とは無縁でありながらも、コミカルなやりとりが癒しを与えてくれて。

そして、ラストが、石川博品らしい、青春っぽさをを感じさせてくれるしめ方で。これまたいいんですよ。細々とでも物語書きつづける。そんな作者をこれからも応援していきたいなと思わせてくれる、いいラストだったんですよ。作者の持ち味をしっかり感じさせてくれる一冊だったと思います。

鳴かず飛ばずな布団先生とはふしぎなことに縁がつづいてる売れっ子作家の美良との関係とか彼女のキャリアが今後どうなっていくのかとかも気にはなってるので、ぜひともつづきを……と言いたいところですけど、話の性質上、早くても数年後になっちゃいますかね。というか、そもそもこの本も売上的にはどうなってるんだろうかとか気になってきてしまうけど、まああまり考えすぎないようにしましょうということで。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 18:16| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月12日

蜘蛛の巣(上)(下)

蜘蛛の巣 上 (創元推理文庫) -  蜘蛛の巣 下 (創元推理文庫) -
蜘蛛の巣 上 (創元推理文庫) -  蜘蛛の巣 下 (創元推理文庫) -

蜘蛛の巣〈上〉 - ピーター・トレメイン/甲斐萬里江 訳|東京創元社
蜘蛛の巣〈下〉 - ピーター・トレメイン/甲斐萬里江 訳|東京創元社

七世紀のアイルランドを舞台にしたミステリー。ローマ・カトリック教会への移行がはじまりつつも、まだ多くの部分でケルトの要素を反映したアイルランド教会の文化・様式がはっきりと存在する辺境のキリスト教世界。学者としても注目すべきキャリアの持ち主だという著者ならではのケルト的アイルランド社会のあざやかな描写に目を奪われる。議論癖を持つ主人公のフィデルマによって対比されるローマ式とケルト式の違い。罪には相応の刑罰を与えるのではなく金銭の対価で贖うという法慣習など、新鮮な社会の様子が面白い。ケルト側が劣っているというわけでは決してなく、この地域ならではの文化を豊かに発展させてきながらも、王クラスの決定によってローマ式の導入が社会の趨勢となりつつあるところにうっすらと哀愁を感じさせるところもあり。

あと、この話の舞台は当時のアイルランド内でもわりと地方の村落的な居住域が舞台なんですけど、そこに登場する男性キャラクターの「〜〜なんですわ」という口調が、ひどく田舎くさくならない程度で、でも絶妙に地方のおっさんっぽさを感じさせるところがあって、とても印象的だったり。

日本ではこれが最初の刊行作だけど、本国では実は5作目にあたるということで、前後のことがいろいろと気になってくる記述もあり、もっとこの世界の話を読んでみたいと思わせてくれる話でした。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 18:59| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月01日

めがはーと

めがはーと (ビッグコミックススペシャル) -
めがはーと (ビッグコミックススペシャル) -

めがはーと | 小学館

夫婦や大切な人どうしで、寿命が譲渡できる世界を舞台にした読切短編マンガ集。いろんな愛の物語。

こういうの好き! っていう話がいくつもあって、かなり満足度の高い一冊。

もともと名前は聞いたことのある作家さんで、少なからず気にはなってたんですが、なかなか機会がなく。そんなときに新刊情報をチェックしてたらちょうどこの本を見かけまして。どんな話なんだろうかと試し読みを読んでみたら、もう即座に購入決定させてくれる話の雰囲気でひきこんでくれることといったら。

そんな、いきなりこちらの好みを打ち抜いてくれたのが「episode01」、大学生の男の子とその大学で働く年上のおねえさんの話。アザミさんが激烈にかわいかったです。観覧車のなかでの言葉が、もう、とんでもない殺し文句でした。お互い好き合ってて、付き合ってもいるふたりだけど、男の子のほうは自分の気持ちに自信がない。そんな男の子があんなこと言われたら、そりゃもうゴールイン直行ですわ。相当なものですよあれは。ひとつめの話ということで、舞台となる世界の紹介もかねた短めの話という感じもありますが、それもあって一直線に好みな展開を描いてくれてる感じがよかったですね。

そんな感じのピュアなひとつめの話から、ふたつめは都合のいい女の子の、傷つきながらもどうしようもない気持ちの話になったりして、けっこう雰囲気の温度差がすごかったんですが、青年コミックだとこんな感じにもなるのかなという偏った印象で納得してたりするところで。

一話読み終わったときの満足感がいちばんだったのは、次の「episode3」かもしれません。小さなころからかわいくてトップアイドルにまでなった妹と、そんな妹と比べたらどこまでも普通で平凡な兄の話。そんなふたりの許されない気持ちと、その行く末の話。重たいですね。タイトルにも含まれているようなメガトン級の気持ち。でも、だからこそ、最後の1ページにすごみがありますよね。あとがきを読むと、作者の目にはアイドルってこんなにもまぶしく映るものなんだなあと、そういう意味での新鮮な驚きもあったり。あと、そういうキャラとして造形されているだけあって、妹、かわいいんですよね。単純に顔がいい。そして、回想シーンでの、お兄ちゃんへの一心な想いがあふれ出る妹はかわいかったですね。バカだったあのころの自分みたいな思い出し方をしてるせいか、それが妙な隙を感じさせるというか。

けれどなにより、いちばん好きなのは、最後の話、「episode4」。キャバクラの嬢から漫画家のアシスタントになった女性と、その師匠にあたる漫画家の女性の話。つまりは百合なのでした。椎名さんがかわいい。ひとめぼれした心愛視点で描かれてるものだから、最初からすごくかわいい。同じ女性どうしだからどこか無防備だったりして、とにかくかわいい。偶然の出会いから、仕事仲間になって、関係性を深めていって……と、もう完全にお幸せにという雰囲気で、まさかこんなところで百合分が補充できるとはと意外な出会いに感謝の念を抱いたくらいでしたね。ただ、冒頭やら途中の挿入やらから、不穏な前フリされてたんで、結末としてはわりとお察しくださいというか。思えば最後のほう以外、全部、椎名さんがかわいさがいとおしくて、椎名さんの漫画の才能を尊敬する心愛視点での描写でしたからね。椎名さんを追いかけるように漫画を描きはじめて、無邪気に椎名さんを慕いつづける心愛に対して、椎名さんがどう思ってたかは、決定的な瞬間が訪れるまで気づけないでいたんですよね。見て見ぬふりをしていたというか。大好きな椎名さんといっしょに暮らしながら、大好きな椎名さんが教えてくれた漫画家としての道を進んでいくという、なによりも幸せで満たされていた時間が、一転して地獄のような苦しみにもがく日々へと転落する。その苦悩の隘路からふりかえるからこそ、過去の幸福な日々がどれだけあたたかで満ち足りた時間だったかを痛感させられることといったら。けれど、それでも、椎名さんが示してくれた道を進みつづけるしかない。進みつづけなければならない。なぜなら、その結末は自分自身の愚かさが原因なのだから……。そんな泥沼のような苦しみのなか、それでも椎名さんとの縁(よすが)にすがって生きあがく心愛の姿は、それゆえになによりも尊い想いの発露であると思うのです。重たいですよね。けれど、だからこそ素晴らしいと思うのです。とてもよい百合でした。

そんな感じで、内容的に読み応えのある話もいくつかあり、満足度がかなり高い一冊でした。こういうの好きなんですよねえ。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:09| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月28日

狼と香辛料(8)対立の町(上)

狼と香辛料VIII 対立の町<上> (電撃文庫) -
狼と香辛料VIII 対立の町<上> (電撃文庫) -

狼と香辛料VIII 対立の町|電撃文庫公式サイト
狼と香辛料VIII対立の町(上) 支倉 凍砂:ライトノベル | KADOKAWA

いい感じの読み味。面白いなあ。こんなに面白かったっけ? 

アニメが放送してたころに何冊か読んでて、そのときにもそれなりに面白さは感じていたものの、展開だったりホロとロレンスの会話だったりが多少なりと頭を働かせることを要求してくるものであったせいか、読みつづけるのにエネルギーを必要とするところがありまして。なにかの拍子でストップしてしまってそのままになっていたのですが、昨今のシリーズ新刊発売の動きなどをみているうちにまたちょっと読んでみたい気持ちになってきまして。

そんなこんなで10年ぶりくらいにつづきを読んでみたんですけど、これが面白かったんですね。話については覚えてない部分も多々あるものの、それでもなんとなく思い出しながら読んでいくことができて。そしてなにより、ホロとロレンスの会話の空気がとてもいい。額面通りに受け取るのではなく裏の意味を読み解いてやる必要があるのはやっぱりその通りなんですけど、ふたりの距離感が縮まってるせいか、地の文でロレンスが理解しやすい補助線を引いてくれるので、すらすらと読み進めながらもするすると会話の流れを読み取ることができること。くわえてその内容の多くが、気心の知れたカップルによる機転を利かせたじゃれあいであるとなれば、言葉の裏にこもった甘い空気にあてられてこちらまでにやけてきてしまうことといったら。ああ、このシリーズこんなにも面白かったんだなあと、10年ぶりくらいに「新発見」した思いです。

再読とはまた違うんですが、昔読んでたシリーズを、時間をおいてからまた読んでみるというのも、いいものなのかもしれませんね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 18:09| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月19日

オネエ男子、はじめます。(1)

オネエ男子、はじめます。 1 (花とゆめCOMICS) -
オネエ男子、はじめます。 1 (花とゆめCOMICS) -

オネエ男子、はじめます。 1|白泉社
オネエ男子、はじめます。(1巻) | 白泉社e-net! 電子書籍

好きな女の子に男が苦手だからとフラれた主人公・高橋竜が、クラスメイトのオネエ男子・相良寅之輔に弟子入りしてオネエ修行をする話。4コママンガ。

めっちゃ笑った。好きな子にフラれて、でもあきらめきれなくて、なんとかお近づきになりたい。そこまではわかる。けど、どうしてそこからオネエの道を歩みだしてしまったのか。一歩目から方向性を間違えてしまった気がしてならない。でもおもしろいからいいか的な。

口調からはじまって、しぐさに気を付けてみたり、パンケーキを食べに行ってみたり、がさつな男子高校生がどんどん女子力高くなっていくのがおもしろい。そして、そんな兄貴にときおり女子として敗北感に打ちのめされてる妹のリアクションに笑う。

この巻の後半では女装にまで踏みこんで、順調に(?)がさつな男っぽさが消えてオネエ男子らしくなっている高橋だけど、肝心な目的である音鐘さんは空きスペースでのキャラ紹介で「あまり登場しない」と書かれる始末だったりして、完全に道を間違えてしまってる感がまた笑える。(終盤でおやっという展開があったりするけど、それがまたおもしろ……ややこしそうで、つづきが気になるところであり)

高橋の幼馴染の友だちである、燿市と伊織もそれぞれに個性的でおもしろくて。期待の新シリーズですね。

同作者の『水玉ハニーボーイ』のほうも読んでると、あちらのキャラに似た雰囲気のキャラを楽しむことができたり、あちらにも出てくるキャラの登場ににやりとできるかも。というか、あちらはあちらで、自分の美しさに自信ありなこちらの師匠とはまた違ったオネエキャラの登場するラブコメ模様が面白い作品ではあるので、片方が気に入ったらもう片方も読んでみるといいんじゃないかなと思います!
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:30| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月14日

動物になって生きてみた

動物になって生きてみた -
動物になって生きてみた -

動物になって生きてみた :チャールズ・フォスター,西田 美緒子|河出書房新社

この作者は変態ですわ。まぎれもない変態。

野生の動物の生態を描きだすために、その動物を観察する。それはわかる。けどそれにとどまらず、その観察や調査をもとにしたうえで、実際にその動物の野生の生活を実体験してみる。誰がそこまでやろうと思うか。

たとえば森に棲むアナグマのように地面を掘って穴ぐらをねぐらにしてみたり、また都会に棲むキツネのようにゴミ捨て場で食べ物を漁ったり、動物にとっての毛皮の代わりである人間の衣服については基本的にそのままではあるものの、それも時には人目がないのを確認して脱ぎさって世界を体感してみたり。こうして一貫した趣旨でまとまった文章にされないと頭のおかしい人としか思えないような行動をとりながら、いや、わかっててもやっぱり変態と思ってしまう体験をくりかえしながら、人間の目線からではない、その動物の感覚を通した世界の情景を再現しようと試みる。これが抜群に面白いんですよ。擬人化された動物の物語や、映像を通して見る動物紀行などは、それはそれで面白さがある。けれども、「動物になってみて」そこから見えてくる世界というのは、それらとはまた違った、おおいなる驚きに満ちている。

人間と動物は、まず目線の高さが違う。試しに自分のひざくらいの高さで周りの景色を写真に撮ってみると、それだけでも普段見るものとは違う風景が現れる。なんでもない障害物が大きな壁に見えたり、距離が縮まることで地面の存在がより意識されるようになるかもしれない。

また、人間は感覚器官のなかでも視覚からもっとも多くの情報を得ているが、動物の場合は必ずしもそうとは限らない。嗅覚が発達している動物もいれば、聴覚が発達している動物もいる。それらを完全に再現するのは不可能であるけれども、普段それほど意識していないだけで、人間自身の嗅覚や聴覚、触覚などでも、彼らの世界をある程度体感することは可能であるらしい。たとえば、地面から立ちのぼる熱気や吹き抜けていく風などから森の空気の流れを感じ、それに乗って漂ってくる匂いから周りの風景を脳内に構築したり。それはあくまで人間の感覚の範囲内ではあるものの、まさしく異なる感覚の持ち主になってみようとする試みで、未知の世界をのぞかせてくれるようなぞくぞくとした喜びを感じさせてくれるものがあって。

それらすべてが動物になってみたからこそわかる、というわけではないとしても、それらを動物の感覚を通して描くこと、描こうとすることは、それ自体がひとつの叙述の挑戦であり、人間にとってのひとつの新たな世界観の提示にほかならないと思うんですよね。そしてなにより、それらの描写が面白おかしくて、読んでいてとても楽しい。これはすごい本だと思いますよ。

動物になって生きてみるということと、人間社会の一員として生きることは根本的にあいいれないし、作者の体験は一見すると頭のおかしい人のようにしか思えないかもしれない。でも、動物の生態についての理解を深めること、それらをつきはなした描写によってではなくより内側から感覚的に理解するために、おおいに価値のある一冊だと思います。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 14:18| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月02日

彼女になる日(3)

彼女になる日 3 (花とゆめCOMICS) -
彼女になる日 3 (花とゆめCOMICS) -

彼女になる日 3|白泉社
彼女になる日(3巻) | 白泉社e-net! 電子書籍

どの話も三芳と間宮がいちゃいちゃしすぎててたいへんにやにやしかったです。ありがとうございました。

「羽化」にともなう体の変化があり、心の変化があり、それらにとまどいながらも関係を深めていったふたりが、満を持してラブラブムード全開な生活をお見せしてくれました。それぞれの両親に挨拶したり、旅行先ではやくも夫婦として扱われてうれしさを感じたり、誕生日プレゼントを渡すのもきずなを深める話になったりと、裏表紙の「結婚間近」な雰囲気をこれでもかと感じさせてくれる仲睦まじさでございました。

思えば、これまでの巻はふたりの関係がまだどうなるか、未知数なところが多分に含まれていたこともあり、ほかのキャラクターが間に入ってきたりといった展開もありましたが、この巻ではそんな展開もほぼなく、ほとんどまるまる一冊、三芳と間宮の話だったといってもよさそうな。なにより、上にもあげたようなイベントをこなしながらも、互いに対してドキドキする気持ちを抱いたり、安心を感じたり、互いの一番であることを求めあったり、そうした感情を通しての結びつきを深めていく様子がとてもいいものでありまして。そうして心からの幸せを表情にあらわす様子はこちらまであてられてしまいそうになるものがありまして。いいですよね。

そしてラスト、三芳と間宮の関係は、単に互いを好き合う男と女だからというだけのものではなく、小さいころからのつきあいを通して築かれてきた絆のうえになりたつ、このふたりだからこその関係なんだなあと思わせてくれる話がノスタルジックですごくよくて。一冊通してふたりへの祝福の気持ちがこれでもかと強められる話ばかりでしたね。

とはいえ次回予告によるとまだひと波乱あるようで……? どうなっているのか、楽しみにしたいです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 20:37| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月01日

エルフ皇帝の後継者(上)(下)

エルフ皇帝の後継者〈上〉 (創元推理文庫) -  エルフ皇帝の後継者〈下〉 (創元推理文庫) -
エルフ皇帝の後継者〈上〉 (創元推理文庫) -
エルフ皇帝の後継者〈下〉 (創元推理文庫) -

エルフ皇帝の後継者〈上〉 - キャサリン・アディスン/和爾桃子 訳|東京創元社
エルフ皇帝の後継者〈下〉 - キャサリン・アディスン/和爾桃子 訳|東京創元社

ゴブリンの王女との子という出自によって父帝からうとまれ、片田舎に追いやられていたエルフ帝国の第四皇子マヤ。そんな彼のもとにいきなり継承のお鉢が回ってきて、帝王教育もなにも受けていない状態から皇帝としての歩みをはじめていくことになる話。

これ好きなタイプの話ですね。新帝となる主人公マヤの視点にただよう自信のなさ。政治において儀礼的な面においても知識がなく、皇帝という立場は荷が勝ちすぎているのではないかと痛感させられる力不足感。ただ目の前で決められていく物事に唯々諾々と従っているのがいちばんではないかという思考がよぎる卑屈さ。けれど、それでも位に就いたからにはいい皇帝になりたいと願う気持ちはたしかに持っているのであり。自信のなさと前向きな気持ちの間でたびたび揺れ動くマヤの視点でつづられる、期待度ゼロの新皇帝の物語。すごく好きな感じの描写の調子でした。

それというのもマヤの育ちがいかにも不遇で。皇子として生まれていながら、主となるべく乗りこんだ宮廷において、まずそもそもその宮廷に不慣れであることが露呈するレベル。誰かと密談するならどこか、誰が権力を握っているのか、人間関係は等等、これから帝位に就こうというのにそれらの知識もなく、かといって信頼できる相談相手もいないところからはじまる宮廷生活。政治的な会議に出席してもなされる話はさっぱりわからないことばかりで、かといって質問しようにも初歩的な質問で話を遮るのは時間を無駄にすることでしかなく、また誰かに相談しようにも、親密な態度の者ならともかく、そのたび無知に呆れられるのはたまらなく恥ずかしい。劣等感を抱きながらも頼れる相手はろくにいない。臣下が皇帝を立てるのはあくまで帝位に対する敬意があるからであり、個人としてのマヤを見てくれる人はほとんどいない。いたとしても、個人としての信頼を寄せるよりもまず帝位に対する畏敬から一歩距離を取ってしまう。無能で、孤独で、どうしようもなくて、けれどそれでも自分が皇帝になってしまった。なってしまったからには、失敗しながらもすこしずつ皇帝としての歩みを進めていくしかない。ときには成果をあげて、すこし自信をつけて、けれどすぐにまた自信を失ってしまうような事態が起きて。全体的に自信のなさは変わりがない。それでも、そうして手探りしながらもすこしずつ進められる歩みはちらほらと認められだしていくもので。苦しい時期が長いほどにそのありがたさはじんと胸を打つものがあって。今はまだごく一部の近しい人たちだけであっても、いつかだれの目からもはっきりと立派な皇帝として認められる日がくるのではないか。そう思わせてくれるラストもあり、のちの名君による治世初期の苦労の日々を描いた話のようで、とても心地のよい物語でした。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:06| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする